予想外の得られたもの
めっちゃ疲れて座り込んだら、リカちゃんが大盾にもたれるようにしながらぶっ倒れた。
こんなリカちゃん見るの初めてだね。
「梨々花、怪我はねえか?」
「怪我はないですけど……もう限界です……」
「うちも限界」
ツバキも結界を解除して座り込んだ。
動きまくったから体はあっついけど、結界がないとこの階層って寒いんだよね。思い出したわ。
「アタシも『耐性喰い』の維持で疲れちゃいるが、お前らほどじゃねえな。よくやってくれた」
「めっちゃギリギリだったけど、なんとかなったね。あぶねー」
私も『ぬるぬるアーマー』を死ぬほど使いまくったせいで、もう全然余裕がない。
最後の攻撃はホントのホントに最後だったわ。あれで倒せなかったら、とっとと逃げないとやばかった。
マドカと沖ちゃんと銀ちゃんも、離れた場所で座り込んでいるっぽい。
これまでも強敵に苦戦したことはあったけど、こんな風になるまで疲れたことはなかなかない。
「しかしよ、あれだけの大物を倒したってのに戦利品は魔石だけか。この階層にしちゃでかい魔石だが、命張る対価としちゃあ割に合わねえな」
転がった魔石をまゆまゆが拾って、しみじみ言っている。まったくもって、そのとおりだわ。
この三鷹ダンジョンは管理人さんがちゃんとしているし、紫雲館の専用ダンジョンだから、いつもの『ソロダンジョン』は使ってない。スキルリンクの枠がひとつ余計に使えて超いい感じだ。
だからもし装備品がドロップすれば、誰が使ってもよかったのにね。どうせだったら、なんか出てほしかったわ。
まったくもう。よくわからんけど、天使っぽいアイテムとか、なんかあるだろ。
「……あ、加護」
地面に座ったままのツバキが、ステータスをチェックしながらつぶやいたのが聞こえた。
「おい、ツバキ。加護が増えてんのか?」
「うん」
マジかよ。そっち方面の報酬があったってこと? それはちょっとどころじゃなく気になるわ!
私も黒いカードを取り出して、さっそくチェックしちゃうよ。どれどれ。
■堕天権天使の加護(弱体化耐性アップ。堕天した権天使に認められた証)
うおー、やった。加護が増えるの久しぶりだ。
しかも弱体化の耐性ができちゃったよ。マジでいいじゃん。さすがに嬉しいっすわ。
「アタシにも加護が増えてんな。今後を見据えた時に、かなり使えそうな効果じゃねえか」
「わたしも増えてました。苦労した甲斐がありましたねえ」
みんな加護をゲットできたみたいだね。マドカたちもかな?
そろそろ戻ってこないかねーと思ったらだよ。疲れて座っていたマドカが、走ってこっちに向かってる。なんかあったっぽい?
マドカの様子に気づいた沖ちゃんと銀ちゃんも、こっちに向かって動き出した。
「まどかおねえ、慌ててる」
「モンスターがまた湧いたってわけじゃなさそうだが、どうしたんだろうな」
加護をゲットしてめっちゃ喜んでるって、感じでもないよね。ホントになんだろう。
今日は疲れたから、めんどくさいことはもういらないわ。
「はあっ、はあっ、はあっ、あ、あっち、あっちに……」
「ほらほら、マドカさんや。お水でも飲んで、まずは落ち着いておくれ」
「あ、ありがと」
ペットボトルを渡してあげたら、ぐぐっと一気に半分も飲んじゃったよ。
そんなことをしている間に沖ちゃんと銀ちゃんも戻ってきた。
「おう、さっきステータス確認したらよ、アタシらには加護が増えてたぜ。そっちもそうじゃねえか?」
「本当か? それは朗報だな」
「見てみます」
「いやー、3人が金の天使をささっとぶっ倒してくれたから、なんとかなったわ。マジであぶなかったよ」
「ギリギリの勝利でしたよねえ」
「黒い天使、強かった」
当分はいいけど、やっぱイレギュラーモンスターは面白いわ。
「みんな、聞いて!」
「うお、マドカ。どうしたん? あわてちゃってさ」
急に大声出すから、びっくりするわ。
「階段よ、階段!」
んおー?
「帰りは転送陣で帰るよね? 疲れたし、階段は嫌だよ」
ちゃちゃっと帰りたいわ。みんなもそうだよね?
「そうじゃなくて! 次の階層に続く階段、第三十一階層!」
「待て。これまで何度もこの階層を探索しているが、下り階段などなかったはずだ。そもそも紫雲館からも第三十階層が最奥だと聞いている」
「急に出てきやがったってことか? ここからは見えねえが……」
そうだね。マドカがいた場所だって、だいぶ遠かったし。
「こっちよ!」
疲れてるはずなのに、マドカのテンション高いね。
まあ未知の階層が現れちゃったなら、そりゃわくわくするか。
うん、なんか私もわくわくしてきたね!
小走りになったマドカをみんなで追いかけていくと、だんだんそれが見えてきた。
「マジで下り階段じゃねえか、すげえ発見だな」
「……紫雲館がこのダンジョンを管理して何年経つのか知らんが只事ではない。どう考えてもさっきの黒い天使、そして葵のスキルが原因だろうな」
「え、私のスキル?」
「アオイの『だいだら・初』ってスキルの影響じゃない? 効果はダンジョンに道を拓く、となっているのよね?」
「そうだね。でも道をひらくとか言われても、全然意味わからんけど」
私のスキルがあれば次の階層が出てきちゃうのかよ。そんなことある?
「こんな未知の現象、アオイの意味不明なスキルが原因以外にあり得ないわ」
「そうかね? けどまあ出てきちゃったもんは仕方ないよね」
「まあな。たしかにとんでもねえ能力だが、気にしても仕方ねえ。で、どうすんだ?」
まゆまゆが階段を見下ろしながら言っているけど、行ってみるかどうかってことだよね。
「そりゃあ、行くしかなくない? だって誰も行ったことない階層だよ? 私たちが一番乗りとか、すごくね?」
「勝手に入ってもええの?」
「え、なんで?」
入りたいだろ。こんなの目の前にしちゃったらさ。
「三鷹ダンジョンはあくまで紫雲館が管理しているダンジョンであり、我々は星ノ宮さんたちの好意で使わせてもらっている立場だ」
「そうね。逆の立場で考えて、あたしたちの練馬ダンジョンの場合だったらどう?」
「たとえ好意で貸していた相手でも、勝手にいろいろされたら不満に思うかもしれませんねえ」
まあ、そうかも。
未知の階層を見つけてくれたまではいいとして、先にあれこれやられちゃったらムカついちゃうかもね。
なに先にやってくれちゃってんだよって、私ったらぶっ飛ばすかもしれんわ。
「うおー、そっか。ちょろっとだけでも入ってみたい気はするけどね。わかったよ。もし入るなら、セーラさんたちのあとのほうがいいよね」
「葵のスキルや我々の苦労があったとはいえ、それとこれとは話が別だ。これから先の友好関係を考えれば、まずは報告したがほういい。これまでの借りを返す意味としても十分な価値がある」
「レベル的な意味で、メタル系ダンジョンより稼ぎやすい場所はねえ。未発見の階層となりゃあ、かなり感謝されるだろうな」
セーラさんたちにはめっちゃお世話になってるしね。
お返しになるならね、よかった気もしてきたわ。そうだよ、すごいいいことじゃね?
私たちのレベル上げの意味でも、もっと深い階層に行けるのはラッキーだし。
きっとこれからも気分よくこのダンジョン貸してくれるよね。
うん、疲れたけど加護も取れちゃったし、がんばってよかったわ。
花園の快進撃は、まだまだここから始まるんだよ!




