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第24話 次の戦場

 その動きは、水面下で始まっていた。


「……やはり、来ましたね」


 エレノアは、机の上の書簡を見ながら呟いた。


 封蝋。


 紋章。


 そして、その内容。


「南方商会、ルーベンシュタインとの接触を確認」


 文官が読み上げる。


「一部契約の再交渉、および共同運用の打診があった模様です」


 沈黙。


 それは、予想していた展開だった。


 だが――


 予想より、早い。


「どの規模ですか」


「中核に近いところです」


 短い答え。


 だが、それで十分だった。


 つまり。


 内部に、楔を打たれた。


「……」


 エレノアは、ゆっくりと息を吐いた。


 視線を落とす。


 帳簿。


 流れ。


 すべてが、繋がっている。


 だが今、その一部が――


 外と繋がった。


「狙いは明確です」


 文官が言う。


「こちらの支配構造を崩すことかと」


「ええ」


 エレノアは頷く。


「そして」


 一拍。


「取り込む」


 静かな結論。


 カティアのやり方。


 助けるのではなく。


 崩れたところを、拾う。


「……対処は」


 文官が問う。


 その声には、わずかな緊張があった。


 エレノアは、少しだけ考えた。


 そして。


「動きます」


 短く言う。


「どのように」


「こちらからも、接触します」


 その一言に、文官の目がわずかに開く。


「……交渉、ですか」


「いいえ」


 エレノアは首を振った。


「選ばせます」


 その言葉は、以前と同じ。


 だが。


 意味は、少し違う。


「利益か、安定か」


 一歩、前に出る。


「どちらを取るか」


 沈黙。


 それは、単純な問い。


 だが。


 重い。


「……負ける可能性も」


 文官が言う。


 率直に。


 エレノアは、頷いた。


「ええ」


 否定しない。


「あります」


 その一言に、空気が引き締まる。


 以前なら、言わなかった。


 言う必要がなかった。


 だが今は――


 違う。


「だからこそ」


 エレノアは言う。


「動きます」


 迷いはない。


 だが。


 確信も、少しだけ揺れている。


 それが。


 今の現実。


 そのとき。


「面白くなってきたわね」


 声がした。


 振り向く。


 カティアが、そこに立っていた。


 いつの間に入ってきたのか。


 誰も気づかなかった。


「……無断侵入ですか」


 エレノアが言う。


 カティアは肩をすくめた。


「挨拶は済ませたでしょ?」


 軽く返す。


 だが、その目は笑っていない。


「動いたわね」


 一歩、近づく。


「思ったより早かった」


「あなたも」


 エレノアが返す。


「同じです」


「ええ」


 カティアは頷く。


「だから楽しい」


 その言葉には、隠しようのない本音があった。


「……」


 エレノアは、まっすぐに見返す。


「どこまでやりますか」


 問う。


 逃げない。


 カティアは、少しだけ考える仕草をした。


 そして。


「全部」


 笑いながら言った。


 その一言に、迷いはない。


「この領地も」


 一拍。


「その先も」


 視線を外さない。


「あなたごと」


 沈黙。


 空気が、凍る。


 だが。


 エレノアは。


「そうですか」


 とだけ言った。


 短く。


 そして。


「では」


 一歩、踏み出す。


「止めます」


 その言葉は、静かだった。


 だが。


 明確だった。


 カティアは、笑った。


 楽しそうに。


「ええ」


 小さく頷く。


「やってみなさい」


 その瞬間。


 戦場が、変わった。


 王都でもない。


 領地でもない。


 もっと大きな。


 国家と国家の。


 利益と支配の。


 戦いへ。


 そしてその中心にいるのは――


 同じ場所に立つ、二人の女。


 その戦いは。


 もう、止まらない。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。


 第2章、ここで一区切りです。


 エレノアは領地を立て直しました。

 ですが同時に、

 より大きな敵と戦うことになりました。


 ここから先は、

 個人や領地ではなく

 「国家レベルの戦い」に入っていきます。


 第3章では、

 カティアとの本格的な戦略戦が始まります。


 この先が一番面白いパートになりますので、

 ぜひブックマークしてお待ちください。

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