拓かれた次への道
ダンジョン特有の大きな階段は、下の階層に続くものだ。
岩をどかしたら、あっさり見つけちまったよ。絶対にこれで間違いないわ。
「私ったらもう出所できるじゃん」
マジかよ。すごくね? やっぱ私ったらすごくね?
あ、でも第二階層に行って、転送陣を設置したら放免なんだっけね。見つけただけじゃダメだった。
それにしても長いこと誰も発見できなかったんだよね、この階段。まだ誰も入ったことない階層だ。
「やべー、未知の領域かよ。これは行ってみるしかないわ」
サクッと行ってみるかな。ここの荒野と同じ感じだったら全然つまらんけど、まったく違うかもしれんしね。
もしかしたらモンスターがいっぱいいるかも。
そうしたら絶対、楽しいわ。そうであってほしいね。
「その前に。久しぶりだし、ステータスチェックするかな」
超強いモンスターとかいて、いきなりレベルアップするかもしれんし。
黒いカードを取り出してっと。私はどのくらいの強さだったかねー。
荒野でいい感じになれるスキルって、そういやどんなだったっけ。
■星魂の記憶
名前:永倉葵スカーレット
レベル:24(レベル上昇に必要な経験値:392,378)
クラス:はぐれ山賊
サブクラス:しゃにむに悪鬼
生命力:171(+1,920)
精神力:171(+4,200)
攻撃力:171(+4,080)
防御力:171(+2,280)
魔法力:171(+2,640)
抵抗力:171(+2,400)
運命力:715
スキル:ウルトラハードモード(試練を与える。ダンジョン難易度の上昇、難易度に応じた報酬獲得率アップ、成長率が難易度相応に変化)
:ソロダンジョン(専用のダンジョンに入ることができる)
:武魂共鳴(装備品が使用者と結びつき、レベルに応じて成長する)
:毒攻撃(攻撃時に毒ダメージを与える)
:星の糸紡ぎ(星魂紋の詳細が可視化される)
:状態異常耐性(状態異常への耐性を得る)
:カチカチアーマー(カチカチしたシールドを召喚する)
:キラキラハンマー(キラキラするハンマーが追加攻撃する)
:生命力吸収(攻撃時のダメージに応じて、対象から少しだけ生命力を吸収する)
:念動力(念じることより物体に干渉する)
:健康体(病気知らず)
:メラメラハンマー(メラメラするハンマーが追加攻撃する)
:ヒエヒエハンマー(叩きつけた場所を冷却する)
:だいだら・初(ダンジョンに道を拓く)
クラススキル:拘束具破壊(拘束具を簡単に破壊できる)
:威嚇(威嚇対象に恐怖感を与える)
:荒野の生存者(過酷な環境への耐性を得る)
:黒縄(焼けた縄を召喚する)
加護:弁財天の加護(魅力・芸術能力・財運アップ。五頭龍をソロ討伐し弁財天に認められた証)
:厄病神の加護(災厄を返し悪因悪果を与える。疱瘡悪神をソロ討伐し厄病神に認められた証)
:瀬織津姫の加護(精神力増強、攻撃力増強、スキル威力増強。戦闘技術を磨き瀬織津姫に認められた証)
:座頭法師の加護(演奏能力・呪いへの耐性アップ。暗闇での視界が利くようになる。座頭法師に認められた証)
ほうほう、九条家のダンジョンで見た時と同じ……じゃなくなってね?
あれだ、マドカの実家のダンジョンで、謎の巨人を倒してだよ、虹色のすごそうな宝石を吸収しちゃって、あれだったやつ!
なんか急に覚えたスキル『だいだら・初』の能力はたしか「???」になっていたはずなのに、それが見えるように変わってる。
「ほーん、ダンジョンに道を……ってなに?」
どういうことだよ。なんなんだよ。
せっかく能力が判明したかと思ったのに、これじゃホントに意味わからん。
「わからんもんはわからんね。とりあえず第二階層に行ってみるかな」
なんにしても将来有望な新人ハンターらしく、これで出所は決まったようなもん。早くも試練を乗り越えちまったわ。
あとはせっかくのダンジョンを楽しんでやろう。ムショのダンジョンなんて、出所しちゃったら入りたくても入れんだろうからね。
さっそく未知に領域に行ってみるかな。
「誰も入ったことがない階層とかさ、マジですごいわ。どうせなら花園のみんなで楽しみたかったよ」
まあ仕方ない。出所したら、お土産話を聞かせてあげようね。
よし、行くか。
たったか走って階段を下る。
長い階段を進んでいくと、だんだん様子が見えてきた。
「うーん? 辛気くせー」
せっかくの未知の領域なのに、ちょっとテンション下がるわ。
私は加護のお陰で暗闇を見通しちゃうから早くもわかってしまった。たぶん第一階層とほぼ同じの荒野だ。
おまけに第一階層以上に超殺風景。あ、いや、ここ結構やばいわ。
「風強すぎ! 寒っ! めっちゃ寒くね? しかも空気うっす!」
過酷とか言われた第一階層より、もっとひどいわ。
雑魚モンスターも見当たらないし、なんだよここ。
「うへー、雑魚モンスターはいないけど、なんかはいるね。絶対、ボスっぽいやつだよね?」
かなり遠くて豆粒みたいにしか見えないけど、なにかはいる。しかもすごい強い気がする。遠いのにそういう気配がバシバシ伝わってくるわ。
でもあれはこっちに近づいてはこないみたいだし、こっちから戦いに行かなければ大丈夫っぽい。
どうするかな。全然楽しい感じのダンジョンじゃないわ。試験をクリアして、転送陣設置キットもらって、ここに置いたら終わりだよね。もう放免なんだよね。
うーん、ここで終わりかー。
「やっぱあれくらいは、ぶっ倒して帰りたいかな」
普通とは違うダンジョンみたいだし、面白いアイテムとかゲットできるかも。
めっちゃ強そうな気はするけど、ちょっとやってみるのはいいよね。将来有望な新人ハンターとしては、逃げるわけにはいかんしね。
えっと、制限時間もまだ大丈夫。あと18時間くらいあるし。
「よっしゃ、やったるか!」
強すぎる風の中、全力で走ってモンスターに近づいていくと、バシバシ感じるプレッシャーみたいなのがどんどん強くなる。
イレギュラーモンスターとは何回も戦ったことあるけど、似たような感じだね。ひとりでやるのは久しぶりだ。
「ほいほいっと!」
力強く走って、勢いをつける。やばいね、近づくほどにあのモンスターがやばいってわかるわ。
黒いモヤモヤみたいなのをまとっていて、姿がはっきりしない。なんとなく、鬼のモンスターっぽいかな。
私の超つよつよスキル『黒縄』をぶっ放すのもいいけど、戦いは久しぶりだし正面からやりあいたい。
体がなまってる感じあるし、そうするかな。あれとバチバチやりあえば、調子を取り戻せそうな気がする。
そういう意味でも、ちょうどいい相手だ。
と思ったんだけど……やっぱ風強いし、空気がうっすい!
ダッシュで走っていたら、そんなたいした距離でもないのに、もう息が切れそうな感じになっちまったよ。
これ結構やばくね? 寒すぎて体も上手く動かせない気がする。なかなか体があったまらないし。
ひとまず立ち止まって息を整えて、手をこすり合わせて暖をとって。
うおー、やっぱ寒いわ。手袋ほしい。
これいけるかね? モンスターと戦う以前の問題だよね。
けどサクッとぶっ倒せれば、それで終わりだし、ちょっとだけやってみるか。ダメそうだったら、さっさと逃げよう。そうしよう。
手が冷たいのをがまんして、頼れるハンマーをぐっと握りしめる。
マジで寒いし、ここはスキル『メラメラハンマー』をぶち込みまくろう。
「うおー、私の養分になりな!」
黒いモヤモヤをまとった鬼っぽいモンスターの姿が、やっとはっきりわかるようになった。
ちょっと背が高くて、ツノとキバがいかにも鬼。でも頭は骸骨だね。ちゃんと体はあって、全体的に青っぽいのに頭は骸骨?
黒のモヤモヤも意味わからんけど、ひとまずあれは青鬼でいいかな。モンスターだけど、カッコいい感じがする。
真っ正面から突っ込んで、ちょっとだけジャンプ。
うわっ、浮いちゃうと風に流されるわ。
それでもハンマーは軌道修正して、脳天直撃コースでいくよ。
いい感じにぶち込んでやるはずだったのに、さすがは強そうなモンスターだ。どでかい剣をものすごいスピードで振り回して、ハンマーを弾かれた。
「ほっほー! 結構、やばいわ」
ハンマーを弾かれたのは、そうされるかもって思っていたからまだいい。でも威力が強すぎる。あんなのを食らったら死ぬわ。
え、普通に強くね? ここって第二階層だよね。
あのボスっぽいやつがイレギュラーだったとしても、ちょっと強すぎね?
「深淵ダンジョンだっけ。まさか、私のウルトラハードなダンジョンより格上ってことはないよね?」
意味不明なくらい強いわ。
でもこれに勝つのが、将来有望な新人ハンターってもんだよね!




