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ほんとに終わります!!
ローラがアデルを投げ飛ばしたあと、事前に知らせを送っておいた馬鹿王子がやってきた。
「大丈夫か?」
「ええ、なんとか」
肩に手を回し、体を起こしてもらい、その手を見てぎょっとした。
ローラの右の親指が、赤黒く変色していたのだ。
「ローラ、この手は!!」
「ああ、これか?以前読んだ本にな、縄抜けの術が書いてあった。それを実践したんだが・・・」
縄抜けはできるが、指が使えなくなるのが難点だな、というローラ。しかも、自分で治療すると嬉々という姿には、顔が引きつる。
「ふむ、両腕も今動かしづらい上に痛みを感じるな」
あれだ。あの馬鹿力は、己の筋力の限界を知らないで使ったから出たのか。反動を恐れないだけに、本当に馬鹿の力が出たのだろう。
「ふむ、とりあえずこれを飲んでみろ」
「・・・・なんです?これは?」
さっきのゾッとするような強い光ではなく、いつもみたいなキラキラした光が戻っていやな予感。
「ばら撒かれた方の花を研究して作った解毒薬だ!!」
「・・・・私には、効かないと思いますが」
「ふむ、確かに。ああ、そうか、お前は森の民だったな」
何を今さら、と思ったところで、いきなり口を塞がれた。
何を、という言葉は、ローラの口の中に吸い込まれ、ついでに舌が私の口に侵入してきた。
「ん!!」
唾液を吸われ、ローラのものと混ぜられ、また流し込まれる。
「ふむ、こんなものか?」
「な、何するんですか!!」
たぶん今、自分は真っ赤な顔をしているだろう。なのに、知識馬鹿は涼しい顔。
「お前も前にしただろ?草で痺れた俺に?」
「気づいていたんですか!!」
「??次にあったとき、お前は包帯していただろう?」
ああ、もう恥ずかしくて顔が見れない。
「で、でも、あの時は口づけしてません」
「??血を飲ませただけだろう?」
「ええ、だから同じじゃ・・・」
「体液を飲ませたことには変わりないだろう?」
もう最低だ。この男。
血を垂らして飲ませるのと、口づけで唾液を飲ませるのが、同じだと考えられるこの思考が!!
「もう、よろしいですか?」
「!!」
輝かんばかりの笑顔で声をかけてきたウリエルの顔から、速攻で私は目をそらした。
「ラン兄!!無事でなによりだ!!」
馬鹿王子もいた!!
そのあと、妙な独占欲を見せた知識馬鹿が、私に他人が触れるのを嫌がり、震える両手で馬車まで運んだのは、屈辱だった。いつあの腕から地面に叩き付けられるかと思うと、恥も捨てて抱きつかざるを得なかったから。
城の一角に、巨大な温室ができるのは、これから数か月後のこと。
それが、ある森の民にささげられたことを、いや、押し付けられたことを、知る者は、たくさんいたりする。
つたない文章ですが、ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!!