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R15?

「で、話って何?」


一弥以外と簡単な挨拶を済ませた後、一弥がそう切り出した。

この場を仕切るのは社長ではなく一弥らしい。


「そうですね。いくつかありますが、まずは連絡が取れなかった件について。

日曜日の番組放送後、すぐに高良田がこちらと連絡を取ろうとしたんですが、今日までまったく連絡が取れませんでしたので、私が代理としてまいりました。

連絡が取れなかった理由をお聞かせ願えますか?」


一弥の隣のふたりがあからさまにビクリと震えた。


「んー、こっちもずっとバタバタしてたからねぇ。気がつかなかったんじゃない?」


「週刊誌の報道前には報道の事前連絡がそちらからありましたが。今回はこちらへの連絡は思いつきませんでしたか?事務所から今回の件騒動についての公式発表も出ていないようですが。」


一弥ではなく社長に視線をあわせて言う。

冷や汗なのか冷房のよく効いた部屋なのに、社長は額から滝のような汗を流していた。


「もっ、申し訳ございません。なにぶん突然のことで対応が追いついておりませんで・・・・」


「そうですか。こちらもそれなりに忙しかったので、どなたかの発言のせいでお忙しかったのはお察しいたします。

しかし、ビジネスとしてそれは言い訳にはなりません。

不用意な発言をする芸能人やそれに振り回されてクライアントを蔑ろにする事務所にフェリシテの大事な看板商品をお任せするわけにはまいりません。

この件はフェリシテ社内で会議にかけるよう提言しておきます。」


「まままままままま待ってください!その、この件についてはこちらも困惑してるんです。

高良田社長からは交際の事実はないと聞いてたのに、こんなことになって・・・・。

最初から交際がわかっていれば、まだ事前に準備ができたんです!!」


慌てているからだろうがずいぶんな責任転嫁だ。

あの受付の対応もトップがこのレベルなら納得だ。経営者としての底が知れる。


「交際の事実はありません。

週刊誌の記事については皇様も否定なさっていたはずです。」


「お嬢様との交際がないというのはわかってます!

しかし、執事ならあなたも事前にあの記事に目を通したはずだ。その時に教えてくれていれば・・・・」


「何度もいいますが交際の事実はありません。

皇様も現在交際相手がいるとは一言もおっしゃっていません。」


「へ?」


あほヅラでポカーンと口を開けて止まっている社長の横で、一弥は満足そうに笑う。

・・・・・・・・・腹が立つ。

そう、あの番組で一弥は一言も私と付き合っているとは言っていない。

『俺の女』という言葉の間には『俺の[おもちゃにしている]女』だったり『俺の[邪魔をしてくる]女』など、間に音にしていない言葉がある。

もしくはからかって遊べる私を自分の所有物のように思っているのか。

『俺の女』=『交際している女性』ではないのだ。これで嘘はついていない。

屁理屈かもしれないが一弥はそういう男だ。


「そ、唯ちゃんとは別に付き合ってるわけじゃない。今はまだ・・・・・ね。」


「一弥!!!おまえっ!!!」


固まっていた社長は一弥の言葉に顔を真っ赤にして怒り始めた。もう一人が慌ててなだめている。


「うるさいな・・・・・。」


つぶやきとともに鋭い視線が飛ぶ。

一瞬にして赤かった社長の顔が青くなり、大人しくなる。


「かずさん、俺、唯ちゃんとふたりで話したいから社長連れて外出てて。」


社長は大人しく弱々しい足取りで、かずさんと呼ばれた男性に支えられて出ていった。

完全に牛耳られている。・・・・・なんだか可哀想になってきた。


「やっとふたりきりになれたね。」


社長を見送っている間に、一弥はさも当然といったふうに私のソファーに移ってきていた。

さらにこれも当然といったふうに肩を抱いてくる。


「本日は裕一郎様の代理としてきております。ここでの件は全て報告します。」


「ふーん、じゃあ報告できないようなことしよっか?」


一弥の長い指が私の顎にかかり、一弥の方を向かせられる。

その顔は艶然と微笑んでいた。


「・・・・・・また投げられたいんですか?」


「この態勢からでも投げられる?」


肩にかけられていた手でグッと後ろに引っ張られる。

その力に抗いきれず、私はそのまま後ろからソファーに倒れこんだ。

真上にきた一弥の顔を覗き込む。


「・・・・・・これでは投げられませんね。」


「でしょ?もう諦める?」


一弥の手が服の上から脚を撫でていく。


「まさか。

せっかく穏便に済ませようと投げを提案をしたのに・・・。

男として役に立たなくなるのとテレビに出れない顔になるの、どちらがよろしいですか?」


肘も膝も使えますよ?

と、それぞれ立ててアピールしてみる。

一弥はあっさり私の上から退いた。


「それはどっちも御免被りたいなぁ。」


降参だと両手を挙げるポーズをする。


「怖い怖い。唯ちゃんに手を出すのは命懸けだねぇ。」


最初から手を出す気なんてなかったくせによく言う。

表情こそ作ってあったが、その目にはまったくといっていいほど欲望・・・・・・情欲というものを感じなかった。

見えるのは興味関心。こちらがどんな反応を返してくるのか楽しみにしているのを感じた。


「私の対応に皇様はご満足でしたでしょうか?」


起き上がって、髪を手櫛で整えてから問いかける。

私の問いにきょとんとした後、すぐにニヤリとした笑いを返す。


「あぁ、満足だよ。デートの時と変わってなくて安心した。」


「それはようございました。」


「まあ、満足できなかったらあのまま続けてたから、それでも俺はよかったけどねぇ。」


どっちにしろ一弥がおいしいおもいをするわけだ。

私を食べたところでおいしいかどうかは甚だ疑問だが。


「では、ご満足いただけたところで本題に入りましょうか。」


背筋を伸ばしてまっすぐに一弥の目を見つめる。


「あなたの狙いはなんですか?」


ブクマ、拍手、評価ありがとうございます。


連日評価頂けて嬉しいです。

あとがきで私が喜んでるから『仕方ないから評価してあげよう』という気分になってくださるのでしょうか。

優しい読者様に恵まれて唯たちも作者もとても幸せです。

これからもよろしくお願いします。



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