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【Ichiya Sumeragi !!!!!】
プロレスの入場コールのような掛け声とともに、一弥が中央の入場ゲートから姿を現わす。
ステージからの登場だと思っていた観客たちはすぐそばに現れた一弥に大興奮だ。
オープニングにふさわしいノリの良いポップな曲を歌いながら、観客席の間を通ってステージに向かう。
一弥の人気がすごいというのは知識としてはわかっていたが、実際会場に来ると圧倒される。
あまりの歓声に隣にいる華穂様に話しかけても聞こえるかどうか怪しいくらいだ。
もっとも華穂様も『実はファンだったのでは!?』と思いたくなるような盛り上がりっぷりで声をかけられる状態ではなかったが。
ステージに上がって同じくポップなナンバーを2曲歌ってからMCに入る。
【こんばんは、皇 一弥です。
今年もまたみんなに会えてうれしーよ。
もちろんテレビもラジオも好きだけど、やっぱ俺のために集まってくれるみんなの前で歌う時間は特別だよね。
ライブの度に生きててよかったーってマジで思う。
みんなにとっても特別な時間にするから、しっかりついてこいよ!!!!!】
ちょっとハードな曲を歌った直後に心の底から泣きたくなるようなバラードを歌ったりと山あり谷ありまるでジェットコースターのようなライブだ。
間にちょこちょこ入るMCも面白く、バックバンドのメンバーをいじっている様子はテレビのヤンチャなイメージと違い親しみやすさを感じさせる。
アルバムを買うようなファンではないのでわからない曲も結構あったがそれでも十分楽しめて、あっという間に2時間が過ぎた。
飛んだり跳ねたりサイリュウムを振ったりと結構な運動量で汗だくだ。
「すっごい盛り上がったねー」
「はい。とても楽しかったです。」
会場中が一体となり高揚感に包まれている。
隼人は『一弥さんマジカッケー』と恍惚とした表情だ。
『アンコール』『アンコール』『アンコール』
衣装チェンジをした一弥がステージに戻ってくる。
【みんなまだまだ元気有り余ってるみたいだねぇ。
俺もう結構ボロボロなんだけど(笑)
でも、みんなのアンコールの声聞いてたらさらに熱くなったわ。
声が枯れるまでもう1ラウンド突っ走ろーぜ!!!】
本当に声が枯れるくらい激しく熱く歌っている一弥はかっこいい。
普段のチャラさ嘘のようだ。
よくわからないがなんとなく悔しい気分になる。
瞬く間に3曲歌いきり会場が暗転する。
ライブ終了かと思い席を立とうとする観客もいるが、会場は暗いまま。
まだ何かあるのかと会場がざわざわしている。
『アンコール』
どこかから聞こえるアンコールの声。
どんどんその声は広がっていく。
『アンコール』『アンコール』『アンコール』
会場中がアンコールの声に満たされた頃、ステージ中央にスポットライトがひとつ落とされる。
そこにはいつの間にか白いテーブルセットに座りコーヒーを飲む一弥の姿があった。
CM撮影時に見た白一弥だ。
あのCMは来週から放送の予定だが、メイキングが各局ワイドショーで取り上げられすでに大きな話題になっている。
会場は割れんばかりの今日一番の歓声だ。
コーヒーを置いていかにも優しそうなにっこりとした微笑みを浮かべると会場中がため息で包まれる。
そっとマイクを取って歌い始めるのはもちろんCMソングのバラードだ。
事情があって離れ離れになってしまった恋人たち。
会えない間の辛い時間と再会の喜び。
ありきたりな設定だが一弥が歌うと違って聞こえてくるから不思議だ。
恋人と引き裂かれるパートでは会場中が息を呑み悲痛な空気が満ちる。
会いたい 会いたい 会いたい 会いたい
一弥の歌に合わせて、会いたくてたまらない気持ちになる。
と、一弥がスポットライトに照らされたままステージ中央からこちらに近づいてくる。
そのままステージを降り観客席へ。
間奏の時に止まったのは華穂様の席の前だった。
そっと華穂様を見つめその手を取る。
その目は会えなかった恋人へ向けるように愛しさで溢れている。
自分が見つめられているわけではないのにドキドキする。
見つめられた華穂様に至ってはりんごのように赤くなっている。
そのままステージに導かれ一弥が座っていたイスに腰掛けさせられる。その間もつないだ手は離さない。
歌は佳境。再会した恋人たちが愛を誓うパートだ。
華穂様の前に跪き永遠を共に歩もうと歌う。
映画のワンシーンのようでみんな静かにステージに見入っている。
歌詞が終わりエンディング。握ったままの手にそっと唇を寄せる。
唇を離して一弥が笑顔で華穂様を見つめたところで再び会場中が暗転した。
暗闇により一気に現実に戻る観客たち。
途端に大きな悲鳴が上がる。
それは先ほど見たシーンへの感動なのか、一弥のキスへのショックなのか。
とにかく大騒ぎである。
今日のライブの感想はファンの間で賛否両論荒れるだろうなぁなどと他人事のように思った。




