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「唯さん、唯さん!!唯さぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


屋敷中に響くのではないかと思われる華穂様の叫び声が聞こえたのは、華穂様の書斎で資料を補充していた時だった。


「どうなさいました!?」


「こここここここここれっ!!!!!」


慌てて駆け寄ると、華穂様はテレビを指差した。

テレビでは新発売のお菓子のCMが流れている。


「・・・・・食べたいんですか?」


「ちっがーう!!巻き戻すからちょっと待って!!」


華穂様が巻き戻して見せてくれたのは、お気に入りの生放送の音楽番組だった。

華穂様はこの番組が大好きでテレビで見つつ、ちょっとでも見逃さないようにと『見ながら録画』の機能を使っている徹底ぶりだ。

今回はそれを使って見せたかった所を見せてくれるらしい。



『さて、続いてのゲストの方は・・・・・』


『今話題の皇一弥さんでーす!』


『こんばんは。』


司会者の隣に座る一弥をカメラが写す。

今日の衣装はいつもの黒一弥で、あの曲ではなさそうだ。


『いや〜、相変わらず世間を賑わせてるねぇ。』


『そんなつもりないんですけどね。

今はスマホとかみんなカメラ持ってますから、何処にいても見つかっちゃって・・・・・ 。

やっぱりどんな格好してもオーラが隠せないんですかね。』


一弥はテレビ仕様らしくいつものようにチャラくなく、ちょっとワイルドでミステリアスな雰囲気を漂わせている。

憂鬱そうにため息をつく姿に会場から女性客の黄色い声が上がる。


え?ここよかった??自分でオーラとかいってる時点で馬鹿っぽく聞こえるのは私だけ??


『どんな格好っていってもあの格好はびっくりしたわ〜。

だって世の中の誰が天下の皇一弥がキャラクターポンチョ着てると思う!?

あの写真見た時は我が目を疑ったわ。』


この番組の司会者はワイドショーの司会もしているので芸能ニュースに詳しい。


『そうですか?

俺のモットーは【何事にも全力で】なんで、あそこで遊び尽くすならあの格好の方がいいでしょう?』


『まあねぇ、逆に【いかにも皇一弥です】みたいなのがあそこに居たら浮くしねぇ。

で、なんであんな態勢になることになったん?』


『いやー、マジで一本背負いで投げられたんです。』


『え?ほんま??あの写真合成とかちゃうん??』


『残念ながら本当です。俺、まさか女の子に投げられる日がくるなんて思ってもみなくて笑い転げちゃいました。』


『なんで投げられたん?二股ばれたとか?』


『そんなことしませんよ。俺、この人って決めた子には一途なんで。外でキスしたのが恥ずかしかったんじゃないですか?』


どよどよと会場中がざわめく。

司会者はペラペラ話す一弥に逆に動揺している。


『・・・・聞いた俺がいうのもなんやけど、そこまで言うてええの?事務所は交際否定でFAX出してたやろ??』


『いいですよ。俺、隠す気ないんで。別に交際否定が嘘なわけじゃありません。俺は社長令嬢と交際してませんし。』


嫌な予感がひしひしとする。背中に冷や汗が流れる。


『俺の女は・・・・・・・社長令嬢付きの執事なんで。』


次の習慣、テレビが壊れたのではないかと思うくらい無音になった。

誰もが今聞いたことが理解できないといった顔をして固まっている。

やがて、爆発的な女性の悲鳴がテレビから聞こえてくる。

先ほどのうっとりした悲鳴ではなく阿鼻叫喚。

スタッフの声だろうか『一旦CM!!』という声が飛んできてそのままCMに切り替わった。



「あの・・・・唯さん、大丈夫??」


華穂様が気遣わしげな視線を向けてくる。


大丈夫。


と言いたいところだが、正直頭が痛くて仕方ない。


今は日曜夜。

明日は朝のモーニングショーから昼のワイドショーまでこの話題で持ちきりだろう。


恐らくこの屋敷にもマスコミが張り付くはずだ。

敷地内に侵入しようとする不届き者もでるかもしれない。



あいつは今度は一体何を企んでいるんだ。

あいつのことだから何か狙いがあるはずだ。

何も考えずに不用意な発言はしない。

ここで私と交際していることにして、なんのメリットがある?

華穂様に近づくための布石ならそのまま華穂様との噂を流していた方が有利なはずだ。

私に矛先を変えてくる必要性がわからない。

マスコミの注目を集めることで私の動きを封じて、華穂様と引き離す??



「申し訳ございません、華穂様。この件を至急裕一郎様に相談してまいりますので一旦失礼いたします。」


「うん・・・・・。」


不安そうな華穂様に見送られて私は裕一郎様の書斎に向かった。

エセ関西弁ですみません;;


自分が標的だとは欠片も考えないニブチン執事。

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