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「くっそおぉぉぉぉおおぉぉおおおぉ!!!!!」



天に向かって雄叫びをあげて、そのままピッチに仰向けに倒れこんだ隼人の周りにチームメイト達が駆け寄っていく。


ポストにはじかれたボールはゴールに入ることは無かった。

ウィンズは優勝できなかった。


なのに、その光景はまるで優勝を決めてみんなで喜びあうために集まっているように見えた。


観客席からも拍手が上がる。

優勝できなかったのに、残念そうな顔をしている人々の顔は見当たらない。

みんな笑顔で拍手を送っている。


「いい試合だったな。これだからサッカーは面白い。」


裕一郎様が満足気に頷く。


「そうですねぇ。いつもテレビでは見ているけれど、こうやって直接応援するのもいいですねぇ。」


裕一郎様の言葉に同意するように微笑む隼人母。

弟妹たちも満足したようで、


「お兄ちゃんかっこよかったー!」


隼人兄はやとにぃは最後の最後で決めきれないよなー。それが隼人兄らしいっちゃらしいけど。」


と、笑いながら好き勝手なことを言っている。




「あ、お兄ちゃん!!」


コート内から選手たちが戻ってくる。

隼人は真っ直ぐこちらに向かってきていた。


「今日はっ、応援っ、ありがとうっ、ございっ、ましたっ!!」


全力だったからかまだ息が上がっている。


「優勝、できなくてっ、すみまっ、せんでしたっ!!」


そのまま深く裕一郎様に向かって頭を下げた。


「頭を上げなさい。

あくまで私の好みだが、私は君たちが全力でプレーする姿が好きなんだ。

正直、勝ち負けは関係ない。

勝負事だから優勝を求められるのは仕方ないけれど、それでウィンズらしさが失われるのであれば本末転倒だよ。

私は・・・・・優勝こそ逃してしまったけれど、今まで見た試合の中で一番観ていて楽しい試合だったよ。

楽しい時間をありがとう。」


「うふふふ。お母さんも楽しかったわぁ。また来るわねぇ。」


「兄貴、俺もくるからな。」


「雛もー!!」


微笑ましい光景に華穂様とふたりで笑ってしまう。

すると、笑い声が聞こえたのか隼人がこちらを向いた。


「華穂さん。」


「隼人くん、お疲れ様。楽しそうな隼人くんが観れてわたしも楽しかったよ。」


隼人は大きく息を吐いたあと、意を決したような表情で口を開いた。


「・・・・・・・・ありがとうございます。

華穂さんの言葉で俺は自分がなんでサッカーをしてるのか思い出しました。

今日、みんなに楽しんでもらえたのは華穂さんのおかげっス。

華穂さんは俺のサッカーの女神です。」


みるみるうちに華穂様の顔が赤くなっていく。


「ヒュー♪隼人兄がキザなこと言ってるー!!」


「華穂お姉ちゃん女神様なの?すっごーい!!」


「兄貴、そういうのは家族がいないとこでやってよ・・・・・。」


囃し立てる声や呆れを含んだコメント。

親組はその様子をニヤニヤにこにこ見ている。


私ももちろん顔には出さないがニヤニヤだ。


「うううううううるさいっ。本当のことだから仕方ないだろっ!!」


からかわれて真っ赤になってる隼人が可愛い。

華穂様はこの追撃にますます赤くなっている。


「っと、もう行かなきゃ。

華穂さん、裕一郎さん、唯さん。

今日は本当にありがとうございました。失礼しまっス。」


赤い顔のまま走り去っていく隼人に向かって『春ねぇ。』とつぶやく隼人母の声が印象的だった。





「こちら、皆さんで召し上がってください。」


裕一郎様が隼人母にプリンが家族人数分入った紙服を渡す。


「あらあらぁ、ありがとうございますぅ。高良田さんのお家のプリンは美味しいから子供達も喜びますわぁ。」


「「「「ありがとう」ございます。」」」


揃ってお礼を言う子供たちが可愛い。

高良田家の運転手にわざわざ届けてもらった甲斐があった。


今日、隼人の家族に会うことはわかっていたのであらかじめ料理長に『たくさん食べたいからいつもより5個以上多く作って欲しい』と頼んでおいたのだ。

最初から隼人家族分を持っていくと不審に思われるので、隼人の家族に会ってから電話をかけて持ってきてもらったのだ。


「わたしったらなぁんにも持ってきてなくてぇ。」


「いえ、気になさらないでください。もともと選手たちへの差し入れとして多めに持ってきていたものですから。」


相手に気を遣わせる真実は言うべきではない。


「あぁ、そうだわぁ。

華穂さん、今度 家に遊びに来てください。

華穂さんには隼人がとぉってもお世話になってるみたいだから、家に来て貰えばお礼になるものが渡せると思うのぉ。」


「えぇ!?いえ、そんなわけには・・・・・」


慌てて華穂様が遠慮するように首を振るが


「華穂お姉ちゃん!家に来てくれるの??いついつ??

雛、華穂お姉ちゃんいっぱい遊びたい!!」


雛ちゃんにこう言われては断り辛い。


「え、えぇっと・・・・・・・。」


「華穂、せっかく誘ってもらったんだからいっておいで。隼人くんの実家の住所は運転手が知ってるから。」


これがダメ押しで隼人実家訪問が決定した。


「うふふふふ。

息子のガールフレンドが来てくれるなんて初めてだわぁ。

腕によりをかけて準備しなくっちゃぁ。」


ガールフレンドという単語に華穂様がピクリと反応する。

お母さん、その言葉は口に出してはいけなかったようです・・・・。


「わ、わかりました!!執事の唯さんと一緒にお伺いしますのでよろしくお願いします!」


私の隼人実家訪問も決定した。


ちょっと出かけてて17時までに書けませんでした。

やっぱストック無いのが厳しいですねぇ。

ちょっと仕事もバタバタしてるので、すみませんがもしかしたら投稿できない日があるかもしれません。


隼人の家族構成


母 43歳(しかし見た目は30前半)

隼人

弟(高1)勇人

妹(中1)

弟(小3)

妹(幼稚園年長)雛

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