第100話 野営
夕食を食べ終えた頃にはすっかり辺りが暗くなっており、虫の鳴き声が聞こえてくる。
「前にも言ったが、夜の見張りは俺がやる。とはいえ、せっかくだし、お前らにも経験させてやろうと思う。どうする?」
ルーキー冒険者3人に聞く。
「それも話し合った。やる」
「交代でやろうかと思っています」
「最初は索敵が得意なメアリーでその次が私とカトリーナです」
悪くない。
最初に寝起きが良くないメアリーを持ってくる順番も正解だ。
「じゃあ、そうするか。アンジェラはどうする?」
隣に座っているアンジェラに確認する。
「私は寝るわ。ちょっと疲れたし」
アンジェラは体力がないからな。
メアリーのお尻守るくんがあったとはいえ、慣れない1日だったせいで体力を消耗したのだろう。
「そうしろ。明日は頼む」
「ええ。おやすみ」
アンジェラが一足先にテントに入っていった。
「エリックー、夜の見張りはどうやんの?」
メアリーが聞いてくる。
「まずだが、寝てる奴も枕元に武器は置いておけ。そして、何かあったら即座にテントを飛び出せ」
「下着姿でも?」
「死にたいなら着替えていいぞ。というか、寝る格好を考えろ」
そこまで脱がなくても軽装で良いだろ。
「はーい」
「見張りは基本、こんな感じで焚火の前で周囲に異変がないかを見る」
「焚火を焚いていいの? 目立たない?」
おー、メアリーが賢い!
「目立つは目立つ。森の中で暗いとはいえ、遠くからでもわかるから盗賊がいればいい目印になる」
「じゃあ、消した方が良くね?」
「確かに消すと目立たないが、とんでもなく、疲れるぞ。暗い中でじっと待つのはお前が想像している以上にしんどい。ましてや、お前らはそういうのに慣れていないだろう。他にも人間でも魔物でもなく、熊や狼が出てきた時にこちらが気付かないというのがある。素人は大人しく、焚火で暖まっておけ。この時期はまだ良いが、夜の森は冷えるぞ」
というか、プロでもきつい。
スーパープロである暗部だった俺達ならなんとかなるが、温室育ちのこいつらでは無理。
「わかった! 何か来たら寝ている2人を起こせば良いわけ?」
「何でもいいから大きい音を出せ。叫んでも良いし、笛でもいい。2人は起きるし、音で相手が怯むこともある」
特に動物は逃げる。
「ふむふむ……了解」
「頑張ります」
「大声? フライパンでも叩こうかな……」
カトリーナとシャーリーも理解したようだ。
「カトリーナ、シャーリー、普段ならまだ寝る時間じゃないだろうが、テントに入って、もう寝ろ。野営はやることもないし、取れる時に仮眠を取るもんだ。ついでにいうと、明日も早い。じゃないと明日中に王都に着けなくなるんだよ。今日、テントで寝ればわかるが、宿屋のベッドの方が100倍は良い。野宿は1日だけにしよう」
テントの中は狭いし、何よりも風呂に入れない。
もちろん、身体は拭くだろうが、やっぱり風呂に入れないのはきつい。
「わかりました」
「メアリー、お願いね」
「ほいほーい」
カトリーナとシャーリーは見張りをメアリーに任せ、テントに入っていった。
そして、しばらくすると、テント内のカンテラが消え、静かになった。
アンの方もすでに灯りが消えており、3人共寝たと思われる。
「メアリー、眠くないか?」
「大丈夫! それにしてもエリックとこうやって2人で焚火に当たっていると、昔を思い出すね」
10年も前だな。
ミルオンの町に行くために旅をしてきた。
あの時も獲物を狩り、飢えを凌いでいた。
「覚えているか?」
「忘れる方が無理じゃね? 私、それまでずっと屋敷でぬくぬく生きていたのにいきなりサバイバルじゃん」
俺は慣れていたが、当時5歳の貴族令嬢だったメアリーは辛かっただろうな。
「なあ、戻りたいと思うか?」
もちろん、帝国にあるであろうメアリーの実家だ。
ホワイトウェイ家。
あれから少し調べたが、ホワイトウェイ家はまだ健在のようだ。
「籠の鳥は嫌。外が楽しい」
メアリーはアクティブな子だからな。
「メアリー、帝国だけには行くなよ」
「行かない。私はメアリー・ローウェルなんだよ。あと、あそこには良い思い出がない。お母様が優しかっただけ」
何となく想像がつく。
メアリーって隠し子っぽいし、ロクに外も出られなかったのだろう。
「そうか……ならいい」
俺達はその後も話をしながら夜を過ごしていく。
「これさー、1人だったら話し相手もいないでずっとひたすら待つの?」
「そうなる」
「きっつ。無理な気がしてきた」
メアリーはちょっとなー……
「野宿はそれだけ難しいんだ。正直に言えば、この辺にはもう盗賊はいないだろうし、魔除けの石があるから魔物に襲われる可能性も低い。だがな、そう思って何の備えもしないと死ぬ」
「私らでは日を跨ぐ仕事は無理かもな……」
そもそもお前ら、ルーキーだけどな。
「合同で仕事を受ければいいだろ。そういうのを得意な奴を臨時でパーティーに入れるとかな。おすすめはローレンス」
「なるほどー。その辺も考えてみるかな」
「そうしろ。メアリー、友達は大事にしろよ。10年経っても楽しかったわ」
ずっと同じ町にいたアーヴィンはもちろん、ローレンスと話してもあの時と何も変わらずに楽しめた。
「当たり前じゃん」
メアリーがはっきりと頷く。
その後も話しながら過ごしていくと、時間になったので眠そうなメアリーがテントの方に向かった。
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