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52の続きなので時間が遡ります。

インディアナリバーの後も一弥とふたりでいろいろなアトラクションを回った。

一弥はすっかりいつもの調子に戻ったようで相変わらずふざけている。

ちょっとイラっとすることもあるが、さっきみたいな虚ろな表情をされるくらいならこちらの方がマシである。


華穂様達はパークのあちこちで見かけた。

ふたりとも仲良く話していてデートは順調そうだ。

それにしても、基本的に行き先は一弥に任せているのだが華穂様達に会う頻度が高すぎる。

会えなければGPSを頼りに探しに行くのだが、その必要がないくらいで次のアトラクションに向かうときは必ず見かけた。

やっぱりエスパー?


ゴーストマンションから出た時にはすっかり夕暮れになっていた。

建物内でずいぶん並んでいたし仕方ない。


「ねぇ、華穂様達といつ合流するの?」


「隼人には7時集合って連絡してあるよー。」


時計を見ると現在午後6時過ぎ。

集合まであと一時間弱だ。


「アトラクションに乗るには微妙な時間だね。

ちょっと早いけど集合場所に向かう?」


「うん、そのつもり。

それに下準備があるしねぇ。」


?マークを飛ばしたまま私は一弥に手を引かれていった。




うさぎのシルエットが描かれている扉をくぐるとメイド服の女性がずらっと並んで出迎えてくれた。


「お待ちしておりました。皇様。準備の方は整っております。」


「うん、じゃあ あとよろしく〜。」


一弥にポンと背中を押されて前に出ると、そのままメイドに両脇を固められる連れて行かれる。


「???」


あとよろしくって何!?


大きな鏡のある一室に通されると、メイドは笑顔で『失礼します』と言って私がかぶっていたポンチョやカーディガンを脱がし始める。

なんかこれ華穂様を豊福デパートに連れて行った時に見た光景のような・・・・・。


あっという間に下着姿にされバスルームに案内される。


「新しい下着はご準備しておきますので、その間に汗を流されてください。」


・・・・・まさかパーク内で風呂に入る日が来ようとは。

さっと汗を流して出ると、そこにはビスチェとショーツが準備してあった。


ドレスを着ろと?


ドレス用の下着があるということはドレスに着がえろということなのだろうが肝心のドレスはない。

下着姿のまま出てくるとまたしてもメイドに囲まれ、もみくちゃにされる。


・・・・・華穂様の気持ちがちょっとわかった。


「さぁ、出来ました。

よくお似合いです。髪の色さえ金髪なら完璧に雪の女王様ですね。」


メイクをやり直してもらうために閉じていた目を開ける。

確かに鏡に中には完全なるコスプレをしている自分がいた。

髪とティアラは綺麗に結びなおされパークに来たときの状態に戻っている。


あぁ・・・女王様ってそういうこと。


てっきり偉そうな態度を取っていたから女王様扱いされているのかと思っていた。

雪の女王はテレビでCMを見ただけだったので、普通の服装をしていたら髪型が同じだなんて気づかなかった。

よく見てるなぁ。

これもチャラ男スキルだろうか。


一弥にとってきた態度に少しだけ罪悪感が芽生える。

が、素直に謝る気にはなれない。


ありのままで・・・・ねぇ。


華穂様や隼人の素直さが羨ましくなる。

一弥ほど酷くはないつもりだけど、私も十分捻くれている。

攻略対象でなくとも華穂様は直してくださるだろうか。

そんなことを考えながらメイドに促されて一弥のもとに戻った。



「思った通り!やっぱよく似合うねぇ。」


「一弥に自分はともかく他人をコスプレさせる趣味があるとは思ってなかった。」


「自分はともかくって何!?別に俺そんな趣味ないよ!」


あのステージ衣装はコスプレじゃないのか。


「あ、でも他人というか女の子を着飾らせるのは好きだねぇ。俺好みの女に染め上げるってやつ?」


・・・脱いでいいかな、これ。


「ん?脱ぎたくなったなら俺脱がしたげるよ?」


・・・・・・やっぱりエスパー?


「遠慮しとく。」


「ざぁんねん。」


ちっとも残念そうじゃない顔で笑って、私の手を引く。


「下、見てごらん。」


目の前にある大きな窓から下を覗く。

ベンチに座っている華穂様と隼人の姿が見えた。

相変わらず仲良く手をつないだままだ。


「仲良さそうだねぇ。」


耳元で囁かれる言葉にぞくりとする。

いつの間にか私の後ろに回っていた一弥が腰に腕を巻きつけてくる。


「あんなにあがり症の隼人がずっと手つないでいられるなんて、よっぽど華穂ちゃんのこと好きなんだねぇ。」


うん、確かにそう思う。

今日一日で隼人の好感度は一気に上がったようだ。

その言葉には納得できるが、それはこんなに密着しながら言う必要のある言葉だろうか。


「あの二人が付き合い始めったら唯ちゃん余っちゃうね。」


「・・・・・・何が言いたいの。」


「べっつにぃ。ただ唯ちゃん寂しそうだなぁと思って。」


拳をぎゅっと握りしめる。

安っぽい同情なんていらない。


「で、この手は何?慰めてるつもりならそんなものいらないからはずして。」


「はいはい。じゃあひとりでごゆっくりどーぞ。」


背中の熱が離れると少し寒く感じる。

・・・・・・きっとよく効いた空調のせいだ。

窓から見える華穂様達を眺めながら一弥が部屋から出て行くのを感じる。


・・・・・・・大丈夫。私はひとりでも大丈夫。















この後、53のラストへ続きます。


この話の一弥視点を拍手御礼にUPしようと思っています。

完成したらまた後書きで報告します。


6/2 22:00 御礼小説UPしました。

【6/16 21:00 撤去しました。】

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