35
会場内が明るくなり、ライブ終了のアナウンスが流れる。
ステージ上に華穂様と一弥の姿はない。
昨日のメッセージには楽屋に来てと書いてあったし、楽屋に行けば会えるだろう。
「隼人様、私はこの後華穂様を迎えに楽屋に行きますが、隼人様はどうなさいますか?」
「あ・・・はい。俺も一緒にいきます。」
なんだろう・・・?
隼人の元気が無くなっている気がするが、ライブが終わったのがそんなに残念なのだろうか。
原因を追及する暇もなく、案内に来たスタッフに連れられて楽屋へ向かう。
「唯さん!隼人君!!」
案内された楽屋では、なぜか華穂様がひとりでカフェオレを飲んでいた。
「華穂様、皇様は?」
「シャワー浴びに行ったよ。なんかあの衣装すっごく暑いんだって。」
と、つい先ほど私たちが入ってきたドアがガチャリと開く。
「華穂ちゃんおまたせー。お、唯ちゃんと隼人もいらっしゃい。」
スウェット姿で髪を濡らしたままの一弥が戻ってきた。
白一弥も貴重だが、これはこれで女性ファン垂涎の貴重な姿である。
「皇様、本日はご招待いただきありがとうございます。」
「いーえー、俺の方こそ来てくれてありがと。
やっぱ可愛い女の子がひとりでも多い方がやる気でるしねー。
それに唯ちゃんのカッコなにそれ!?ヤバすぎ!!!
メッチャ俺好みなんだけど!!!」
「えへへ!
一弥と並んで絵になるように私がコーディネートしたんですよ〜!
いつもの唯さんもいいけど、こういうのも似合いますよね〜!」
「華穂ちゃんマジ天才!!
俺の好みがよくわかってるねー!
背中で揺れるリボンとか今すぐ引っ張りたくなる!
華穂ちゃんの今日のカッコもいいよね!俺のファンって感じが出ててうれしーわ。」
なんだか女子のように服の話で盛り上がっている。
いや、女子にしては内容がいやらしい。
身の危険を感じる。一弥からこっそり半歩ほど離れた。
「これは唯さんにコーディネートしてもらいました。
とりあえず形から!!」
華穂様、それでは『ファンじゃない』と言っているようで失礼ですよ。
「形は大事だよねー。
そのまま俺のファンになって、ついでに俺のことも好きになってくれたらうれしーな。」
一体こいつはなにを言ってるんだ。
ステージで感動したのが台無しである。
私の隣にいる隼人も困惑気味だ。
というか、華穂様はなぜ一弥とそんなに意気投合しているんだ。
「・・・皇様、隼人様も困っておられます。お戯れはこの辺で。」
「えぇ!?隼人って名前呼びなの!?
ずりー!俺のことも一弥って呼んで。」
つ、疲れる・・・・・・
「・・・・・・・・一弥様」
「・・・・・ヤバイ。なんだかイケナイ気分になってきた。
唯ちゃん、執事辞めて俺のメイドにならない?」
「蹴り飛ばしていいですか?」
おっといけない。つい本音が。
「皇様、隼人様はそういう話が苦手でいらっしゃるので本当にお止めください。」
「女の子苦手とか人生損してるよねー。
まあいいや。
唯ちゃんが様もナシで"一弥"って呼んでくれて、敬語も無しにしてくれたら止めたげる。」
なぜこちらが下手に出ねばならないのか。
「だいたい唯ちゃんが俺に敬語使う必要ないでしょー?
歳同じくらいだし、別に俺は唯ちゃんの上司でもなければ、尊敬されてるわけでもなさそうだし?」
「・・・・・・わかった。わかったから、この話はもうお終い。」
今度は華穂様が目を丸くしている。
「唯さんが敬語以外を喋ってるの初めて見た・・・。
わたしも華穂って呼んでほしいー!」
「あ、じゃ、じゃあ俺も・・・・・」
一体なんなんだこの状況は。頭痛がしてきた。
「華穂は私の主人ですのでなんと言われましてもそのようなことはできません。
隼人様は・・・・・そうですね。
隼人様も敬語でなく一弥様のように話しかけてくださるのであれば私もそれに合わせましょう。」
きっぱりにっこり。
これでこれ以上この話は広がらないはずだ。
華穂様は無理強いしたりなさる性格ではないし、隼人は私を呼び捨てにしたりする度胸はないはず。
これで一件落着だ。
「じゃあ、唯ちゃんがタメ口聞けるのって俺だけだね。なんか特別って感じでドキドキするわー。」
「だ・ま・れ」
今の私は宗純にも劣らない冷気を放っている自信がある。
若干、華穂様と隼人が怖がってるし。
もっとも肝心の一弥にはノーダメージだが。
『あはははははー』と呑気に笑う一弥に殺意が芽生える。
この際だから言いたいことはバンバン言ってしまおう。
どうせ敬語で同じことを言うつもりだったし。
このさいちょっと言い方がきつくなっても全部一弥自業自得だ。
あ、あれ?
一弥が喋るとどんどん話が長く・・・(・・;)




