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コンコンッ
扉を叩くが返事がない。
リビングではなく書斎の方にいるのかもしれないと思いそのまま扉を開く。
すると薄紅に染まった部屋の中でぽつんとソファーに座る華穂様の姿があった。
何かあったな。
空太の姿が部屋にない。
普通であれば帰る前に一声かけるはずだが、それをせずに帰っていったということが何かあったということを物語っている。
ぼんやりした華穂様はこちらに気づく様子もない。
よっぽど深刻な喧嘩をしたのか、それとも・・・・・。
どちらにしろこちら側に戻って来ていただかないとならない。
私は驚かせないようにゆっくりと華穂様の前にしゃがみ込み声をかける。
「華穂様。」
徐々に華穂様の目に光が戻りパチパチと瞬きをし始める。
「唯さん?」
「はい。」
「唯さん・・・。」
華穂様の顔がへにゃりと歪む。
「唯さぁぁぁぁん。」
私の首にしがみつくようにして泣き始めた華穂様の背中を優しくゆっくりと撫でる。
どんどん嗚咽が大きくなるのを聞きながら、私はただひたすらその背を撫で続けた。
30分ほど経っただろうか。
徐々に華穂様の泣き声も小さくなり、呼吸も落ち着いてきた。
トントンと背中を叩いて合図をする。
「華穂様、喉が渇いたでしょう?お飲み物を準備いたします。」
私の肩の上に乗っていた頭がこくりと動くのを感じて、ゆっくり離れる。
泣き続けた華穂様の顔はすごいことになっていた。
顔は赤く涙に濡れ、まぶたは腫れて厚ぼったくなっている。
冷やす物も持ってきた方が良さそうだ。
華穂様は準備した濡れタオルで綺麗に顔を拭くと一緒に持ってきたレモネードを一気に飲み干した。
「唯さん・・・ありがとう。」
「いえ、落ち着かれたようでなによりです。・・・・・・・空太様と喧嘩でもなさいましたか?」
本当は聞くべきではないのかもしれない。
しかし、吐き出して楽になることもある。
そう思っての質問に華穂様は静かに首を振る。
「喧嘩はしてない・・・・・。ただ自分のニブさとバカさ加減に嫌気がさしただけ。」
ニブさ?
「わたしこれからどうしたらいいんだろう・・・・・・。」
これから・・・・・。
もしかして空太、裕一郎様のプレッシャーで変な方向に爆発して一気に告白までいった!?
しかもふたりっきりだったし、む、無理矢理とか・・・・・・・。
思わず華穂様の衣服に目を走らせてしまう。
顔はまだ腫れているし髪はボサボサだが、着衣が乱れた様子はない。
少なくとも無体な真似をされたわけではなさそうだ。
今の状態は、思ってもみなかった相手にずっと片想いしていたと告白されて戸惑っている・・・・・といった状況だろうか。
返事は後日か・・・・もしくはびっくりしすぎてフッてしまって、大事な友人を失ったと悲しんでいる・・・とか?
うーん、どちらも推測でしかないな。
もう少し情報が欲しい。
「・・・・・・空太様はどうして欲しいかおっしゃっていませんでしたか?」
華穂様の肩がビクリと震える。
地雷踏んだか?
「・・・・・・・言ってた。」
「その通りにするのはお嫌ですか?」
「・・・・・・わからない。」
わからない・・・・・・。
『嫌』ではないということは、空太がフラれて『そばにいたら辛いからもう会わない』というパターンでは無いようだ。
そうすると残りは
『付き合って欲しい』
フラれて『恋人じゃなくても友達としてそばに居たい』
『好きだ』と言い逃げ
この3パターンだろうか?
恋愛経験が乏しすぎてこれ以上思いつかない。
ゲーム通りだったら楽だったのに・・・・・。
こういう時は・・・・・・・・・
「華穂様、考えてもわからない時はとりあえず考えるのをやめましょう。」
「え?」
「考えすぎても良い答えが出るとは限りません。
むしろ華穂様は今混乱しておられるので、間違った答えを出してしまうかもしれません。
ゆっくり眠って元気になったらわかるかもしれませんし、ある日突然思いつくかもしれません。
空太様は いつまで《・・・・》に何をして欲しいかおっしゃっていましたか?」
華穂様はふるふると首を振る。
「じゃあ急ぐ必要はありませんね。
好きな時にどうするか決めたらいいと思います。
もしかしたら空太様から具体的なお願いがあるかもしれませんし。」
「空太からの具体的なお願い・・・・・」
ぼぼぼぼぼぼぼっ
!?
火が付いたように華穂様の顔が一気に赤くなった。
・・・・・・今日は何を言っても地雷になりそうだ。
「華穂様、今日は早く寝ましょう。
お食事はこちらにお持ちしますので、消化に良いものを作ってもらってきます。」
こうして私は戦略的撤退をした。
拍手たくさんありがとうございます。
6/16 21:00 拍手御礼話、空太に変更しています。
66の続きになります。
今回も掲載期間は未定で、次の話が決まり次第交換になります。




