表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
発情中のうさぎメイドは狼騎士に食べられちゃう?!  作者: つきのくみん
第3章 結ばれてもすれ違う想い
40/88

40 娼婦か処女か

 ラフィールはまったく意味がわからなかった。


 首から下げて、後生ごしょう大事に抱え込んでいる黒い丸薬。危険薬物の可能性を考えて没収したら、レナは震えながら取り返しに来た。


 あの必死な榛色の瞳に嘘はなさそうだが、うまく話が繋がらない。


「奇病から命を救う薬ではないのか?」


 ラフィールはレナの症状を詳しく説明しながら、ロディにそう確認した。


 身体の特徴を一時的に変え、発情全般に関する機能を増強促進させることができ、更には避妊効果もあるとなれば、大変に珍しい薬であることは間違いない。

 しかしそんな薬を、レナが服用する意味はあるのだろうか。


 ロディは緩く首をふった。


「娼館で使うために作っていたみたいだから、命に関わるというよりかは、主に性的な方面で生活の質を良くするための薬みたいだよ。その女の子の深刻な病気を治せるようなものじゃない。

 でもまぁ、容姿を変えられるうえ、媚薬的な効果も期待できるとなれば、娼館のお姉さんたちが使うのも納得だ。……そうだろう、ラフィール?」


 ラフィールはこめかみを押さえて目を瞑った。


「待ってくれ。意味がわからない。どうして、あいつはそんな薬を飲んでいるんだ……?」


 ロディは同情めいた視線を送ると、また一口お茶を啜った。茶葉の良い香りが鼻から抜ける。


「君みたいな男が娼婦にハマるなんて。モテ過ぎると一周回って、そこに行き着くもんなのかな」


 頭痛がする。レナの可愛らしい笑顔が甦ると、さらに胸までズキリと痛んだ。


「いや、あいつは男を知らないはずだ。彼女を娼婦扱いするな」


 自分でももどかしくなるくらい、ラフィールは彼女を優しく導いていた。大切に愛して咲かせようとしている花を、たとえ言葉であっても安易にけがしてほしくない。


「じゃあ、何でそんな薬を飲んでるんだよ? 娼婦とまではいかなくても、処女のふりをして君をたぶらかそうとしている毒婦なのかもしれない。君ほどの男が、迷いの森から来た怪しい女に、随分と入れ込んでいるのは事実じゃないか」


 実際フォレスターナ王家の後継争いは混迷を極めていて、地方領主までも巻き込む事態になっている。中央ではハニートラップも含め、何でも有りの状況になっていると、ラフィールでさえも聞いていた。


 しかしラフィールは辺境の地を守る一介の騎士。彼を誘惑したところで何もない。


「レナはそんな女じゃない」

「ふーん」

「「…………」」


 そこまで話して黙りこんだ。


「ふ」

「ははははは」


 ほぼ同時に、乾いた笑いが込み上げてくる。 


「バカらしい」

「ああ、本当にバカらしいよ」


 ロディは続ける。


「神に与えられたこの姿を、変えられる訳がない」


 それにはラフィールも力強く頷いた。


「ああ、できる訳がない」


 ラフィールもロディも幼い子どもではいられなかった。薬を飲むだけで姿を変えられるなんて、まるでお伽噺とぎばなしに出てくる魔法のようだ。


「その子の何が、君をそんなに惹き付けるのさ?」


 ロディは「ずっと気になっていたんだ」と付け加えると、目の前の悩める友人にも茶を勧めた。


 ラフィールは苦笑する。年頃の女じゃあるまいし、大の男が恋の話をするなんて馬鹿馬鹿しい。


 けれど娼婦扱いされている清らかな恋人が可哀想になって、喉を潤してからおもむろに口を開いた。


「最初は危なっかしくて放っておくこともできず、意識的に構っていた。任務中に保護した責任もあったし、突っ込みどころが満載の行動も、ちょうど良い退屈しのぎになったしな。

 でも、どこか怯えたような瞳をしているのに、何にでもひたむきに頑張る姿を見ていたら、無性に俺の手で守ってやりたくなった。ただそれだけだ」

「じゃあさ。容姿を変える薬だとして、本当の彼女がめちゃくちゃブサイクだったらどうするの? 君の食指が動くくらいだから、どうせ美人なんだろ?」

「人聞きが悪いな。俺は見かけにはこだわっていないつもりだ」


 レナの浮世離れした美貌は、それはそれでラフィールをやきもきさせてしまうのだ。


 ラフィールのマーキングが途切れたら、うるさい羽虫が、レナの周りを飛び回るのはわかっている。そして彼女は男たちをうまくあしらうすべも知らないだろう。


 ラフィールは仕事で長期間不在にすることもあるため、その点は非常に不安に思っていた。


 ロディは意外と真面目に答えてくれたラフィールをしげしげと眺めた。一蹴されると思っていた分、珍しさに質問を重ねる。


「……そもそもラフィールって、何の動物が好きなの?」

「種族へのこだわりも特にない」


 猫好きな部下アーダンのように、特定の種族に執着する男もいる。しかしラフィールは、肉食には肉食の、草食には草食の、そして雑食には雑食の女の良さがあると、そう思える程度に色々と余裕があった。


「……好きな肉は、うさぎ肉だけどな」


 答えあぐねたラフィールは、ぼそりと夕飯の希望を呟いた。

レナ「長老……。私、娼婦と間違えられています。職業に貴賤はないといっても……くすん。娼館で使うお薬を、毎日飲んでいたなんて……」

長老「所変わっても時代が変わっても、人間というものはそんなに変わらんものなんじゃ。ズバリ大人のワンコカフェで使う薬だったようじゃな」

☆ 雄の発情は雌の発情に誘発される形で起こるので、薬の影響も男性は女性よりも少ないです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[気になる点] うさぎ肉食べたら嫌われるぞ〜
[良い点] それぞれの良さがある、とか言いつつしっかり食べることを想像してるラフィールくんにニマニマしましたww 大人のワンコカフェってwww 長老……wwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ