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「あのね、唯さん。今度の日曜日なんだけど、空太をうちに招待してもいいかな?」
華穂様がそう言ってきたのは火曜日のティータイムの時の事だった。
「もちろん大丈夫ですが、突然どうなさいました?」
「空太って休みの日は勉強のためにいろんなお店を食べ歩いてるんだ。で、うちのご飯も外のお店に負けず劣らずすっごく美味しいから、空太の勉強になるかと思って。」
うーん、これは第2イベントの代わり??
空太の第2イベントは先ほどの華穂様も言っていた食べ歩きデートだ。
パーティーや勉強と忙しい華穂様が空太と一緒にいることで、いつも通りの自分でいることが出来、安らぎを感じる・・・という内容だったはずなのだが。
なんだかここでもゲーム通りにはいかないらしい。
「準備は昼食でよろしかったですか?」
「うん、お願い。」
「かしこまりました。空太様を招待するならその日は洋食系がよろしいですね。料理長に伝えておきます。」
「ありがとう。よろしくね。」
こうして、空太の初めての高良田家訪問が決まった。
ぽっかーん
というのは、こういう顔を言うのだろうなと思った。
迎えに行った車から降りた空太は口をあんぐり開けたまましばらく動かなかった。
仕方ないよねぇ・・・・・・
高良田邸は教科書にもでてくる赤坂の迎賓館に負けず劣らない歴史ある大豪邸だ。
指定を断っているだけで、重要文化財指定の打診を何度も受けている。
そんなところに幼馴染が住んでいるなんて信じられないことだろう。
「いらっしゃい、空太。」
待ちきれずに家の中から出てきた華穂様に空太が最初にかけた言葉は『お前、ほんとにお嬢様だったんだな・・・・。』だった。
食事の前に邸内の一部を案内する。
邸に入る前に『ほんとに』発言で華穂様に怒られ閉まっていた口は、再びぽかんと開くことになった。
「は?厨房があるのに自分の部屋にキッチンがある?」
「それぞれの個室に風呂がついてる上に大浴場がある?」
「てか、華穂の部屋だけで何部屋あんの?」
普段、華穂様が使われる部屋を中心に案内したが、カルチャーショックなのか後半はややげっそりしていた。
華穂様は華穂様で改めて自宅の凄さを再確認したのか、若干遠い目をしている。
「お前、これもう家じゃねーだろ。どこの高級ホテルだよ。」
「アハハー。ワタシモソウオモウ。」
そんなふたりの様子にクスリと笑ってしまう。
「おふたりとも、疲れるのはまだ早いですよ。ここからは華穂様も入ったことがないところをご案内します。」
私がふたりを連れて行ったのは庭だった。
高良田邸の前面には見事なフランス式庭園が整備されているのだが、私が連れて行ったのは庭園の端。
正面から見えないように木立で目隠しされたスペースだった。
「「畑!?」」
そこには、農家とまではいかないもののそこそこ立派な畑があった。
きゅうり、トマト、レタス、ほうれん草など様々な野菜が植わっている。
「ここは料理長のこだわりで作られた畑で、料理長自らお世話をなさっております。」
やはり野菜は鮮度が高い方がいいということで、葉物野菜を中心に自家栽培をしていた。
料理に使うときは、使う直前に収穫してくる。
「続いて厨房にご案内します。」
すぐに収穫できるように、畑は厨房のすぐそばに作られている。
よって、近くのドアを開ければすぐに厨房だ。
ドアを開けるとそこは戦場・・・・というほどではないが、3人の料理人がせっせと昼食の準備をしていた。
「料理長に許可は頂いておりますので、空太様はこちらをつけて自由にご覧ください。」
入り口すぐそばに準備しておいたエプロンとバンダナを渡す。
「華穂様はここから出ますよ。」
「えー、わたしも見たい!」
「邪魔になるからいけません。」
ぶぅぶぅ膨れる華穂様の背中を押して厨房から、すぐそばの従業員用の食堂の方に出る。
すると華穂様はくるりと方向転換し、中が見えるように扉につけられた小窓にぺたりと張り付いた。
子供のようである。
「唯さん、なんでわたしは中にいちゃダメなの?」
「料理長には空太様お一人分しか許可をいただいておりませんし、人数が多ければ多いほど邪魔になります。
同じ料理人である空太様にはどこにいたら邪魔にならないかわかるでしょうが、私たち素人ではわからない部分もあるかと思います。
特に華穂様にたいしては使用人の立場から退いてほしいとも言いづらいでしょうし、我慢なさってください。」
華穂様は渋々了承の返事をするとそのまま扉に張り付いていた。
「やっぱり空太は料理の時が一番真剣だよね・・・・。」
ぽつりと華穂様がつぶやく。
「楽しそう。」
空太が楽しそうな表情をしているのか、小窓を見て微笑む華穂様は満足気だった。
長い上に進展が・・・・^^;
次回はもう少し空太さん活躍するはず。
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