女傭兵2
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帝国に大陸の覇権を握られて、早数年。国が武器を購入する事は出来なくなっていた。戦前より使っていた自前の武器が無くなれば、それで最後である。
そして軍への流出を避けるために、個人での売買も規制されてきた。商人が武器を扱う事は禁じられている為、己の足で鍛冶屋の元へと買いに行かなければならず、その鍛冶屋も、材料の仕入れ量や生産本数と売上本数を報告しなければならなくなっており、その生産本数も規制されていた。
傭兵にとって剣は商売道具である。協会としても、この問題には頭を抱えていた。
倒した賊から剣を奪って使用する傭兵もいたが、賊の剣など使い方が荒く、直ぐに壊れてしまう。まとめて数本奪ったとしても、大量の剣を持ち運んでいればあらぬ嫌疑をかけられることとなる。
武器の不足が、アドリア弱体化の要因の1つとなっていることは確かだった。
「――折れた剣を溶かして打ち直す事も出来るけど、強度はあまり期待できないし、不純物を取り除いていたら量も少なくなってしまうでしょう?
……でもね、最近新しい鉱物が発見されて、その問題が解決されそうなのよ。」
「新しい鉱物?」
「そう。発見されたばかりでまだ詳細は不明らしいのだけれど、コール石程ではなくても、かなりの強度を誇るらしいわ。――そして、鉄の様に熱で溶かして細工をする事が出来るらしいの。」
「――つまり、それを混ぜ合わせれば?」
「ええ。折れた剣2本とその鉱物で、新品の剣と変わらないものが出来るんじゃないか――っていうのが全商連の見解なの。」
普通、折れた剣は捨ててしまう。だからこそ、帝国の眼を欺く事が可能かもしれない。
「だからその実験をする為に、腕の良い鍛冶師に話を付けたのよ。――で、その方を迎えに行くついでに、個人の帯剣本数の確認をしておこうかと思って。」
「それでこの剣な訳か……。」
アルは、プリシラに強引に押し付けられた剣を軽く叩く。
「そう言う事。此処までの流れは分かったかしら?」
「……ああ……。」
「ふふ。貴方はとっても口下手そうね。帝国軍とのお話は私がするから、貴方は黙っていてくれればいいわ。――くれぐれも、険呑な雰囲気だけは出さないように、ね。」
くすくすと楽しげに微笑むと、歩調を緩め、重たそうに剣を抱えなおした。
プリシラが、剣の存在を見せつけるかのようにがちゃがちゃと大きな音を立てるのを目にし、アルもなるべく足音を立てるように気を付けて歩いた。
「わざと足音を立てて歩く」とは、珍妙な言い方かもしれないが、アルは普段から足音も気配も消す癖が付いている為、寧ろ足音を立てる方が難しい。
只の一般市民が気配や足音を消して歩くのは不自然極まりない。アルの咄嗟の機転に気が付いたプリシラは満足気に微笑んだ。
「――ほら、殺気立ってる。結婚の報告に行くのに、普通そんな険呑な顔はしないわよ?
……それとも、私を巡って、お父様と戦ってくれるのかしら?」
「――ああ、悪い。つい癖で……。」
軍服を着た男達を目にした瞬間殺気立ったアルを、プリシラはやんわりと微笑んで制した。
「成るべく俯いて、顔が見えない様にしてね?もし顔を覗き込んで来たら、真っ直ぐに見返さずに、怯える事。」
早口に伝えるとフードを目深に被り、よたよたと便りなさ気に歩き出した。
彼女の自信は何処からくるものなのか。只の過大評価か、それとも実力に裏打ちされたものか……。
「お手並み拝見」そんな言葉がアルの脳裏を過った。




