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「よし、完璧!!」


ご自分でコーディネートした服を着た私を見て華穂様はご満悦だ。

トップスは黒色のシフォン生地でクロスホルターネックになっており、胸元と背中が大胆に開いている。

大きく開けた背中では首の後ろで結んだ長めのリボンがゆらゆらと揺れてとても扇情的・・・に華穂様曰く見えるらしい。

下はもともと持っていた白の7部丈スキニーパンツでそれに華穂様からお借りしたシルバーのスタッズのついた細い黒ベルトをクロスに巻いている。

腕にもベルトのような飾りがたくさんついたアームカバー(これも借り物)をつけてパンクさを演出している。

華穂様は昨日私が勧めた服を着ており、2人並べばしっかり一弥のファンに見えるだろう。


祐一郎様は仕事で行けなくなったので、女子ふたり準備万端で会場であるドームに向かった。





送られてきたチケットと同封の用紙に指示された場所へ行くと『関係者以外立入禁止』の文字が。

関係者席ライブの観覧ができるようだ。

すぐにこちらに気づいたスタッフがドーム内に案内してくれる。

案内された席はステージのすぐそばで、腕を伸ばせばステージに触れそうな距離だ。


「あれ?華穂さんと唯さん??」


私たちの席の隣には意外な人物が座っていた。


「あれ?隼人くん??」


なぜだか私服をきた隼人がいる。

赤いチェックのネルシャツの下に体にピタッとフィットした白いTシャツ。

黒いジーンズにちょっといかついブーツ。


「隼人くんも一弥に招待されたの?」


「はい!俺がファンだって話したらわざわざチケットくれたんです。」


「へー、一弥、男性ファンも多いもんね。」


「歌ももちろんなんですけど、かっこよくて憧れるんですよね。

俺と全然違ってワイルドで男らしくて!」


隼人が一弥ファンだなんて情報初耳だ。

確かに一弥と隼人は全く違うタイプである。

自分にないものに憧れる気持ちはわかるが、できればかわいい隼人のままでいてほしい。


一弥の事を話して興奮しているからか、珍しく華穂さまと話していてもパニックになっていない。

それともメッセージ効果だろうか。

前回連絡先を交換してから、なぜだか3人でグループメッセージをするようになった。

隼人からの返信は内容を考えているのか、既読がついてからちょっと間が開くものの、直接会って話している時より随分スムーズだった。


「もしかしてそのブーツも一弥を意識して?」


隼人がちょっと照れたように笑う。


「あー・・・はい。本当は他のファンの人みたいに全身できればいいんですけど、俺似合わない気がして・・・・。

華穂さんも唯さんも完璧な服っっっ」


言いかけて固まってしまった。

みるみるうちに顔が赤くなっていく。

あぁ、一弥仕様だから隼人には刺激が強すぎましたね。

向かい合っているので背中は見えないにしても私は胸元が開いているし、華穂様はトップスの多数の穴から柔肌がのぞいている。

話に夢中で今まで私たちの服装にも気づいてなかったらしい。

突然固まってしまった隼人を心配して華穂様が顔を近づける。

あ、隼人が仰け反った。


「華穂様、そんなに近づいては隼人様も落ち着いて話ができません。少し離れてください。」


素直に華穂様が離れると、隼人はほっと安堵の息をはく。


「隼人様、昨日は試合お疲れ様でした。

あと少しのところで惜しかったですね。」


昨日の試合は0ー0の引き分けだった。

アディショナルタイムにFWがシュートを打ったが、ギリギリの所でキーパーに弾かれそこで試合終了になった。


「はい。なかなか自分たちの流れに持っていけなくて。やっぱり3位のチームは強いです。」


現在東京ウィンズは20チーム中7位。

時期的にはまだまだ優勝を狙える順位だ。


サッカーの話で落ち着いたのか普通に話せるようになった。

そこからライブが始まるまではサッカーの話で落ち着かせよう。


「一弥さんも昔はサッカーやってたらしいですよ。」


意外である。なんとなくスポーツとは縁遠そうなイメージなのだが。


「じゃあ、サッカー繋がりで隼人くんは一弥と仲良くなったの?」


「ん〜、サッカーつながりというか、フェリシテつながりというか・・・・」


「フェリシテ?」


「はい。スタジオでフェリシテのスポーツドリンクのCM撮影してた時に、別の商品のCM撮影してた一弥さんが声かけてくれて。

俺、緊張してガチガチになってたんスけど、一弥さん俺と一緒にボール蹴ってくれて、緊張ほぐしてくれたんです。

俺に気を使わせないために『ウィンズのファンだから

少しでいいから一緒にボール回ししたい』とまで言ってくれて、俺、それでますますファンになりました!!」


「へぇぇ、気配り上手なんだね。そういえば会った後は毎回メールくれるし、テレビで見るイメージと違っていい人なんだ。」


「試合の後も必ずメールで試合の感想くれるんです。

すっごく忙しいはずなのに。

ほんっとに尊敬します!!」


本人の与り知らぬところでグングン株が上昇したまま、一弥のライブが始まった。

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