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空太の訪問から3・4日はやや挙動不審だった華穂様も1週間もすると表面上はだいぶ落ち着いてきた。
ふと見ると顔が赤くなっていることがあるので、ほんとに表面上だけなのだろうが。
予想外のところから預かることになった爆弾をいつ華穂様に渡すか。
そんなことを悩んでいる時に、今度は私の方に爆弾が降ってきた。
それを見せられたのは業務終了前の定時報告の時だった。
『人気テーマパークで修羅場!?一弥、投げられた夜!!』
ライターのセンスを疑うようなチープな見出しと、見開きページをでかでかと使った投げられて地面に尻餅をついている一弥の写真が載っている週刊誌があった。
「一弥くんの事務所から連絡があった。
今週発売の週刊誌に載るそうだ。
これは事実で間違いないかい?」
「読ませていただいても?」
「あぁ。」
『○月△日22時過ぎにその写真は撮られたーー
撮影者によると最初その男女4人のグループは仲良く写真撮影をしていたそうだ。
それだけならどこにでもある光景である。
しかし、次第に虎のポンチョの男性と黄色いクマのポンチョの女性が険悪になり、男性が仲直りのキスをしたところ怒った女性により見事な一本背負いで投げられてしまったらしい。
その時フードの中が見え、男性があの大人気歌手 皇一弥であることに気づいた撮影者は驚いたという。
その後女性は怒って帰ってしまったが、一弥はその場で笑い転げていたという。
いったいなにがあったのか・・・・。
記者はその情報をもとに、当日テーマパーク内にいた人々に話を聞き一弥の足取りを追った------』
あいつ、あの後笑い転げたりしてたのか!!!
一弥とはあの日以来メッセージブロックをしたままなので一切連絡を取っていない。
この記事からするとまったく反省はしていないようだ。
「で、真実かな?」
ニヤリと笑う裕一郎様は楽しそうだ。
事実でないとわかっているくせに聞いてくるあたりが、私で遊ぶ気満々で意地悪い。
「裕一郎様もお分かりかと思いますが、写真以外はほとんど嘘です。」
だって、記事内で私と華穂様入れ替わってるし。
なぜかその後の記事の内容では投げた女性は日本有数の大企業の社長令嬢で一弥の恋人であり、一緒に連れていった男女(私と隼人)をカモフラージュに堂々とイチャイチャしていた、みたいなことが書いてあった。
カモフラージュもなにも、二手に分かれていたからほとんど一緒に行動していないのだが。
妄想記事もいいところだ。
私と華穂様の入れ替わりについては華穂様と一緒にパーティーに出ることも多いので単なる勘違いなのかもしれないが、1使用人より社長令嬢の方が話題になると思ってあえて華穂様にしている可能性が高い。
その後は一弥の華やかな女性遍歴がページの空白埋めに使われている。
・・・・・・書くことないなら見開きページなんてとるなよ。
内容のうっすーい記事である。
Wデートから1ヶ月も経って記事を出すのは、追跡取材をしたが新たな写真が入手できず諦めて単独記事として出すことにした・・・といったところだろう。
一般人である私と華穂様はもちろん、隼人の顔にもモザイクかけられていた。
サングラスが功を奏し、隼人の正体はバレなかったようだ。
迷惑をかけずに済んだことにホッとする。
「じゃあ、どうしてこんな写真を撮られることになったのかな?」
『キスしたのかー。青春だねぇ。』と顔に大きく書いてある。
・・・・・・裕一郎様、その質問下手したらセクハラで訴えられても仕方ないと思います。
そんなことするわけないと自信があるからそこまで突っ込んで遊びたいんでしょうけど。
「痴漢が発生しましたので、撃退しました。正当防衛です。」
「ははははははは。
唯くんにかかると人気歌手も痴漢扱いかぁ。
じゃ、この記事はこのまま出しても問題ないね。」
「はい。」
不都合な真実があるならともかく、嘘で塗り固めた記事など出されたところで痛くも痒くもない。
そんなものに無理に圧力を加えて出版社の反感を買うくらいなら、出された記事に対して嘘ばっかりですねと流してしまった方がいい。
そもそも一弥の交際記事なんていまさら珍しくもないし、世間もたいして食いつかないだろう。
降ってきた爆弾が時限式だったと知ったのは週末のことだった。
6/16 21:00 拍手御礼話、空太に変更しています。
66の続きになります。
一弥の時と違ってほとんど拍手が増えないんですけど(というか、一弥の撤去予告した時の方が増えた)私、拍手設置ミスってませんよね!?
拍手ボタン消えてるわけじゃないですよね!?
空太が人気ないだけならいいんですけど・・・・・(いや、それも悲しいですが)
もし見れないという方がいらっしゃいましたら連絡お願いします。




