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順路にそって作品を見て歩く。

華穂様と流は気に入った作品があると立ち止まって感想を言い合ったりしている。

流の審美眼はかなりのもので『この花をもう少し左に向けたらグッとよくなる』とか『この部分は抜いた方がいい』など、まるで先生のように指摘していて、確かにそうした方が作品がよくなるだろうとは思えた。

・・・・・・・・それを展覧会で言うのはどうかと思うが。

華穂様は直感で作品を見るタイプで、技術的なことは気にせず活け手の想いが強く伝わる作品が好みのようだった。


観覧順序は小さい作品から大きい作品の順に並んでおり、大きい作品を出展できるのは腕のいい活け手だ。

花柳流で一番の腕の持ち主はもちろん家元である宗純で、この展覧会のトリをつとめるのは彼が作った大作である。

他の作品を全て見終わり、宗純の作品の前にたどり着く。


「迷いがあるな。」


一目見て流は宗純の作品をばっさりと切り捨てた。

華穂様も同意見のようで、困ったような顔をしつつも流の発言を嗜めたりしない。


宗純の作品は漂白された白い木の幹や枝を幾つも無造作に見えるように折り重ねたものに、花のついた蔓植物や葉物の花材を組み合わせた3mにも及ぶ大きなものだ。

巨大な土台に大量の花が活けられており、豪華絢爛。まさにトリを飾るに相応しいものだ。


周りからは『さすが家元、見事な出来で惚れ惚れしますわ。』という観覧者の発言が聞こえてくる。


のだが・・・・


「宗純先生らしくない・・・・・よね。」


作品の出来は完璧だ。

文句のつけようがない。ただ、そこから伝わってくるものがなかった。

作品からのメッセージがない。

何か読み取ろうと心を傾けると、作り手が伝えようとは思っていないわずかばかりの迷いを感じる。


"本当にこれでいいのだろうか"


そう迷いながら活けたであろう気持ちが伝わってくる。


今回のイベントはそれを読み取った華穂様が宗純の迷いを晴らすというものだったのだが・・・・・・。



流が読み取ってしまった場合どうなるんだろう。


技術的な面だけではなく感性もいい流は今回のイベントの核心部分をついてしまっている。

しかも流の性格から、おそらく回りくどいことはせずズバリと宗純に切り込んでいくはずだ。


・・・・・・・・・・・どうしよう。


流をここから排除すべき?

どうやって??

それともこのまま進んでイベント失敗させる??

でも、それだと宗純救われないし・・・・・・・・・!!



各攻略対象は一弥の闇のようにそれぞれが悩みだったり問題を抱えている。

・・・・・まあ、目の前の人のように一部例外はいるけど。

それを華穂様が解決することが各攻略者ルートのストーリーになるのだが、正直大団円にはしたくないので華穂様がその相手に恋をしない限りストーリーは放置しようと思っていた。

・・・・・・・・・・しかし、一弥の闇に触れて考えが変わった。

一弥を始め一部の攻略対象者は華穂様に救済されなければ悲惨な未来が待っていそうな気がする。

もちろんゲーム内ではそんなことは示唆されていない。

しかしそれは期限が限られたゲーム内だからだ。

5年、10年後は??

ちょっとずつ歪が大きくなって最悪な結末を迎えてもおかしくない。

・・・・・・・宗純もそう考えてしまう一人だった。

真面目な宗純は一途に悩んだ末、自ら命を絶ってしまいそうな気がした。

それだけはなんとしても避けなければならない。

華穂様に不要な負担を強いるのはしのびないが、華穂様とて宗純の死を望んだりはしないはずだ。

両思いになってもならなくても、宗純の悩みは払ってもらわねば。


・・・・・・・・これで宗純が恋が実らないことを苦に儚くなったりしたら笑えないけど。

ついでに一弥も振られたらヤンデレ化しそうな気がしなくもないけど。

そうなったらそうなったで仕方ない。私が責任持って華穂様を守ろう。

宗純には代わりの嫁、もしくは生きがいを探してあげよう。


とりあえずはまったく悩みのなさそうな流を何処かに追い払わないと・・・・・・。


「ようこそ起こしくださいました。槙嶋さん。」


・・・・・・・・・・・ちょっと遅かった。



ブックマークありがとうございます。

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