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全文、華穂視点です。

場違いに響く笑い声に会場中からわたしたちに集まっていた視線が、一気に笑い声の主へと向かう。

わたしももちろんその視線を向けるひとりで、笑いすぎてお腹が痛いのか体をくの字に折り曲げている流をジト目で睨んでしまう。

けっこう真面目に話してたつもりだったんですけど。あなたはなぜそんなに大爆笑してるんでしょうか。


と、流がわたしのジト目に気づいて笑を収めると、こちらに歩いてくる。

まあ、完全には収まってなくてたまにふるふる体が震えてますけど。


「あぁ、実に愉快だ。こんなに笑ったのは久しぶりだな。」


「別にあなたに笑われるような話をしてたつもりないんですけど。

この後のことを相談した方が建設的なんじゃないかなと思って。」


「あぁ、実に建設的だな。

まさか政略結婚を嫌がるお前から、そんなに建設的で合理的な意見が出てくるとは思わなかった。

お前の頭の中はどうなってるんだ?実におもしろい。」


「政略結婚とは全然話が違うでしょ!?あんたの頭の中こそどうなってるのよ!?!?」


全然話についていけない。一体こいつは何を言ってるんだ。

と、思っていたら、突然流が怒っていた女性の方を向いた。

・・・・・・・・・・・そういえば、この人と話してる途中だったの忘れてた。


「女、そのドレスは俺がなんとかしてやろう。

シャルル・アルマーナには知り合いがいる。新品同様にして返してやるからこれ以上騒ぐな。」


流の突然の出現と提案に驚いたのか、彼女は呆然としたまま『はい』と返事をしている。あとは・・・・


「彼女は僕が診ましょう。」


いつの間にか秀介さんも側に来ていた。

わたしがウェイトレスさんの肩に回していた腕を外すと、軽々と彼女を抱きかかえる。

お姫様抱っこなんて漫画以外で初めて見ちゃった。なんか患者さんを移動させるだけなのに見てるこっちがちょっと照れちゃう。


「それでは僕は会場の外に彼女を連れて行きますので失礼します。」


その場から離れる直前、ちょっと秀介さんはわたしに小声で囁く。


「彼女を庇いにいく華穂さんはとても強くて優しくて輝いてみえました。

それに見惚れて、つい助けにいくのが遅れるくらいに。」


ちょっっちょっと待ってください!顔が顔が熱い!!

一気に真っ赤になっていくのが自分でもわかる。

秀介さんはふふっと微笑みを残して去って行った。


あ、会場として使っているホテルの責任者の人も来たみたいだ。

流が今の状況を説明したり、スタッフの人が倒れたテーブルを片付けたりしている。

これで一件落着みたい。

あ、あれ???


「・・・・・そんなところで座り込んで何をしている?」


は、恥ずかしい。こいつにこんなに姿見られたくないけど、た、立てない。


「き、気がゆるんだら腰が抜けちゃったみたい・・・・・。」


「は?」


「だ、だから、立てないの!!」


こんなことを言い直さないといけないなんて、なんて恥ずかしいっ

あ、ぷって!!流笑ってるし!!!


「騒ぎの仲裁に行く度胸はあるのに腰が抜けるのか。剛胆なのか、そうでないのか・・・・。つくづく面白いやつだな。」


「だって、気づいたら体が動いてたんだもん・・・。」


今振り返ってみると、自分でもよくあそこに入っていけたなとは思う。

あの怒鳴ってた女の人の態度があまりに酷かったから、ちょっと頭にきちゃってた。

昔から本気で怒ると周りからは冷静に見えるみたいで『氷の女王』とか言われてたな。

ていうか、さっきから面白い面白いってわたしは別に珍獣じゃないんですけどっ。


「きゃあっ!?」


なっなななななななっなんで!?

わたしは急に流に持ち上げられる。こ、これはもしかしてついさっき見たお姫様抱っこ・・・・。


「ちょっ、なにするの!?」


「立てないということは歩けもしないだろう?俺が運んでやる。」


「いや、いい!!離してっ!恥ずかしい!!」


ジタバタもがくが流はビクともしない。


「こら、大人しくしていろ。このまま床にへばって動けずずっと周りの注目を浴び続けるよりマシだろう。」


うぅ、それを言われると・・・・・・。

でもでも、お姫様抱っことか恥ずかしくて死んじゃう!!

しかもどっちにしろ目立ってる!!!


「・・・・・・・そんなに暴れるなら、暴れられないようにしてやろうか?」


抱き上げられたことでわたしの顔の真横に流の顔がある。

そこから直接耳に囁きかけられ・・・・・・


自分でも『ぷしゅ〜』という音がしたような気がしながら、そのままわたしの思考は停止した。

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