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・・・・・・・・・また新たな火種を発見してしまった。



華穂様と流が挨拶に回っている間、私は招待客の顔をチェックしていた。

創立記念パーティーの時は会社の取引先関係が主だったので、華穂様が挨拶をしたことのないメンバーも多い。

顔の広い流の側にいれば、華穂様の人脈も上手くいけば広がりそうだ。


そう思って眺めていたら見つけてしまった。

銀縁眼鏡に落ち着いた渋い着物に涼やかな目元。

宗純がいた。

・・・・・挨拶に行かねばまずいのだろうが、正直嫌な予感しかしない。


華穂様が戻ってから挨拶に行くとして、流をどうやっって引き離そうか宗純を見ながら考えていると、不躾過ぎただろうか。宗純がこちらの視線に気づいた。

宗純と目があう。

凍てつく眼差しでこちらを・・・・ぶっちゃけ眉間にしわを寄せて睨まれている。


こちらに気づいていながら挨拶にも来ないなんて失礼極まりない。

と、お怒りなのだろうか。


華穂様はまだ戻ってきそうにない。

待っている猶予はなさそうだ。

私は凍てつく視線にグサグサ刺されながら、宗純に近づいていった。


「こんばんは。宗純先生。ご挨拶が遅くなり申し訳ございません。」


秀麗な眉が更に不審そうに深く寄せられる。


「・・・・・・失礼ですが、どちらさまでしょう?」


はい???


「・・・・・・木曜日にご指導いただいております平岡です。」


宗純は大きく目を見開く。


「・・・・いつもと雰囲気が違うので気づきませんでした。華穂さんは?」


・・・・・・・・・・・・・・・。

たしかに今日はいつもの黒スーツではなくワンピースを着ているしメイクも違う。

それでももとの顔がわからないほどメイクをしているわけではない。

おそらく宗純の私への認識は『いつも華穂様の隣にいる黒スーツの女』ぐらいのものなのだろう。

そして指導中は花と手元しか見ていない。


ん?

だとしたら、先ほどはなぜ睨まれていたのだろうか。

もしかして宗純の顔に見惚れる顔目当ての女だと思われた???


・・・・・・不本意だ。

別に宗純に好かれたい訳ではないが、大変不本意だ。


「華穂様は本日、裕一郎様の代理として他のお客様へ挨拶に行かれております。」


「そうですか。」


「もう少しで戻ってこられるとは思うのですが、宗純先生は挨拶はもうお済みですか?」


「えぇ、一通りは。」


無駄な発言のない宗純の挨拶ならばあっという間に終わるだろう。

会話が続かない。相手は男性だが、定番の話に持って行こう。


「本日も大変素敵なお着物をお召しですね。どちらの品ですか?」


「これは京都の・・・・・・」


宗純の着ている着物のことから色々と話を広げ着物談義をしていたところで華穂様たちが戻ってきた。


「こんばんは。宗純先生。」


「こんばんは。華穂さん。槙嶋さん。」


「あぁ。」


宗純と流は面識があるようだ。

秀介と違いどちらもずっと日本在住なので、パーティーで顔をあわせることも多いのだろう。


「唯さん探してたら宗純先生と一緒にいたからびっくりしちゃいました。」


「偶然、宗純先生がいらっしゃることに気がつきまして。華穂様がしばらく戻られるまで時間がかかりそうでしたので先にご挨拶しておりました。

華穂様のご挨拶は無事終わりましたか?」


「うん、バッチリ!流に案内してもらっていろんな人に挨拶してきたよ。」


挨拶してきた相手の名前を挙げる華穂様。

さすが流。高良田の取引先もしっかり把握して華穂様をエスコートしたようだ。


「槙嶋様、華穂様へのご助力ありがとうございます。」


「気にするな。俺は当然のことをしただけだ。」


・・・・・かっこいい。

なぜ常にこの格好良さでいてくれないのだろうか。

そしたらこちらの苦労もないのに。

つくづく残念だ。


「そういえば、宗純先生と流はお知り合いだったんですね。」


「あぁ、展示会にもよく行っている。」


・・・・流に生け花を愛でる趣味があるとは意外だ。

華穂様もびっくりして目を丸くしている。


「いつもお越しくださりありがとうございます。」


「こちらこそ、いつも楽しませてもらっている。」


これなら秀介の時のような不穏な空気にはなりそうにない。

私はそっと息をはいた。


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