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八重する企みと囚人たち Lv.4(十九話)

「全員、廊下に並べ!」


 夜中、前触れなく看守たちが騒ぎ出す。


 叩き起こされた囚人たちは全員廊下に並ばされた。


 一体なんの騒ぎだと、まだ眠たい瞼を擦るリード。


「今から悪い子を見つける為、ガサを入れるわ♡覚悟しなさい♡」


 看守長のアシュメはゾクゾクと体を震わせながら、囚人たちの顔色を窺う。


 プレゼントの中身が何か、ワクワクと開けるの子供の様にしていた。

 対して、囚人たちはやましい物を持ってようが、持ってまいが、ドギマギとしていた。


 そんな中リードは、あくびをする。


 脱獄を計画しているとは言え、牢屋に大事な道具を仕舞いこむわけがない。


 強いて言えば、鉄格子の外側に置いている。


 そこなら、一歩間違えて落としてしまうが、誰にも見つかる心配はない。


 たかをくくっていた。その時、リードたち牢屋から慌てて出てくる赤髪のノアルア。


「看守長、大変です!」


 彼の手にはアンのテディーベアが握られている。


「あっ! それ、私の!」


 思わず、取り返そうとアンは動きかける。


「ストップ! アンちゃん、動いちゃダメよぉ♡ ふーむ、貴女のなのね」


 一瞬、アンを止めてからニンマリと微笑む看守長。

 テディーベアを受け取ると迷いなく匂いを嗅ぎ始める。


 まるで訓練された番犬の様に。


「スッースッースッーハー♡」


 狂犬の様に、いち女囚の匂いを堪能していた。


「あぁ、不衛生なこの環境で、嫌にならない天然物の甘〜い香り、おっとりしちゃう! スッースッーハーーーー普段から抱いて上げてるのね。アンちゃんってピュアでカッわいい……?」


 不意にアシュメの顔つきがこわばる。

 次の瞬間、絶好の獲物を見つけた様に邪悪な笑みを浮かべて喜び始める。


「おや? おやおやおや〜? ヘンリク彼女を拘束して!」


「了解」


 別の場所でガサ入れしていたヘンリクが短い杖を取り出す。

 スッと揺らいだ瞬間、アンの両手についていた枷は引き合う様に繋がり、大岩の様に重たくなる。


「ッ!」


「アンちゃん? あなた、お薬決めちゃっていたの?」


「え?」


 心当たりがないアンは驚く。


 慌てて首を振った。


「知りません、なんの事ですか?」


「だって〜ほら」


 アシュメはテディーベアの背中からほつれた縫い目を解く。


 中から白い粉が入った袋が出てきたのだ。


「なに……これ?」


「違法薬物よ。まさか、持ち込んでいたなんてね」


「ち、違います。私じゃありません」


 看守長よりガタイのいいアン。しかし、今は膝をつきながら青ざめることしかできなかった。


「じゃあ、誰のものかしら?」


 アシュメの問いに言葉が詰まる。


 同室のものの可能性が出たが、誰も持ち込んでいないと信じていた。

 老婆も幸も薬なんてやってない、匂いがそうだから。

 リードだって気持ち悪いと言って一度も手をつけようとしてこなかった。


 自分もそれに倣ってやっていない。


(あと、注射怖かったし……)


 分からない。そう答えようとする。その時、隣から一歩前に出てくる者がいた。


「俺だ。俺が勝手にしまい込んだんだ」


 短い黒髪、少年と見間違いそうな顔立ちと身長のリードだった。


 アンはすぐに嘘だと気づく。

 そもそも、あり得ないと分かっていたからだ。


「え? 待って。なんで嘘つくの?」


「嘘じゃねぇ」


「違う、リードはそんな事しないでしょ。別の誰かが仕込んだんだよ!」


「うるせぇ、少し黙ってろ!」


「ハメられたのは、私なんだから庇わなくていいよ」


 口論を始めそうになる二人。


「シャラップ!」


 アシュメは間に割って入る様に立った。


「それ以上騒げば二人とももうここには戻ってこれない様にするわよ」


 彼女の目つきが鋭くなる。


「リードちゃん、本当に貴女が仕込んだ物なの?」


「あぁ、ちょうどいい場所だと思ったんだがな」


 ヘラヘラと笑う。


「ねぇ、さっきからなんでそんなこと言うの?」


 リードの様子がおかしいのに気づいていたアンは尋ねる。しかし、リードは鼻で笑った。


「お前は本当に馬鹿だな。いい加減気づけよ……俺に利用されてたってことをよ。最もまさか今日にガサが入るなんて考えても見なかったが」


 首をさする。


「……」


 アシュメはジッと考え込んでから向きを変えて看守たちに伝えた。


「アンを拷問室へ」


「!」


 リードの目の色が変わる。


「ちょ、なんでこいつを連れていくんだよ!」


「あら? ごめんなさい、今日はこの子と夜を過ごすわ。本気で庇うならもっと私を口説かなきゃ♡例え、リードちゃん、あなたが持ち主でも、今、持っていたのはアンちゃんなんだよ。だから、悪いのは、こ、の、子だから。今日は一人独房で過ごしてちょうだい」


 アシュメはこの場所に興味をなくした様に立ち去った。


 看守たちはアンを無理やり立たせる。

 アシュメの後を歩かせて行った。


「ま、待てよ! おい、コラォ、ド変態クソバァバァ!」


 後を追おうとする。しかし、ヘンリクの魔法で止められてしまった。


「褒め言葉として受け取っとくわ♡まったね~」


 後ろでに、手を振る看守長の姿と連れ去られていかれる相棒の姿が、ハッキリと見えてしまった。

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