表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王国の守護精  作者: 久保 公里
第5章
25/46

第5章-4

 アサノハは覚悟を決めるように深く息を吸い込んだ。そして。


 「クオン」


 しずかにゆっくりと彼女の守護精を呼んだ。ハナビシたちの前に姿を現した時と同じく、アサノハの守護精は瞬時に、そして音もなく主の側に出現した。


 守護精たる証の鋼色の髪、鋼色の瞳。それを持つものがこの場に二人いる。それが何を意味するか、この場にいるすべてのものが理解していた。

 その波動も芯は同じでありながら、微妙に異なる。似ているようで、違う。次代の王に従う次の守護精。


 まず動いたのは、ハナビシとハクギンだった。次代の守護精のことを知っていた二人は、恭しくアサノハと次代の守護精に一礼した。その動きに我に返ったアサアケとツユシバがそれに続く。


 アサノハは不安な面持ちで国王とその守護精に向き合った。


 ムラクモは少し驚いたような表情をしていたが、それも側近の二人ほどではない。ややあって、彼は小さく笑い始めた。


 「なるほど。我が庇護者は次代の守護精の主であったか」


 平静な声だった。アサノハは国王がさほど驚いていないことに逆に驚いていた。


 「陛下はご存じだったのですか? それで私を庇護されるとおっしゃられたのですか?」


 「なにを知っていたと? ああ、そなたが次期だということか。いや、昨日の時点では知らなかったな」


 あっさりとムラクモは言う。アサノハは何も言えず、目をしばたたいた。


 「だが、今朝がたイザヨイが、次代が現れたと言った。ただ、どこの誰の元に現れたかはわからなかった。まあ、遅かれ早かれ私の前に現れるとは思っていたが、まさか私の庇護するキサラギの娘だとは思わなかったな」


 淡々と事実を告げる国王に、アサノハは不安に襲われた。おずおずと切り出す。


 「陛下は私が次期だということを、落胆なさってらっしゃるのでしょうか」


 その言葉に、ムラクモは笑ってみせた。


 「いや、そのようなことは思わなかったな。むしろ、私は見る目がある。そうは思わぬか、ハナビシ殿」


 「ええ、嫌になるほど。この子ならば、キサラギや私の後を継げると見込んでおりましたのよ、わたくしも」


 「早い者勝ちだよ、ジュオウ家の当主殿」


 ムラクモ王は幾分勝ち誇ったように手をひらひらさせた。ハナビシがやや険のある視線を投げてもものともしない。


 それを見ながら、アサアケが胸の前で腕を組んだ。


 「それで、ジュオウ家を名乗らなかったのですね。次期さまに選ばれたお子は、家を出るとご存じだったのですね」


 はい、とアサノハはうなずいた。


 「今日、ハナビシ様に教わりました。今日より、私は家を離れジュオウ家のものではなくなるのだと」


 「なるほど」


 アサノハの言葉を聞いて、ムラクモは呆れたようにため息をついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ