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ナンバーついてますが内容はほぼ閑話。唯さんの1日。
週の始まり月曜日。
パーティ終わったため、これまでとはだいぶ違ったスケジュールになる。
華穂様の勉強やレッスンにはそれぞれ一流の専門家が教師につくことになった。
本来なら最初からそうできればよかったのだが、一流の教師というのは忙しく、パーティまでにしっかり時間が取れそうになかったので私が臨時教師をしていたのだ。
ゲームでは何を勉強したかによってパラメーターが変動していた。
経営学=知力UP
ダンス=体力UP
花 道=芸術UP
マナー=魅力UP
平日はこの4つから1日ひとつを選んで勉強し、週末に出かけ先でイベントという流れだ。
パラメーターは攻略対象の好感度にも関係し、流ならば知力と体力、一弥なら芸術と魅力が高ければ好感度が上がりやすいといった紐付けがされていた。
まあ、現実では4つだけの勉強ではまったく足りないので他にもいろいろ勉強してもらわなければならないが、概ねゲームに出てくるレッスンを頑張れば、攻略対象達との進展もあるだろう。
すでに華穂様は朝食を終え、経営学の授業中だ。
ゲームのように1日中同じ勉強というわけにもいかないので、午後からはダンスとゲームにはない音楽のレッスンだ。
その間私は、休憩でのお茶の準備や次のレッスンの準備が少々あるものの大半が空いた時間になる。
その時間に私がしていること。
勉強である。
あくまで私の持論であるが、執事というのはそれが倫理に反さないものならば、それが物であれ知識であれ技術であれ、常に主の求めに応じなければならないと思っている。
それに応えるためには勉強あるのみ。
この10日間、華穂様につきっきりだったためあまり勉強ができていない。
その分を取り戻さねばと真剣に取り組んだ。
「はぁぁぁっ」
ダーンッッ
大きな音とともに相手を畳に叩きつけた。
午後、私は華穂様に外出の許可をもらい近くの総合格闘技の道場に来ていた。
執事に格闘技術は必須ではないが、ないよりはあったほうがいいと思い執事学校時代に選択科目で履修していた。
執事は誰よりも主人の側にいるので、その分守りやすい。
道場の門下生ではないが、感と体が鈍らせないためにいつでも手合わせができるよう祐一郎様が手配してくださっていた。
私が授業で習ったのは特に流派はないが、護身術メインで投げあり打撃あり寝技ありの総合格闘術で、さらに私は中高と剣道をやっていたので、それに武器が入る。
まあ、なんでもありというわけだ。
別にスポーツをしているわけではないので護身のために手段は選ばない。
さすがに組手で素手の相手に武器を使ったりはしないが。
ぱちぱちぱちぱち
「いや〜、相変わらずいい投げっぷりですね。」
満面の笑みで拍手をしてくれるのは、この道場の師範だ。
「すみません、久しぶりだったのでちょっと力みすぎたようです。」
組手を見ていた門下生達の顔が若干引きつっているし、投げられた相手はそのままの体勢で放心している。
一本背負の前にも回し蹴りやらひざ蹴りやら派手にやり過ぎた気がする。
体が思うように動かず相手もそこそこ強かったので焦ってしまって、大振りの技が多くなってしまった。
「あいつは最近大会で勝って慢心気味だったんでいい薬ですよ。」
「そうだといいんですが・・・・。
今の組手で私もたくさん得るものがありました。
ありがとうございます。 」
あら、起き上がるのに手を貸そうとしたが無視されてしまった。
そのまま顔を赤くしてスタスタと道場から出て行ってしまう。
怒らせてしまったかもしれない。
「礼儀のなってない弟子ですみません。」
「いえ、負けると悔しいのはわかりますので。
私も今日は失礼します。
またよろしくお願いします。」
久しぶりの運動は気持ちがいい。
私は清々しい気持ちで道場を後にする。
屋敷に戻る頃にはちょうど華穂様のレッスン終了時刻のはずだ。
慣れないレッスンでお疲れのはず。
夕食は油ものを控えめで、入浴の時には疲労回復効果のある柑橘系炭酸バスボムを 準備しておこう。
それから・・・・・
こうやって主人のことを考えながら、私の1日は過ぎてゆく。




