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いつかあの頂上(てっぺん)に  作者: 志賀 沙奈絵


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プロローグ

挿絵(By みてみん)




 師走の中山競馬場に高らかに響き渡るG1のファンファーレ。そして湧き上がる大歓声。


(あの時テレビで聞こえてきたのと同じファンファーレ……。割れんばかりの大歓声……。ここまで……ここまで来られたんだ……私……)


 ピンクに黒の胴輪の勝負服を着た三嶋みしま華音かのんはグイッと顔を上げた。


 憧れて憧れてやまなかった大舞台GⅠ有馬記念。


 その師走の大舞台の馬場に立つ事が出来た華音は、長い睫毛に縁取られた大きな目でゲートの向こうを見詰めた。


 綺麗に手入れされた芝の緑の上をこれから二千五百メートルを相棒と共に駆け抜けるのだ。


「頑張ろうね。フォル」


 そっと淡い栗毛の愛馬フォルチュンヌの首筋を撫でる。四歳になってから増々力強く走ってくれるようになった。たてがみを可愛く三つ編みにして頭頂部には勝負服と同じピンクのボンボンを着けてある。


 ここまで来るのにどれだけの苦労を重ねたか……。


 どれだけの涙を飲み込んだか……。


 そして、どれだけの人の優しさや厳しさに助けられて来たか……。


 目を閉じるとたくさんの人々の笑顔が瞼の裏に浮かんでくる。


 そして、輪乗りをしている一頭に視線を移す。艶のある黒鹿毛の牡馬のエイルノワールと鞍上のライバルで同期の姿。


 追いかけてきた背中。遠かった背中。


(負けたくない……。勝ちたい……。でも、感謝してるよ)


 フォルチュンヌはゆっくりとゲートに収まった。


(関わった全ての人達に感謝してもしきれないよね。最高の走りを見せなきゃ。さぁ、行くよっ! フォルっ! バッチリ決めるよっ!)


 ガシャンっ!


 有馬記念のゲートが今開かれた。






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