第093話 取材
スージーはフルフェイス・マスクマンのことを聞きたいらしい。
「まあ、そういう噂を聞かないでもないな」
「やっぱりですか。それはやはりあのフルフェイス・マスクマンですよね? 私は前回もその人のことを聞いた時にこれは来るなって思ったんですよ」
確かにちょっと食いついていたな。
「来るなって?」
「もうヒーローの匂いがぷんぷんしますよ。悪を裁く謎の覆面ヒーローです。特集を組みたいなー……でも、まだ実績が……王都に来ないかな? それで一発どでかい功績でも立てないかなー」
王都には来週から行くな……
アン、白い目で見ないで。
「まあ、活躍はしてるみたいだけど、普通の冒険者だぞ」
「私のジャーナリストとしての勘が囁いているんですよ」
ふーん……
「そっちはあまり情報がないな。というか、情報がある人もいないような気がする。最近、見てないし」
「そうなんですよねー。神出鬼没もフルフェイス・マスクマンの特徴です。一説によればノクスの亡霊とか……」
出たよ。
「ノクスの亡霊って何だ?」
ちょっと探ってみよう。
「おや? 知らないんですか?」
「ノクスは知ってる。10年前の戦地だ」
「ノクスの亡霊は各地に現れる正義のヒーローですよ。正体はノクス戦争で活躍した死神の黒影団のメンバーって言われてますね」
さすがに新聞記者は詳しい。
「黒影団は俺も知っているが、そいつらが世直しでもしてるのか?」
「という噂です。もっとも、眉唾ですけどね。そもそも黒影団が本当にいたのかも怪しいです。これまた一説ですけど、黒影団は戦時中のプロパガンダとも言われてますからね。実際に暗部はいたんでしょうけど、王国側が戦況を有利に進めているというアピールのためという説です」
いや、黒影団はいたぞ。
元メンバーで黒影団と命名した俺が言うんだから間違いない。
「ふーん……」
「まあ、新聞を買う人は面白い方に食いつきますからね。そこはよしなに……」
ジャーナリストさん、よしなにでいいのか?
「まあ、その辺はわからんわ。本人に会ったら聞いてみろよ」
「そうします」
スージーが頷くと、店の扉が開く。
「ただいまー。ローウェル家のプリンセスが帰還したぞよー……およよ? 新聞記者さんじゃん」
メアリーが今日も陽気に帰ってきた。
「ご無沙汰してます。取材で来たんですよ」
「取材? そうか、オークをも倒したこの私の伝説を聞きに来たんだね」
ん? オークを倒した?
「伝説はよくわかりませんが、ちょっと前の火事があったじゃないですか? あれによる魔物襲撃の際にメアリーさんも森に行かれたんですよね?」
「行ったねー」
「怖くなかったんですか? もしくは、ギルドからの強制?」
強制って……
「怖い? 強制? 何を言ってるの? 町が……人々がピンチの時に立ち上がるのが英雄なの! 私には天の声が聞こえる……剣を取れ! 戦え! 進め! とね!」
メアリーがショートソードを抜き、掲げた。
「えーっと……」
反応に困ったスージーがこちらを見てくる。
「そういう奴だ」
毎朝やってる。
「ハ、ハァ……あのー、ご活躍したそうですね?」
スージーはめげずに取材を再開する。
「もうちょっとできたと思うんだけどねー。それに私は魔法使いだから最初は後衛だった。最初から前衛だったらもっとやれた」
「えーっと、15歳のルーキーですよね?」
「そだねー。今度は最初から前線に出て、伝説を作ろうと思う」
作らんでいい。
「ほー……あのー、本当に怖くなかったんですか?」
「いや、怖いは怖いよ。でも、怖いからこそ、剣を取るの。私は魔法も使えるし、剣も振れる。ならば突撃あるのみ!」
こいつ、将軍になった方が良かったんじゃないかな?
「そ、そうですか。ありがとうございます」
「もういいの? コボルトにレジェンドキックをおみまいした時の話が秀逸なんだけど」
「えーっと……」
スージーが困っている。
「メアリー、ラシェルを散歩に連れていってやれよ」
「おーっと、そうだった! ラシェルー、お姉ちゃんが帰ったよー!」
メアリーが住居スペースに入っていった。
どうでもいいが、多分、ラシェルは自分の方がお姉さんだと思っているぞ。
「記事になるか?」
スージーに確認する。
「いやー……勇ましすぎるというか、テンション高すぎというか……10年前だったらお国から褒められる良い記事になりそうでしたけどね」
今はちょっとな。
「メアリーの仲間の教会のカトリーナか肉屋のシャーリーのところに行った方が良いぞ。そっちの方がお前らの求める答えが返ってくると思う」
「そうします。ご協力ありがとうございました。あ、水筒もありがとうございます」
「まいどどうも」
「では、これで失礼します」
スージーは頭を下げ、帰っていった。
「アンジェラ、今日はもう閉めよう」
「そうね。じゃあ、私は夕食を作るわ」
「頼む」
アンジェラも住居スペースに入っていったので片付けをし、店を閉めた。
そして、リビングでまったりしていると、散歩に行っていたメアリーも帰ってきて、3人で夕食を食べる。
「エリックー、今日、ヴィオラちゃんから指名依頼をもらったー」
「おー、良かったな。頑張れよ」
「いや、エリックじゃん。何、あの依頼? 王都までの護衛で報酬が宿代ってやつ」
ヴィオラはそのまんまを伝えたか。
「せっかくだから仕事にしてやったんだ。お前らがちゃんと護衛の仕事をできるのかを見てやる。めっちゃダメ出しをしてやるから楽しみにしてろよ」
「ふーん……エリックの何を守ればいいのさ?」
「練習だよ、練習。どうせ着くまで暇なんだからちょうどいいだろ」
「10代美少女を虐めて悦に入るのは良い趣味じゃないなー」
ツッコミどころしかない。
「宿代を出してやるんだから感謝しろよ」
「ご飯代は?」
「それくらい持ってるだろ。それに王都で美味しいご飯を食べるために金を貯めてたんだから自分で出せ」
そっちの方が美味いだろ。
というか、カトリーナとシャーリーが遠慮する。
「まあ、そうするか……あ、それとね。冒険者の仕事は明日までになった。カトリーナとシャーリーも準備がいるし、家の手伝いをするんだって」
あいつらも家業があるしな。
「そうか。じゃあ、お前は遊んでいていいぞ」
「ううん。店を手伝うよ。あと、新商品を開発する。私は発明者でもあるのだ」
まあ、こいつは発想が常人じゃないから意外に良いものを思いつくしな。
「頑張れ。あ、それとオークを倒したのか?」
「あー、それそれ。いつものように森でわちゃわちゃしてたら出てきた。まあ、余裕だね。あの豚、おっせー、おっせー。といってもショートソードでは厳しかったから光の剣でばっさり」
オークの厚い肉体はメアリーの剣では無理だろうが、あのライトセイバーなら余裕か。
「オークが出てくるようになったんだな」
「だね。ヴィオラちゃんが言うにはあの事件以来初の目撃らしい。まあ、回復したんじゃね? 魔物の生態系はよくわかんないけどさ」
あれからひと月以上は経ってるし、オークも出てくるようになるか。
「魔法が使えるお前ならオークくらいは問題ないだろうが、気を付けろよ」
「わかってるよー。アンジェラちゃん、今日も泊まりー?」
メアリーがアンジェラに聞く。
「そうね」
「カードゲームしようよー」
好きだねぇ……
「いいけど、今日、エリックから面白い話を聞いたわ」
「ほー……何? 何?」
ローレンス、すまんな。
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