第094話 穿いてる
翌日、この日もアンジェラと仕事をしていく。
「エリック、王都に着いた後の予定は考えてる?」
「王都ではメアリー達とは別行動になるだろうな。そっちの方がメアリーはともかく、カトリーナとシャーリーは良いだろ」
「それはそうね。あの子達はあの子達で楽しんだら良いと思うわ」
ずっと楽しみにしてたわけだしな。
「まあ、宿は一緒だし、日によっては行動を共にすることもあるだろう。なんかコーデするんだろ?」
俺は行かないけどな。
「そうね。まあ、その辺は着いてからでいいか。スピアリング商会には行くのよね?」
「ああ。ランドルさんがああ言ってくれていたし、話があるそうだからな。それには付き合ってくれ。まあ、最初に訪ねて、宿屋を紹介してもらうつもりだ」
話は後日かな?
一応、来週に行くという手紙は送ってあるが、あの人も忙しいだろうし。
「了解。ローレンスさんは?」
いれば会うことになるだろうが……
「ついてくるか?」
「うーん……その時に考える」
来る可能性があるのか。
昨日、メアリーと盛り上がってたし、ヴィオラの件を聞く気かな?
「そうか……それとは別にチャラチャラアクセサリーでも買いに行こうぜ」
「指輪が欲しい」
「はいはい……ん?」
客が来た……いや、客か?
「よう、エリック、久しぶりだな」
店に来たのは冒険者ギルドのギルマスであるロジャーだ。
「お前がウチに来るなんて珍しいな」
「ははっ、ちょっと用があってな」
「ギルマスが用?」
アンジェラの方を見る。
「え? 私? ついに降格?」
あんまり仕事をしてないからなー。
「ちげーよ。確かに仕事は月一ペースだが、お前が兼業なのはわかっているし、この前の緊急依頼だって受けてくれただろ。降格はねーよ」
「じゃあ、何よ? 指名依頼でもあった?」
「ないない。そもそもお前のことで来たわけじゃない。メアリーのことだ」
メアリー?
「問題でも起こしたか?」
うるさいって苦情でも来た?
「いや、逆だ。あいつは優秀だな。とても優秀だ」
ちょっと鼻が高いね。
「それがどうした?」
「エリックよー、あいつをどうしたい?」
んー?
「知らん。あいつはなりたくて冒険者になった。好きにすればいいと思っている」
「店は? 一応、一人娘だろ」
「別に今だって手伝ってくれている。冒険者は長く続ける職業じゃないし、辞めた時にウチで働いても良いし、別の職業に就いてもいい。俺はあいつの意思を尊重する」
好きにしたらいい。
できたら危ない仕事はやめてほしいが。
「そうか……あいつ、昨日、オークを倒しやがったぞ」
「昨日、聞いたな。まあ、それくらいはできるんじゃないか?」
「お前の基準で考えるな。メアリーは魔法使いだし、できないことはない。でもよ、あいつはちょっと前に冒険者になったばかりのルーキーだぞ。しかも、魔法じゃなくて、剣でオークを倒しやがった。はっきり言えば有望株にもほどがある」
そうかぁ?
「オークで?」
「オークは強敵だ。まず一般人では倒せない」
それはわかるが……
「そこまでのことか?」
「ああ。メアリーはな、度胸もあるし、腕も立つ。それでいて、魔法使いだ。すげーよ。うるさいし、バカみたいな言動だが、仕事は真面目にする。それに聞く耳も持ってるから成長もすごい。ありゃマジでAランクにもなれるぞ」
伝説になっちゃうの?
「メアリーがねー……」
「今日来たのはお前に判断してもらいたいことがあるからだ。ギルドとしてはあいつをCランクにしても良いと思っている」
Cランク……アンと一緒だ。
「早くないか?」
「早い。ウチのギルドでは最年少で最速だ。でも、あいつはそれだけの実力があるし、実績もある。大きいのは例の緊急依頼で最高の功績を出したことだな。あいつがいなかったら誰かしらが死んでいた。俺はあいつに第一功をつけた」
うーん……
「それでCランクね。アンジェラ、どう思う?」
アンジェラに聞いてみる。
「早いか遅いかでしょ。いずれはなると思っていたし、それがちょっと早いだけ。ギルドとしても有能な人間を昇格させ、実力に見合った仕事をしてもらいたいのよ」
「そうだ。本来ならアンジェラにも働いてもらいたいがな。お前こそBランクなり、さっさとAランクになってもらわなければならない」
アンジェラの魔法はそれだけのものがあるからな。
「無理。私、魔道具屋の副店長だし、姓が変わるの。さよならフォレット」
アンジェラのフルネームはアンジェラ・フォレットだ。
「そうか……まあ、お前はいい。エリック、どうする? ランクを上げてもいいか? 懸念があるのはあいつがルーキーなことと若すぎることだ。Cランクはもう一人前を通り越して、信頼される冒険者になる。もう少し様子を見るという意見もある」
「周りはどう思う? やっかみもあるだろ」
出る杭は打たれる。
「それはない。皆、メアリーのことをうるさいガキと思っているが、実力は認めているし、あいつが普通じゃないこともわかっている。何よりも特権階級の魔法使いだ」
魔法使いは貴重だからな。
「じゃあ、Cランクに上げても良いと思う。ギルドがそう判断したならそれでいい」
「あいつ、王都に行くらしいが、そのまま王都に移籍するかもしれんぞ。引き抜きっていうのもある」
うーん……
「もし、メアリーがそっちが良いと思ったらそれで良いと思う…………いや、ないな」
「ないない。あのバカを王都に住まわせるのはないわ。断固反対すべきよ」
アンもそう思うらしい。
「ロジャー、その辺はウチの問題だし、ウチで話し合う。ランクについてはそっちの判断で決めてくれればいい」
「じゃあ、Cランクに上げるぞ?」
「ああ。そうしてくれ」
メアリーがCランクね……
ローレンスに追いつきそうだな。
「わかった。じゃあ、そのように処理する。それとメアリーが王都に移籍するのは俺も反対だ。町の戦力が減るのを避けたいというのもあるが、あいつはどうも心配だ」
誰しもがそう思うだろう。
可愛いし、明るい。
それでいて、強いし、魔法も使える。
さらには器用だから何でもそつなくこなせる。
でも、バカだもん。
「それは俺が一番わかっているよ」
「そうだな。じゃあ、そういうことだから」
「ああ。わざわざありがとうよ」
「それが仕事だ」
ロジャーはそう言うと、帰っていった。
「ギルマスが出てくるレベルか」
Dランクになる時はヴィオラだった。
でも、今回はギルマスであるロジャーが来た。
それだけのことということだろう。
「メアリーは優秀だからね」
「俺はカトリーナとシャーリーが心配だよ」
あいつらはまだEランクだ。
この差をどう思うか……
「まあね……」
「皆のお姉ちゃん、頼むわ」
「話してはみる」
どうなることやら……
「今日の晩飯は俺が作る」
「フライドチキン?」
「そうなる」
お祝いだ。
「良いわね。メアリーも喜ぶと思うわ」
「王都でえっちぃ……いや、シルバーでじゃらじゃらしたアクセを買ってもらえよ」
「そうする。エリックは指輪ね。綺麗なやつ」
はいはい。
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