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八重する企みと囚人たち Lv.4(十四話)

 キャリーはアン、リード達がいた牢屋からぐるりと回り込み、二つ目の門に戻って来た。

 そこから誰か聞ける人に話を聞こうと思ったのだ。

 夕日は沈みかけ、紫色の空が暗闇を手招いていた。


 まだ、門は開いている。

 門を潜り抜けようとした。その時、水色の頭が見える。

 キャリーは慌てて隠れた。

 

 自分の速さなら気づかれないが、なんとなくだ。


 チラリと覗き込むと看守長補佐官が誰かと話しているのか分かる。

 マゼンタピンクの長い髪、怪しく光る黄緑色の瞳。

 スラリとした立ち姿は目を引く様な美しいものだった。


 次の瞬間、とてつもない悪寒がキャリーの背中を這い上がる。


 アシュメ・ダイ看守長だ。


 隠れたのは正解だと思う。

 キャリーは口を押さえて彼らの話を聞く事に。


「シャーフくん、どう言うことか説明してちょうだい」


「何のことでしょうか?」


「ぞんざいに扱わないでよ〜興奮しちゃうじゃない♡ そ、れ、に、惚けたって無駄よ」


「……」


 シャーフは冷や汗をかきながら黙り込む。

 慎重に言葉を選ぼうとしていた。しかし、待つことなどアシュメには出来ない。


 次の瞬間、看守長は自身に歯向かった悪い部下の口を摘み上げる。


「ムッ! ッーーー」


「私、言ったわよね? 小鳥ちゃんを独房に連れてけって。何で連れていなかったの。せっかく、真面目に、誠実にダインくんも妻子持ちのルークさんも食べずに我慢したのに♡ 楽しみが無くなってて、アシュメちゃんすっごーく悲しかったの」


 ハァ、ハァと喘ぎ声が聞こえてくる。


「今夜、空いてるわよね♡♡♡」


 かつてない程、欲に従うアシュメは、今すぐにでもシャーフを喰らうつもりだった。


 この夕焼け空の下、夜風が吹く門の通りで。


 アシュメはゆっくりと自身のベルトに手を伸ばしかける。

 シャーフは摘まれて、呂律が回らない状態の口で一言、呟いた。


「職権濫用です……」


 その言葉を聞いた瞬間、アシュメはパッとシャーフのことを話す。


「私も流石に職を失うのは嫌ね。養ってくれる?」


 チラリとシャーフの方を見た。


「嫌です」


 ハッキリと断るシャーフ。


「ふふ、残念。でも、あなたのそう言うところ、ダーい! 好き♡」


 彼女はそう言い残し、城の中へと入っていく。


 キャリーは壁の影に隠れていたため見つからずにすんだ。


 小鳥ちゃん、自分の事だと察する。

 キャリーは怖くてたまらなかった。


 同時に連れて行かれた場所が独房じゃないと知る。守られていたのだと分かった。


(本当に独房に連れて行かれてたら、あたし……)


 何をされていたのか分からなくて怖かった。

 シャーフに感謝を伝えるため、キャリーは勇気を出して立ち上がっる。


 酷い目にあったと頬をなびるシャーフ。

 彼の影に重なる様に小さな影が浮かび上がる。

 不思議に思った彼は振り返る。そこには綺麗な金髪に、黄色い瞳の少女。

 キャリー・ピジュンが立っていた。


 どうしたのか尋ねる前に彼女は口を開いた。


「あたしを守ってくれて、ありがとう」


 いきなり何のことか分からず困惑する。先程の会話が聞かれてしまったのだと気づいた。

 彼は頭をかきながら目を合わせずに呟いた。


「礼を言われるほどの事は何もしてません。客人を牢屋に入れるなんて非常識、本当なら僕が入れられる側なんですよ」


 まだ少し、先程、アシュメに迫られた恐怖が胸を蠢く。

 息を整え、シャーフはキャリーの方を見た。


「それでお礼を言うために来たわけじゃないですよね? 僕に何か?」


 あっと口を開いてから少女は尋ねる。


「噂でね。存在しない囚人について聞いたの」


「囚人から聞いたのですか?」


 こくりと頷く。


「それで、もし、もしだよ。もし見つかったらどうなるの?」


 キャリーは辿々しく言い、シャーフの方を見る。


 彼はしばらく考えてから、何やら嫌な想像をしてしまった。

 なぜか、顔を青くしながら答える。


「先にですが、もし、見つかったとして。まずはその者の身元を調べます。次に何の罪で収監されたかを調べて何もなければ釈放になるでしょう」


 罪のない人が牢に入る必要はないと彼は言う。しかし、次の瞬間、深いため息を吐いて顔を覆った。


「ただ、看守長も関わるので、もしかするとただでは済まないと思います」


 ゾッと彼の言葉を聞いた瞬間に悪寒を感じる。

 慌てて周囲を見渡した。


 誰もいない。


 キャリーはホッと胸を撫で下ろす。

 ふと、浮かび上がった疑問がある。

 それもついでに聞いてみた。


「ねえ」


 キャリーは不思議そうに彼を見つめる。


「なんで、あの人なんかに従うの?」


 純粋な疑問だろう、シャーフは特に驚かなかった。

 彼は淡々と語り始める。


「あの人がここで一番強いからです。悪癖に手を焼かされる事は多いですが、彼女のあの存在感がここの秩序の要だと思っています」


 自分の言葉に呆れて苦笑いを浮かべる彼だった。

 恐怖政治というべきか。

 アシュメ・ダイという女がいるおかげで、下手に騒げば自身の身が危険に晒される。

 分かっている囚人はおとなしく刑務所生活を送るのだ。

 歪なものだ。


 シャーフは、なぜ、存在しない囚人について聞きに来たのか、尋ねようと思った。しかし、少女はすでにいなかった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。


X(旧Twitter)で知り合った同じ小説家になろう投稿者の方に

助言を頂いて、試しに改行してみたのですが?

上手くできてるでしょうか?

結構、歪になってるかもで不安です。


今回は、シャーフ看守長補佐官の苦労話でしたね。


「キャリー・ピジュンの冒険」を面白い、興味を持ったという方は、

是非、ブックマーク、評価を付けてくださると嬉しいです。

最近、X(Twitter)始めました。

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