赤煉瓦の町で再開した仲間 Lv.2(四話)
赤煉瓦の建物と瓦礫が連なる町、キャリーは、行商人のテトに別れを告げて先に進もうとしていた。その時、かつての仲間に再会する。
今は……仲間でも、友達とも言えない男がゆっくりとこちらに向かって歩いてきていた。
センター分けされた茶髪に、黒い瞳をした青年。
彼の目は、何かを強く恨み続けている様に鋭く、今にも泣くのではないかと思ってしまうほど、くしゃくしゃな顔をしていた。
「オリパス……?」
キャリーは思わず呟く。
脳裏にあの夜の光景が浮かぶ。
夜闇の中、丘の上で一人嗚咽を吐きながらラッパ銃を自分の頭に突きつける姿。
彼は意識がはっきりしているのか分からない虚な目をして歩き続けていた。
ここで声を掛けるべきか、キャリーは悩む。
正直、口も聞きたくないと思っていた。だから、ここは気づかないふりをして通り過ぎようと思った。
視界の端から飛び出てくる一人の少女にいた。
フード付きのマントをしっかりと被り、果物ナイフを握りしめている。
彼女は真っ直ぐにオリパスの元へ向かって行く。
その間、キャリーはオリパスと目が合う。次の瞬間、飛び出した少女はオリパスのお腹に果物ナイフを刺していた。
「オリパス!」
思わず叫んだ。
刺されたオリパスは萎びた紙のように力が抜けて倒れてゆく。
突然の出来事に周囲にいた人々は、倒れるオリパスと刺した少女から距離を置いた。
ざわざわと波打つようにこの状況は何なのか知らない人と話し合っている。
キャリーは瞬時に駆け寄り、オリパスの顔を覗く。
「おい! オリパス、しっかりしろ。オリパス!」
譲っても返事がなかった。
こんな時どうしたらと狼狽えてしまう。
「ザマぁみろ! この裏切り者が!」
少女が突然、叫び出した。
驚いたキャリーは彼女の方を見た。
彼女は体を震わせながら、不敵に笑って言う。
「この男は私たちの英雄メアリー様を殺したの、彼女のおそばに着きながら、バシレイアに寝返ったのよ!」
(違う……)
彼女の迫力に体が震える。だけど、自分でも分からないが言っていることは違うと思った。
「さらにファイアナド騎士団すら滅ぼした。また、神を語る国が帰ってきたら一体、誰が私たちを守ってくれるの?」
ざわざわと野次馬は騒ぐ。
「こいつは災いをもたらしたわ。生きる価値なんてない!」
ナイフを突き立てて少女は叫ぶ。
キャリーはオリパスの方を見る。
彼は静かに気を失っていた。
血は止まらず、ゆっくりと流れる。
段々と冷たくなるのを感じる。
キャリーの頭の中は大きな感情が渦巻いていた。
(確かにこいつはメア姉を殺した……違う、でも、コイツは死ぬ原因を作った。嫌いだ、大っ嫌いだ、顔なんて見たくもなかった。あんな、あんな……)
暗闇の中、嗚咽で濡らした彼の顔を思い出す。
一体どんなことを考えていたのか、キャリーには分からない、知りたくない。でも、ただ一つ、言えることはオリパスも本意じゃなかった。
賢いオリパスがあんな後悔するはずがないとキャリーは思えたのだ。
「確かにコイツは最低な男だ。死ぬほど嫌いだけど。でも、でも、でも……!」
キャリーは言葉に詰まる。
見つからないなんて言ったらいいか、知らない。
せめて、言えるだけ今は言いたい。
「死んでほしくない! もう、大切な人たちが死ぬのは嫌だ!」
涙が溢れてくる。
何が言いたいのか、自分はどうしたいのか、分からない。でも、嫌な事だけはハッキリしていた。
もう、あんな夜は過ごしたくない。
知っている人が死ぬのは嫌だった。
泣き叫ぶキャリーの言葉に少女はだらりと腕を落とす。
彼女も同じ気持ちなのだろうか、キャリーは思った。
「……せない」
ボソリと呟く。
「そんなの……そんなの、なおさら、許せないわ! あなたもそいつの仲間ね。二人まとめて地獄に落ちろ!」
果物ナイフを振り回しながら襲い掛かってくる。
「お嬢さん、落ち着いて」
ナイフを振り回す少女の手を取り、動きを止める。
流れるように現れたのは行商人のテトだった。
小さい体で、長い髭を生やした彼は、やれやれとため息を吐く。
「何の騒ぎかと思ったら、復讐か……まったく、大層なこっだ」
あまり、興味を持てないテトは、適当に呟く。そして、彼女の手首を捻り背中の後ろに腕を回させた。
痛がる少女を気に求めずに辺りに助けを求める。
「誰か! この女を抑えてくれ」
声はざわつく野次馬達に届き、フード付きのマントを羽織った男が二人駆け寄ってきた。
テトは少女を二人に頼み、オリパスの様子を見に行く。
「キャリー、どうだいオリパスの様子は?」
キャリーは首を振って答える。
「ううん、返事がない……それに血も止まらないの。テト、あたし、どうしたらいい?」
いつの間にかキャリーの声は震えていた。
彼女の問いかけにテトは答えることが出来ずにいた。
テト自身、軽い擦り傷や骨折なら自力で治せるのだが、刺し傷などは空焚きしで下手なことが言えないのだ。
さらにこの町にはまともな医者がいない。もっと言うと無料で治療してくれる所なんてどこにもいなかったのだ。
高額で金だけ奪い、まともな治療をしない闇医者ばかり。
非常にまずい状況にテトは言葉を漏らす。
「これは早くしないと本当に死んじまうな……」
「そんなのダメ!」
取り乱すキャリーにテトはフルボケた頭を必死に働かせる。
ふと、ここにくる途中まで一緒だった仲間のことを思い出す。しかし、嫌な予感も同時に込み上げてくる。
苦笑いを浮かべながら、テトは一部の望みをかけて話す。
「俺がここにくる途中まで、レサトさんと一緒だったんだ。今は森の中でひっそりと隠居生活をしている」
「レサ姉が……」
キャリーはオリパスの顔を見る。
(レサ姉なら確かに治してくれる!)
「ただ……」テトは困った顔を浮かべて言う。「助けてくれるかは、分からない……あの人だってメアリーに忠誠を誓ってただろ? だからなぁ……」
彼は言葉を濁す。
言われてみるとそうかもしれない。
「それでも……」顔を上げ、テトの方を見る。「テト、レサ姉は今どこにいるの!」
オリパスをこのまま死なせたくなかった。
キャリーは真っ直ぐな目でテトを見つめる。
テトはこくりと頷いて答えた。
「いいか、難しいが、しっかり聞けよ。ここから少し北に進んだ森に行け。道なりに進んでいけば、森には辿り着くだろう。途中に脇道がいくつもあるんだが一番暗い道を選んで進むんだ。そしたら、青い葉っぱの暗い森の中に小さな家が立っている。そこが彼女の家だ」
分かったか、とテトは確認する。
キャリーは一瞬、目を泳がせてから頷いた。
少し心配になるテトはもう一度教える事にした。
「北に進んで森に着く。道なりに進んで一番くらい脇道を通ったらレサトさんの家だ」
もう一度、聞いたキャリー、今度は迷いなく頷く。
「分かった!」
「よし、じゃあ、行け! 俺も後を追う」
キャリーはオリパスを抱えあげる。
結構重たかったが、走らなくてはとキャリーは思う。
立つのが大変で落としそうになった。
「大丈夫か?」
「平気!」
キャリーは進む先を見て言う。
ふと、行商人のテトの方を見る。
小柄な体格に長い髭を生やした老人。
ここまで助けてくれた彼にお礼を言った。
「じゃあ、テト、ありがとう」
キャリーは雷を纏い、稲妻が走るように一瞬の閃光を放って走り出した。
(オリパス、死ぬな。死なないで!)
振り落とさないように腕に力が入る。
オリパスはぐったりとしたまま何も言わずにいた。
不安に駆られるキャリーだが、一度見てしまうともう間に合わないかも知れない。そう思い、絶対にオリパスの具合を見ずに走り、町を出て行った。
一瞬でいなくなったキャリーに見ていた野次馬達はざわざわと騒ぐが、テトはそうでもなかった。
それよりも、彼女とオリパスが心配で仕方ない。
(俺も後を追おう。あの人がそんな事、するわけじゃないが……そうとも限らないのが心配なんだよな……)
レサトの雑な性格なところを考えると、気が重くなって仕方ない。
向きを変えて、自分の馬車へ戻ろうとする。
ふと、視界の端にシマシマのトラの尻尾が見えた気がした。しかし、あまり注意するつもりはない。
「……」
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
物語を書くのは好きなんですけど、簡潔に説明するが苦手なんですよね。
キャリー・ピジュンの冒険のあらすじを手直ししたいと思っていました。
なので、やることにしたのです。こればっかりは、自分が納得できる所を目指さないとなので、
ちょくちょく、あらすじの部分が変わってるかもしれません。
でも、安心してくださいキャリー・ピジュンの冒険の内容には影響ないので。
今回の話ではオリパスが少女に刺されましたね。
彼が倒れた後に行った「ザマぁみろ!」ここ結構こだわってしまいました。
別に書き方が若干違うだけなんですけど、どうやったらより下げすむ様に、全力で浴びせられるか、
多分、違うんだろうなと思い、めっちゃ考えちゃいましたね。
「ざまーみろ!」「ざまー見ろ!」「ザマぁみろ!」
「ザマ―ミロ!」「ざまーミロ!」「ざまァミロ!」
ほとんど同じなんですよね……僕は何にこだわったんだろ?
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