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『すみません、急に招集がかかっちゃって・・・・・。昼までには戻れると思うんですけど。』
「うん、わかった。ちょっと待っててね。」
華穂様が携帯から顔を離し、こちらを向く。
「隼人くん、急用で今出掛けてるみたいなんだけど、どうしよう?昼まで待てば大丈夫みたいだけど。」
なるほど、そう来たか。
「雛ちゃんたちをお待たせするのも悪いですし、予定通りお伺いしましょう。」
今日は隼人の実家訪問の日だ。
母親から華穂様の実家訪問を聞いた隼人は、とても驚いて『帰るます!家とに!!その日。』と宣言していた。
メッセージでも動揺っぷりがわかるあたり、おそらく母親から聞いた時はかなり挙動不審だったのではないだろうか。
見てみたかった。
ゲーム内でも隼人の実家訪問のイベントは発生する。
ただし現状とは違う状態でだ。
ゲーム通りだと、本来ならば隼人は優勝を逃したショックでやさぐれている最中だ。
華穂様はそんな隼人を元に戻そうとひとりで実家に赴き母親から隼人の話を聞く。
というイベントだった。
実家訪問時に隼人は同席していないはずなのだ。
ゲームの強制力かどうかはわからないが、これで華穂様の訪問時に隼人のいない時間ができた。
その時間で隼人の母親から華穂様は話を聞くことができるようになるのだろう。
「わかった。・・・・・・隼人くん、隼人くんのお家で雛ちゃんと遊びながら待ってるね。」
『すみません。できるだけ早く戻るんで。』
「気にしないで、気をつけて戻ってきてね。また後で。」
こうして華穂様とふたり、若宮家の人々と隼人抜きで向かい合うことになった。
「華穂おねえちゃん、唯おねえちゃん、いらっしゃい!」
隼人に実家は築50年にはなるんじゃないだろうかと思われる昭和チックな木造平屋の一軒家だ。
玄関で待ちかねたように雛ちゃんが迎えてくれる。
「ふたりともいらっしゃぁい。来てくれてありがとぉ。さぁ、あがってあがって。」
母親に先導されて中に入る。
中は古いながらも整理整頓がされていてすっきりしていた。・・・・・・が、
「あ、そこ踏んだら床が抜けちゃうから気をつけてねぇ。」
ちょっと想像以上の古さだった。
居間に案内されて畳の上に座る。
手土産を華穂様の隣に置き、楽に取り出せるように風呂敷をゆるめておく。
隼人への差し入れはプリンが定番だが、先日贈ったばかりなので、今回は高良田家料理人特製のクッキーと華穂様お手製のパウンドケーキだ。
「本日はお招きいただきありがとうございます。
甘いものがお好きと伺ったので、よろしければ皆様でお召し上がりください。」
「あらあらぁ、わざわざありがとぉ。
どうぞ座布団にお座りになって。
さすが良家のお嬢さんねぇ。マナーがしっかりしてるわぁ。」
「これ、お菓子なの?食べたーい!!」
綺麗にラッピングされた箱を見て目をキラキラさせている雛ちゃんが可愛い。
「せっかくだから少し頂いちゃいましょう。お兄ちゃん達には内緒ね。」
勇人くんを始め上の子達は皆、部活やら何やらで外出中とのことだった。
母親と雛ちゃんは手土産を、華穂様と私は若宮家で準備されていた羊羹を食べながら話を始める。
「こんなところにわざわざ来てもらってごめんなさいねぇ。
本当はお客様をお招きするような家じゃないのだけれど。」
「いえ、なんだか皆さん仲良く暮らしてるのがわかって落ち着きます。」
柱には子供達の名前と日付けが書かれた黒い線が引かれている。成長の記録だろうか。
部屋の隅には落書きも見える。
古いが、家族の思い出がぎゅっと詰まっているのがわかるいい家だ。
「うふふふふ。ありがとぉ。
隼人はいい彼女を持って幸せねぇ。
お嫁さんになってくれる日が待ち遠しいわぁ。」
ブフッ げほっ こほっ
噴き出した華穂様の背中を無言でさする。
ガールフレンド関係での話題が入るだろうとは予測していたが、お嫁さんまでいくとは・・・・恐るべし、隼人母。
「ああああああっあの!わっわたし、隼人くんとつつつつ付き合ってるわけじゃっ・・・・・」
華穂様の言葉に隼人母が目を丸くする。
「あら、そぉなのぉ?あの子が女神だなんて言ってるから、てっきりもうお付き合いしてるのかと思ってたわぁ。ごめんなさいね。」
その言葉に隼人の女神発言を思い出した華穂様が赤面する。
・・・・・・一弥みたいにわかってて仕掛けてくるのも厄介だけど、若宮親子のような天然もまた恐ろしい・・・。
「ふたりが恋人同士じゃないのは残念だけれど、恋人でもない相手にあんな大胆なことが言えるなんて、あの子も成長したのねぇ。
それはそれで親としては嬉しいわぁ。」
『大胆』の言葉に、赤面したままの華穂様が俯く。
・・・・・・・穴があったら入りたいんだろうなぁ。
「可愛い娘も欲しいし、お母さんとしては息子に援護射撃をしてあげないとねぇ。
今日はあの子のいいところをいーっぱい知ってもらわなくっちゃ。」
そんな流れでイベントで聞くことのできる隼人の話が始まった。
・・・・・・・ゲームの強制力すごいな。




