第102話 到着
少しだけ仮眠を取ったが、すぐにアンジェラが起こしてくれたので眠そうな3人と共に朝食を食べる。
そして、片付けをすると、すぐに出発となった。
「さあ! 行け、ラシェル! はいよー!」
御者台にはメアリーがおり、元気に馬車を操縦している。
「元気だなぁ……カトリーナ、シャーリー、どうだ?」
明らかに眠そうな2人に聞く。
「眠いです」
「身体が重いです……」
だろうな。
「最初に休む方が辛い。覚えておくといい」
後半に見張りを担当する者はそのままぶっ通しになるからだ。
「はい」
「見張り、できるかな?」
「大丈夫だよ。森のこっち側は王都の管理だからより厳重だ」
ミルオンの町もこの前の盗賊で怒られたから遠征演習をやってたけど。
「エリック、後は私がやっておくから寝ていいわよ」
「そうするわ」
アンジェラに勧められて、横になったのだが、振動がすごかったのですぐに起き上がる。
「メアリー、お尻守るくんは何枚あるんだ?」
「あと1枚しかなーい。寝るなら腰と枕かなー? あ、アンジェラちゃんの膝という手もある」
アンジェラはすぐに足が痺れるからないな。
「1枚貸してくれ」
そう言って、馬車を操縦しているメアリーのもとに行く。
「いいよー。あ、帰りのことも考えると、その1枚しかランドルさんに売ったらダメだからね」
「わかってるよ。じゃあ、俺は寝る」
「おやすみー」
お尻守るくんを腰と頭の位置に置き、横になる。
さすがに揺れるがさっきよりかはかなりマシになっていた。
「アンジェラ、昼に起こしてくれ」
「うん。おやすみ」
目を閉じると、振動が邪魔だったが、すぐに眠気が襲ってきたのでそのまま睡魔に抗わず眠った。
警戒を怠らないためと振動のせいで熟睡はしなかったが、しばらくすると、身体を揺すられる。
「エリック、エリック、起きて」
アンジェラが起こしてくれたので目を開ける。
すると、アンジェラが顔を覗き込んでおり、長い髪が顔にかかりそうだった。
「どうした?」
「外を見て」
「んー?」
何だろうと思い、前方を見ると、シャーリーが御者台に座っていた。
いや、それはいい。
「え? 森を抜けたのか?」
前方には平原が広がっており、遠くに王都が見えていた。
後ろを見ても後方に森が見えている。
「うん。想定よりかなり早い」
あー……
「ラシェルはスピードが違うか……」
ラシェルは馬車をものともせず、かなりのスピードで進んでいた。
しかも、それでいて、休憩すらしない。
やはりラシェルは他の馬とは違うのだ。
「多分、今が昼くらいだけど、どうする?」
「鳥もいないし、不味い保存食より王都で食べた方が良いだろ。あと1時間くらいで着くし、王都に行こう」
「そうね。それがいいわ。じゃあ、そうしましょう」
アンジェラが頷いたので一緒に前の方に行く。
「シャーリー、代わろう」
「お願いします」
シャーリーが下がり、代わりに俺とアンジェラが御者台に座る。
すると、後ろの3人が騒ぎ出した。
「さっきまで眠そうにしてたのに森を抜けて、王都が見えたら元気になったわよ」
アンジェラが苦笑いを浮かべる。
「気持ちはわかる。俺が寝ている間、どうだった?」
「ダメ。馬車を操縦している場合は良いけど、荷台の場合は見張りどころじゃなかったわね」
まあ、そうなるだろうな。
「慣れと体力がいるからな」
「ええ。良い勉強になったでしょ。帰りもあるけどね」
そうなんだよなー。
「まあ、今は帰りのことは言わなくていい。王都を楽しめばいいだろ」
「それもそうね」
はしゃいでいる3人を尻目にアンジェラと話をしながら進んでいった。
すると、徐々に王都を囲う城壁が近づいてくる。
「おー、すげー」
「大きいね」
「ここが王都か……」
3人も前の方に来て、王都を見ている。
「着いたら昼食にする。その後、スピアリング商会に行って、宿屋を紹介してもらい、そこに行く。そこからは自由行動だが、絶対に1人では外を出歩くなよ」
3人に忠告する。
「わかってるってー」
「ええ。というか、今日はそんな元気がないかな……」
「うん。今日はお風呂に入って、ベッドで休みたい……」
それは俺もだ。
「もうちょっと待ってろ」
そのまま進んでいくと、門までやってきたのだが、槍を持った兵士が通せんぼする形で前に立ったので止まる。
「どうも」
こちらから兵士に声をかける。
「ああ……どこから来たんだ?」
「ミルオンの町だな」
「この馬車は? 軍が荷を運ぶために使うものだが……」
あー、それで止めたのか。
「軍に友人がいてな。貸してって言ったら貸してくれた」
「そうか……何か身分を証明できるものはあるか?」
「はいよ」
商業ギルドのギルドカードを渡すと、兵士が見る。
「ローウェル魔道具店のエリック・ローウェルか。商人だったのか……商売か何かか?」
「商売というか、懇意にしているスピアリング商会の商会長さんと会う約束をしているな。あとは王都観光だ」
こう言うと、なんか大物っぽいな。
「スピアリング商会の……他の者は?」
「冒険者だ。といっても妻と娘とその友達だな。お上りさんだと思ってくれ」
「いえーい、兵士さーん、美味しいランチが食べられるところなーい? お腹空いたー!」
メアリーが顔を出し、いつものテンションで兵士に聞く。
「近くにパスタを出している店があるぞ。種類も多いし、人気の店だ。もう落ち着いた時間だし、入れると思う」
苦笑いを浮かべた兵士が教えてくれる。
「それだ! レッツゴー!」
「待て、待て。エリック殿、この馬車を預かろうか?」
ん?
「預かるって?」
「宿屋に泊まるのだろう? 馬もだが、馬車の場所代を取られるぞ。でも、この馬車は軍の所有のものだし、それならこちらで預かれる」
「いいのか? 2、3週間はいるぞ」
「それくらいなら何の問題もない。馬も軍の所有なら……でかいな」
兵士が今更ながらにラシェルを見て、ちょっと驚く。
「この馬はウチの馬だし、大丈夫だ。お言葉に甘えて馬車を預かってほしい」
「ああ。構わんぞ。じゃあ、こっちに来てくれ」
兵士が誘導してくれたので門をくぐる。
門の先は町ではなく、兵士の詰め所だった。
王都は厳重なため、二重門なのだ。
「どこにおけばいい?」
「あそこでいい」
兵士が詰め所の横を指差したのでそこまで行き、馬車を止めた。
「ここからは徒歩だから荷物を持って降りろ」
「よっしゃ!」
「えーっと、カバン、カバン……」
「よいしょっと」
後ろの3人はカバンなんかを持ち、馬車から降りる。
俺とアンジェラも御者台から下りると、ラシェルから馬具を外した。
すると、先程の兵士が近づいてくる。
「じゃあ、この馬車は預かるからな。帰る時はその辺の兵士に言ってくれ」
「ああ。悪いな」
「おじさん、ありがとー」
「お兄さんな」
兵士はまたもや苦笑いを浮かべ、門の方に戻っていく。
「よし、昼飯にするか」
「おー!」
俺達は奥にある門をくぐり、王都に入った。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




