3日目 周りの目
夏休み三日目。
今日も今日とて公園へ向かう小夜の背に声が掛かる。
「あ、小夜! 久しぶり!」
振り返れば左右それぞれに子どもと手を繋ぐ、同い年の見慣れた顔。
「由衣……子どもができたなんて初耳なんだけど?」
「アンタと同い年なのに、こんなデカい子どもいる訳ないでしょ!」
「うわっ」
両手を塞がれた幼馴染みの鋭い蹴りに、小夜は慌てて逃げ出した。
――たぶん、今日は姫に会えない。
冗談を口にしながら、由衣を見た瞬間に小夜はそう思った。
果たして、公園には本当にくたびれ男の姿はなく、そうなるとどこに陣取ったものかと迷う肩にぽんと置かれた手。
姫とは違う細さと小ささ。
間違いのない相手に振り向いたなら、やはり、そこには由衣がいた。
「……お母さん、お子さんから目を離したらダメじゃない」
「アタシの役目は送迎だけ。公園には友だちがいるから大丈夫。それと……アレは従兄弟であって、アタシの子どもではない」
「うん、もちろん知ってる」
悪びれもせず頷けば、由衣は向かい合った小夜の両肩に改めて重く手のひらを乗っけると、唸るような声で低く言う。
「アンタが変わりなく元気なのは嬉しいけど……そういう冗談は外では、特にこの近所では止めて。面白おかしく尾ひれ背びれどころか、ない足まで嬉々としてつけてくる、噂好きの厄介なババ――おばさんがいるって、知っているでしょ?」
「すみませんでした」
真剣な訴えには素直に頭を下げた。
(そーいや、いたなぁ、そんなの。私は特に何もなかったけど、由衣は思いっきり被ったからなー。良くも悪くも)
結果として片想いが実ったとも言えるが、真っ赤な他人が暴走した挙げ句の成立は、今もしっかりと遺恨を残しているらしい。
蚊帳の外にいた自分にとっては大変だと思うくらい――と投げやりになりかけた小夜だが、そう言えばと思い出す。
暴走した噂好きには思うところは確かにないが。
(……ああ、思い出した。姫に初めて会った時、なんで由衣と喧嘩したのか)
両片想い。
そんな幼馴染みたちの恋の鞘当てに、関係なしに思いっきり巻き込まれた当時が蘇った小夜は、何も知らない顔で「よろしい」と腕を降ろした由衣の頬を、両手でムニッと挟むのだった。




