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ツー場面
「当初は、めちゃくちゃなフォームでは、ありましたね…でも確かに資質は、ありましたよ」
ウィナーとなった者のコーチは、テレビ番組でスロリーを語りながら、ふと断片的に、ある時を思い出していた。
(もう、10年以上前か…)
一人が引退するというから、そのギラッとは、無愛想そうな奴に話題の続きを求めた。
「はい、あの傘渚ってたら、俺の次に、ドーテーーー!!!って奴です…。」
…
… …「…それは、納得のいく結果だった、と」
「もう本気で、走らないでしょ…」
「え?」
「いや、彼は、走ったんですよ。我々は見たんですよ、必然を」
コーチの男は、読んでいた。
自分と同じ道をスロリーは歩まないことを。