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映像を直に見てもらった方が早いということで、裕一郎様に華穂様の部屋までご足労いただき先ほどの映像を見てもらう。
問題のシーンが終わりCMに入ると、裕一郎様は深くため息をつかれた。
「もう一度念のために確認するけど、唯くんは一弥くんと付き合っているわけじゃない・・・・。
それで間違いないね?」
「はい、ございません。」
「ふむ・・・・・一弥くんは何を考えてるのか・・・・・・。」
もう一度ため息をつかれると、考えるように腕組みをされる。
「とりあえず警備会社に連絡して警備の強化依頼を。
唯くんは事態が落ち着くまで屋敷外での業務は中止。華穂が外に出る時は別の者をつける。
一弥くんの事務所へは私から事実確認の連絡を取ろう。」
「誠に申し訳ございません。」
私事で主家に迷惑をかけるなど執事にあるまじき行為だ。
申し訳なくて頭が上げられない。
「君のせいじゃない。私はすぐに確認に入る。警備会社の方は頼むよ。」
「かしこまりました。」
裕一郎様が部屋から出て行くと華穂様がそっと手を握ってくださった。
「お父さんの言うとおり、唯さんが悪いわけじゃないから気にしないで。
顔色が悪いから、お父さんからの仕事が終わったらすぐ休んで。
本当はわたしがその仕事 代ってあげられたらよかったんだけど・・・・・。」
「いえ、お気遣いだけありがたく頂戴いたします。それでは私も警備会社に連絡してきます。
お言葉に甘えて、今日はこれで下がらせていただきます。」
「うん、今日はゆっくり休んでね。」
「はい、ありがとうございます。」
ここからが慌ただしい日々の始まりだった。
裕一郎様から呼び出しがあるかもしれないと遅い時間まで自室で待機していたが、その日の呼び出しはなかった。
日が明けた月曜日は予想通りモーニングショーからこの話題でもちきりだった。
『一弥 真剣交際宣言!!お相手は女性執事!!』
スポーツ紙では皆一様に同じような見出しで一面を飾っていた。
最初に写真を掲載した週刊誌ではHP上で
『○月□日発売の本誌の写真表記に誤りがありましたので訂正いたします。
皇一弥氏の後の一般女性が執事の女性で、写真右側の女性が社長令嬢になります。』
などと、わざわざご丁寧に訂正を入れていた。
カモフラージュ要員から昇格したらしい。
朝食の席で裕一郎様から話を聞くと一弥の事務所とは連絡がつかないらしい。
事務所にかけてもずっと話中で、CM時にアポを取っている担当者の携帯も反応がないという。
「それだけ事務所側も想定外の事態だったんだろう。
今は関係先からの問い合わせへの対応で精一杯だろうな。
フェリシテの担当者の名前で着信履歴があるはずだから、それへの折り返しを待つしかない。」
「お手数をおかけします。」
食堂の窓から正門の方を見る。
正門から屋敷まで随分距離があるにもかかわらず、門前にたくさんのマスコミが待ち構えているのが見えた。
撮影対象がご令嬢ではないから遠慮は要らないと思っているのか、はたまた一弥の本気宣言は高良田財閥トップを敵に回しても撮影したいほど魅力的なネタなのか。
どデカイ望遠レンズをつけたカメラを三脚に設置して屋敷の方を狙っている。
・・・・窓に近づくのもやめた方が良さそうだ。
『いやー、昨日の皇さんの発言にはびっくりしましたねぇ。』
『そうですね。ほんとに突然の発表でスタジオは混乱状態だったようです。事務所の方も把握していなかったようで、前回のようにFAXなどはまだ来ていません。』
裕一郎様がつけたテレビから聞き飽きた話題が流れてくる。
『お相手の女性は、噂されていた社長令嬢の執事・・・って報道されてますけど。』
『はい、皇さんの発言しか情報がないのでウラは取れてないんですが、写真で皇さんの後に写っていらっしゃる方がお相手の方で、ご職業は執事だそうです。
写真を検証してみたところ、おそらく身長は170cn前後でとてもスレンダーな方に見えます。
お顔はモザイクでわからないんですけども、写真を保管している週刊誌の編集部によるとクールビューティ系の美人らしいです。』
『おいくつくらいの方なんですか?』
『それがこの方情報がとても少なくて、皇さんの発言も夜遅かったですし、まだ詳しい情報は入ってきていない状態なんです。』
『美人執事かぁ。女性で執事の方っていらっしゃるんですねぇ。美人に甲斐甲斐しく世話されるって男の夢というか、ロマンがありますね。』
「朝から品のない会話だな。」
プツッ っという音を立ててテレビは沈黙した。
「唯くんの情報はまだ出回っていないようだ。
時間の問題だろうが、わざわざ出向いてやる必要はないな。
昨日言った通り、しばらくは屋敷で過ごしなさい。
対策はあちらの事務所から連絡が来てから練ることにしよう。」
「はい。」
「華穂、私は仕事に行ってくる。
特に何もないとは思うが、注意して過ごしなさい。
何かあったらしっかり唯くんを守ってあげるように。」
「うん、任せて!」
・・・・・・なんて情けない話だろう。
本来ならば私が華穂様を守らなければならない立場だ。
主人から守って貰わねばならないなど情けなさ過ぎる。
自分の非力さにじくじくと胸が痛んだ。
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