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王国の守護精  作者: 久保 公里
第5章

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第5章-21 アサノハへの贈り物

 「ムラクモさま、次期さまにあれをお渡ししませんと」


 「ああ、そうだな。イザヨイ、頼む」


 ムラクモの言葉に、当代の守護精は木箱を卓の上に置き、アサノハに向けて差し出した。それは、王の掌よりやや大きい木の箱だった。


いつの間にこんなものをどこから出してきたのだろう。アサノハは木箱と当代、そして王を見渡した。


 「これは……?」


 「そなたへの贈り物だ」


 「私への、ですか?」


 いぶかしげにアサノハは問うた。ムラクモと正式に出会ったのは昨日のこと、今日王城に上がる予定はなく、何かをアサノハに用意する時間はなかったはずだ。それに、ノルカの紋章である月と宝剣が象嵌されたその木箱はやや古びて見えた。


 「そなたへだ。正式には次期たる者へ、だな」


 どうぞ、とイザヨイに促されて、アサノハはその木箱を手に取った。なんだろう、何故か惹かれるものがある。何かに呼ばれたかのように、アサノハは木箱の蓋を開けた。


 そこには黄金細工のブローチが、詰め物をした天鵞絨の上に入っていた。意匠は月を現す二重の円と、それに重なる剣、五つの貴石が嵌め込まれている。非常に細かく、繊細で、一目で名のある細工師が造ったものと知れた。


 それは、今ムラクモがマントをとめるためにつけている細工物に似ていた。ムラクモは常にそれを身につけていて、誰しもが知る細工物だった。


 それと同じ意匠の細工物、だが、デザインは異なる。


 ムラクモのそれは、二重の円がまるで満月のように見えるが、アサノハに渡されたものは三日月にも見える。剣の形もどことなく違う。それによく見れば、月や剣に施させた装飾の模様が全く異なっていた。


 「これは……」


 呟きながら、アサノハはそっと細工物を箱から出して手に取った。不思議としっくり手になじむ。

ゆっくりと持ち上げて、光に透かして見る。繊細な透かし模様の隙間から光がこぼれ、貴石が瞬くように輝いた。小粒の貴石だったが、質の良いものが使われているらしく、その輝きはまぶしいほどだった。


 「綺麗……」


 うっとりとアサノハは魅せられたように見つめた。


 きらきら、きらきら。


 貴族の娘だけあって、母が持っている宝石なども目にしたことはあるが、ここまで輝きを放つ貴石は初めて見たように思う。


 「これは私の剣ですね」


 少女の後ろから手を伸ばして、クオンがその細工物に触れる。その手がアサノハの手も包み込んだ。


 「クオン」


 アサノハはおのれの守護精を見やった。戸惑ったような少女に、次代はにっこりと微笑んだ。


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