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途中で視点が唯から華穂に変更になります。

流は本当に生け花に造詣が深いようだ。

2ヶ月前に開かれたという展示会の話を聞いていた時のことだった。


会場の後方で女性の悲鳴と物が割れる音が響いた。

会場中の視線がそちらに集まる。

どうもドリンクサービスに回っていたウェイトレスが転んでテーブルを倒してしまったようだ。

床から立ち上がろうとするウェイトレスと彼女の側で真っ青な顔でぶるぶる震える女性の姿が見える。


次の瞬間


「なんてことをしてくれるの!!!」


真っ青になっていた女性の怒声が会場内に響き渡った。

よく見ると彼女のドレスにはカクテルが掛かってしまったのか色とりどりのシミができていた。


「いったいこのドレスのがいくらするとおもってるの!?

これはシャルル・アルマーナの限定品で世界に100着しかない貴重なものなのよ!!!!

あなたみたいな庶民じゃ全財産払っても弁償できるようなものじゃないのよ!!!それをこんな姿にするなんて!!!!!」


怒鳴られたウエイトレスも真っ青になる。


「も、もうしわけ・・・ありませ・・・・。」


もともと転んでテーブルを倒してしまったことだけでもショックな出来事なのに、凄い剣幕で怒鳴られてパニックでうまく喋れなくなっているようだ。

その様子に更に女性の怒声が酷くなる。


「なんなのよその態度は!!!!

あなた本当に悪かったって思ってるの?!

給仕すら満足にできないなんて、親の顔が見てみたいわ!!!」


通常、こういう場では主催者もしくはホテル関係者が場を収めるのだが、トラブルでもあったのか誰も出てこない。

まわりでは『いやねー』『せっかくの綺麗なドレスがお可哀想』『早く謝ればいいのに』という女性寄りのひそひそ声が聞こえてくる。


響き渡る女性の怒声にどんどん会場中に険悪な空気が広がってく。

と、突然騒動の中心地によく見知った姿が現れる。


・・・・・・・いつの間にか隣にいた華穂様がいなくなっていた。





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「大丈夫ですか?」


わたしはできるだけ優しく声をかけウェイトレスの女性を抱きしめる。

カタカタと震えながら『申しわけありません』と小声で謝罪を繰り返している彼女には今の状況のショックが強すぎて、こちらの声も聞こえていないみたいだ。


相手がこんなに震えているのに怒鳴り散らしていた女は、今度はわたしが割り込んできたことに対して怒鳴っている。


「ちょっと!私はそこの給仕に文句があるのよ!!!

関係ないなら引っ込んでて!!!」


「文句なら彼女の代わりにわたしが聞きますから、彼女を休ませてあげてくれませんか?」


「はぁ!!??

あなたに文句言って何になるのよ!!!

馬鹿じゃないの!?!?!」


「そうですね・・・・。たしかにちょっと馬鹿かもしれませんが、あなたよりはマシだと思います。」


「・・・・・・なんですって???」


「さっきからあなたは彼女に対して、そのドレスの価値とそれを彼女が弁償することはできないと繰り返していますけど、弁償できないなら彼女に何をして欲しいんですか?

謝罪ですか?

あなたが怒鳴りすぎて聞こえてないだけで、彼女さっきからずっと謝ってますけど。

あと何をしたらいいですか?」


相手はぐっと苦い顔で黙った。


「たしかに大切なドレスを汚されて怒るのは仕方ないと思います。

だから、怒鳴りたい分はわたしが引き受けます。

ここじゃ他のお客さんの迷惑になるんで別の部屋に移動して、思いっきり怒鳴ったら、あとはその大事なドレスをどうするか相談しましょう。

その方がよっぽど建設的です。」


あぁ、あと新しい着替えのドレスもいるよね。

なんて考えながら提案したら、なぜだか大爆笑された。


しかも、違う相手から。






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