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「一弥、最後の演出について説明して欲しいんだけど。」


冷気を纏ったままつっけんどんに問いかける。

ゲームの内容としてこうなることは知っていたが、事前説明がなかったことは執事として見過ごせない。


「あー、あれ?

よかったっしょー。俺が考えたんだ。

実際やってみるまでどうなるかなーと思ってたけど、もう歌ってる間は華穂ちゃんが恋人にしか思えなくって、再会した時はうっかり抱きしめそうになっちゃったよ。

あ、歌ってる時以外でももちろん華穂ちゃんのことは好きだからねー。」


最後の一言は聞かなかったことにしよう。


「で、後のことは?」


「俺のファンの子たちはみんなマナーがいいから大丈夫だよ。

ライブをディスク化する時には帽子を合成するか髪を修正して伸ばすなりで顔は見えないようにする。

それでどう?」


私と一弥の会話についていけていない華穂様と隼人の間ではてなマークが飛んでいる。


「まあ、そもそもこの役に華穂ちゃん選んだのも、もしどこの誰だかバレても一番被害が少なそうだったからだし。」


一弥はチャラいがバカではない。

なにも考えていなさそうなフリをしてちゃんと最初から最後まで読んでいる。

そういう腹黒いところがムカつく要因かもしれない。


「あの・・・、唯さん、よくわからないから説明して欲しいんだけど。」


まだまだ一弥を追及したいところだが、まずは華穂様への説明が先だろう。


「今回のアンコールで華穂様は会場中のファンに顔を見られました。

ファン心理としては、芸能人でもない1ファンがライブの演出とはいえ恋人のように扱われ手の甲にキスを受けるというのは羨ましいことでしょう。

一番最悪なのは、今回のライブの画像がネットやテレビで流され華穂様の顔が画像として出回ることです。

一度そうなってしまえばどこの誰なのか調べるのは簡単ですし、そこから悪質な場合嫌がらせをされるかもしれません。

そこをどう考えているのか一弥に確認しておりました。」


私の説明を聞きふたりの顔から血の気が引いていく。


「大丈夫だよ。

天下の高良田財閥のお嬢様に喧嘩を売れる一般人なんていないし、もしいたとしても唯ちゃんたちが守るから華穂ちゃんが被害にあうことはない。

テレビで騒がれたとしてもスポンサーご家族へのサービスだと言えば説明できる。

ま、俺はそれが熱愛報道されてそのまま真実になるのもありかなって思ってるけど。」


なにもかも計算づくで嫌になる。


「華穂様をそちらの都合で利用して、祐一郎様を怒らせるとは思わなかったの?」


「もちろんディスク化する前に高良田社長に許可はとるけど、高良田社長はそんなに心の狭い人じゃない。

もし俺の読みがはずれて許可がでなきゃそこだけカットするさ。

華穂ちゃん、今回のアンコール嫌だった?」


「え・・・?嫌じゃ・・・なかったですけど。」


「ほらね。華穂ちゃんが怒ってないことに対して、あの人は文句は言わないよ。」


「本当に憎たらしいくらい可愛くない。」


「男が可愛いって言われても嬉しくないしねー。

唯ちゃんはもちろん可愛いよ。」


思いっきり大きなため息をついて一弥から華穂様に視線を移す。

ちょっと青ざめていた顔は私と一弥の応酬に呆然としていたせいかいつものものに戻っている。


「なんかみんな色々考えてるんだね・・・・・」


「華穂様の危機管理は大事な私の仕事ですから。」


「芸能人も職業柄、危機管理が大事だからね〜。

遊びに行くたびに週刊誌に撮られたら面倒くさいし。」


感心したような顔をする華穂様の隣で、隼人は気落ちしたような深刻そうな顔をしている。

一弥も気づいたようで隼人に声をかける。


「隼人、そんな顔してどした?」


「いえ、なんか俺まだまだだなって思って・・・・」


「一流サッカー選手がなに言ってんの。

人には得意不得意があるし、だいたい隼人は常に危機管理してないといけない性格じゃないでしょ。

サッカー一筋で酒もギャンブルもしないし女の子も苦手。

歓楽街にもいかないんだからスキャンダルにしようがないし。

それで俺みたいなこと考えてたらむしろ怖いよ。」


ここで一弥はにやりと嗤う。


「こういうのは俺みたいな危ない遊びが好きな人間が鍛える技能なの。

隼人はそんな無駄な技能磨いてないで、好きなことをまっすぐやってりゃいいんだよ。」


そこでちょっと考えているような仕草をする。


「あー、でも万が一の対処の仕方を練習しておくのもいいかなぁ。

よし!人数ちょうどいいしWデートしよう!!!」


またろくでもない提案が出てきた。


「なんで私と華穂様を巻き込む。」


「えー、いいじゃん。

そりゃあ女の子ふたり誘うくらい簡単だけど、そもそも見ず知らずの女の子じゃ隼人逃げちゃうし。

それに華穂ちゃんとは恋人っぽいことしたし、唯ちゃんはタメ口聞いてくれるようになったし、もうちょっと仲良くなれそうだなーって。

ね?華穂ちゃん!隼人のためにお願い!!」


「え?えぇっ!?」


『どうしよう!?』と華穂様が私と一弥の顔を交互に見ているが、私は華穂様にくっついていくだけなので、華穂様に決めていただくしかない。


隼人は・・・・・・

ん?その悲壮な決意をしたような顔はなんだ。


「華穂さん!!!!」


今まで黙っていた隼人が突然大きな声をあげる。


「俺とデートしてください!!よろしくお願いします!!!」


頭が膝につくんじゃないかというくらい思いっきりお辞儀をする隼人。


「はっ、はいぃぃぃっ!!」


あ、勢いに押されて返事をしてしまった。


「ありがとうございます!!頑張ります!!」


お辞儀をしたままの隼人は耳まで真っ赤だ。

しかも頑張るってどうするんだろう。


「よっし、きっまりー!!

じゃあ、詳しい日程や行き先はメッセージで決めよう!」


ご機嫌な一弥にパニックの華穂様、真っ赤な隼人と現場は混乱気味である。

かくゆう私も困惑していた。



Wデートなんてイベント、ゲーム内でやってない。



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