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Time is money 時は金なり
そういう言葉があるのだから、時間を金銭に換算して返すというのはおかしなことではないのかもしれない。
しかし、残念ながら今の私の24時間は華穂様のものだ。
執事というのは基本的に年中無休。
就寝の挨拶の後でも、呼び出しがあれば何時だろうと駆けつけるのが仕事だ。
そんなハードな仕事だがその職務にあった報酬も得ている。
自分の都合で許可なく華穂様の側を離れるわけにはいかない。
「申し訳ございません。
時間に関しては仕事に関わりますので、私の考えだけでは返答出来かねます。」
「なるほど。では高良田社長か華穂に許可を取ればいいな。」
え、いや・・・・たしかに理屈ではそうなんですが、できればもっと華穂様に迷惑をかけない方法がいいというか・・・・・。
と思うが、こちら借りがある以上そこまで言えない。
そもそも何が希望か聞いたのはこちらだ。
「・・・・・・ちなみにどのくらいの時間のご予定ですか?」
2〜3時間平日であれば、華穂様のレッスン中であれば取れないこともない。
それ以上ならやはり許可が必要になる。
「1週間と言いたいところだが、せいぜい4〜5日が限度だな。」
「4・5日っ!?」
何も飲んでないときでよかった。
今飲んでたら確実に流に向けて吹き出していた。
「そんなに長く・・・。何をご希望ですか?」
金銭的に見れば4・5日の拘束で返せるような恩ではないのだが、それでも普通に考えて御礼に4、5日は長過ぎる。
「お前と華穂を見ていて執事を雇うのもいいかと思った。
だが、実際体験してみなければどれ位の費用対効果があるかわからん。
しかし、試してみようにも国内に執事はいない。
だからお前がちょうどいいと思った。」
あぁ、手近な私でお試し執事体験をしたいってことですね。
確かにそれなら出来るだけ長い時間欲しいだろう。
「許可は俺から・・・・・」
「唯さんお待たせ!!」
流の声を遮るように元気な声がかけれらる。
「華穂様!?」
パーティー終了までもう少し時間はあったはずだ。
予定が変わったのだろうか?
なんにしろ終了前に会場まで迎えに行かなかったのは私の失態だ。
「お迎えに行かず申し訳ございません。」
慌てて立ち上がって頭を下げる。
「あ、わたしが終了時間より早く出てきちゃっただけだから気にしないで。
流とちゃんと合流できたみたいでよかった。」
「・・・・・・唯ちゃん、久しぶり。」
華穂様の向こう。少し離れたところからひんやりとした声がかけられた。
「い・・・一弥??」
一弥と会うのはあの騒ぎ以来、初めてだった。
無視すると後が怖いのでメッセージのやり取りはしていたが、生で会うと最後にあったときのことを思い出して、心臓が嫌な感じに騒ぎ出す。
しかも、理由はわからないが明らかに怒っている。
「貴様か。」
なぜか一緒にいた流も不機嫌な声に・・・・・。
貴様とかいう単語、初めて現実で聞きました。
「え、えーっとね。一弥とも会場で会ったの。
今度の新作バッグのイメージキャラクターでサプライズ登場だったんだよ。」
華穂様も不穏な空気を感じたらしく、やや声が震えている。
そんな私たちをよそに不穏な空気はどんどん高まっていく。
「・・・・・・・・・何度かパーティーで見かけたけど、こうやって挨拶するのは初めてかなぁ。
初めまして槙嶋CEO。皇一弥です。唯ちゃんとは仲良く《・・・》させてもらってます。」
「槙嶋流だ。
貴様のことはテレビでよく見ている。
先日の報道では随分こいつを引っ張り回してくれたようだな。」
・・・・・・・怖い。明らかに火花が散っている。
流は先日の件を怒ってくれているらしい。
(流の中で勝手に)結婚相手の華穂様の執事である私を疲弊させた一弥は敵認定されたのかもしれない。
「おい、華穂。」
「ななななななっ何!?」
「こいつを4、5日俺に貸せ。」
ぎゃー!!
なんで今ここで言う!!!!
「は?」
突然のことに華穂様はぱっくり口を開けている。
「へぇ、唯ちゃんってレンタルできるの?知らなかったなぁ・・・・。」
底冷えする視線でゆっくりと笑みを浮かべる一弥が怖い。
「何処かの誰かの所為で傷ついていたところを助けてやったからな。
礼がしたいと言われた。」
「へぇ・・・・・・。」
笑みを浮かべたまま一弥の視線だけが一層厳しく冷たくなった。
まずい。これ以上刺激したら大惨事になる!!!
「華穂様、パーティーお疲れ様でしたっ。
裕一郎様も屋敷でお待ちですし、帰りましょう。」
「うっううううううん!!そっそうだね!!!
一弥、流、またね!!!」
「それでは本日は失礼いたします。」
視線を合わせないようにぺこりと頭を下げて、出口に向かう。
「おい!」
流の声びくりと肩を震わせて足を止める。
怖いので振り返れない。
「礼の件、俺から高良田社長に許可を取ってやる。俺から連絡するから待っていろ。」
「か、かしこまりました。」
再び頭を下げ、背中に突き刺さるような視線を感じながら今度こそ私たちはラウンジから脱出した。




