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赤煉瓦の町で再会した仲間 Lv.2(二話)

 行商人のテトと別れようとしていたキャリー、その最中に現れたかつての仲間オットーとの再会に彼女は言葉を見失ってしまった。


 ぶつかり倒れそうになったキャリーをオットーは自身の体から生えている尻尾を使い支える。

 彼女は引っ張りながら再会の言葉を口にした。


「久しぶりだな、キャリー」


 目を輝かせて笑顔を見せる。

 キャリーも釣られて笑みが溢れた。


「うん、オットーも元気そうで、良かった!」


「私はいつも元気だよ」


 軽く肩を叩きながら言う。


「テトも久しぶり」


 座りっぱなしのテトに声をかける。

 おーっと目も合わせずに答えた。


「お前さんとこんなに早く会うとはな」


「おい、どーいう意味だよ」


「そのまんまの意味さ」


 悪態つくテト、キャリーと再開した時は嬉しそうだったのだが、オットーとはそうじゃないらしい。

 二人は過去の軽いいざこざの話で揉め始めていた。

 賭けの勝ちだの、負けだと言っていてキャリーにはさっぱりの内容だった。


 オットーは口喧嘩しに来たんじゃないと、首を振り、ため息を吐く。ただ、久しぶりに楽しいのか尻尾がよく揺れていた。


「テト、私はあの後、色々考えたんだ……」


 かしこまった様に彼女はしゃがみテトと目線を合わせる。


「それでも、アイツらが許せねぇ……」


 その言葉はとても重く苦いものだとすぐに気づく。

 キャリーは胸が締め付けられる様な気がした。


「……それで、こんな老いぼれになんの様だ?」


 ため息を吐きながらテトは聞く。


「一緒に戦ってほしい」


 オットーは真っ直ぐな目でテトを見つめる。


「……」


「……」


 一体、何と戦うのか、気になり始めたキャリーは見つめ合う二人を交互に見た。

 なるほどな、と呟き、テトは長いため息を吐いた。そして、一言。


「ヤダ」


 ニヤリと笑って答えた。

 予想外の反応だったのだろう、オットーは体を崩して倒れそうになる。


「なんだよ、老いぼれジジイ! 期待させやがって」


「そうだよ、俺は老いぼれだ! お前らは老いぼれを雇うほど困ってないだろ!」


 勝ち誇った様に笑いながらテトは騒ぐ。


「そもそも、俺は歳でろくに戦えない。例え、賛成していても、お前らに加勢しに行くのは無理だ」


 ふっふーん、と笑いながらオットーを見つめた。

 彼女は納得いかないと細めで目の前の老人を睨んだ。


「二人はなんの話をしているの?」


 一人だけ会話の中に入れずにいたキャリーは、気になって聞いてみることにした。


「聞かなくていい」


 テトはそう言うが、オットーは違った。


「そうだな、お前にも関係ある話だ……」


「あたしにも?」


 首を傾げる。


 一体、何が自分と関係あるのだろうか?

 キャリーには開目検討がつかない。

 オットーはキャリーの肩をそっと掴む。


「メアリー死んだ、オリパスに殺されたんだ」


 心臓が掴まれて息ができなくなるのを感じる。


「信じられない話かもしれない。アイツは私たちを裏切って、バシレイアにメアリーの姉貴を売ったんだ……」


 オットーは手に力が入る。

 怒りで瞳孔が揺れていた。

 キャリーは痛いと思い片目を瞑る。


「ッ!」


 しかし、オットーは気づかず話を続ける。


「すまねぇ、私たちがいながら、あの人を死なせちまった。あの野郎は、戦争を終わらせるためだとか言ってたが、それなら、一緒に戦えばよかったんだ!」


 苦しそうに顔を顰める。

 キャリーはオットーを慰めようと彼女の背中に手を伸ばして言った。


「無理しないで、そんな顔してたら、メア姉が心配するよ」


 優しく笑ってみせた。


「キャリー、お前……知っていたのか?」


 驚いた顔を浮かべてオットーは言う。

 こくりとキャリーは頷いた。


「そうか……」


 顔を落とす。


 キャリーはすでにメアリーのことも、オリパスがファイアナド騎士団を裏切った理由も知っていた。

 そして、そのおかげで戦争を終わらせる事ができた事も。しかし、これは便宜上の話しだ。

 他の人たちがどう思っているのか、キャリーはまだ知らなかった。


 オットーは顔を上げてキャリーに話しかける。


「キャリー、バシレイアを滅ぼす戦争をしよう」


「え?」


 ゾッと体が震える。


(戦争は終わったはずでしょ、バシレイアとスタックタウンの戦争はあの日に、メア姉が終わらせたんじゃ)


 長きにわたる戦い、それが終わったのは、ついこの間だ。


 祝祭の日、断頭台の上でメアリー・ホルスの死によって決着が着いたのだと、キャリーはずっと信じてきた。


 本当はそんなの嫌だ、と思っている。

 でも、大好きなメアリーが決めてやった事。だから、終わらせられたと信じていた。しかし、違った。


 オットーは話を続ける。


「戦争は終わった。世間はそう言うが、私たちはそうじゃない」


 彼女ははっきりと言い切る。


「勝手に向こうが終わらせただけだ!」


 肩を揺すりながら続ける。


「なぁ、キャリー一緒に戦おう。メアリーの姉貴の為にも」


 押し迫るオットーについていけないキャリーは伸ばしかけた手を胸の前に引き戻していた。


(怖い……)


 キャリーは信用しているはずの、仲間に恐怖を感じていた。

 青ざめる彼女の表情を見て、迫りすぎたとオットーは気づく。

 手を離して、一歩下がった。だが、諦めたわけではない。


 彼女は姿勢を正して勧誘を続ける。


「お前の力が必要だ」


 その言葉に心が揺れた。

 必要とされている。


「お前が所属してる、ランサン郵便協会にも正式に依頼を出す」


(あそこにも⁉︎)


 キャリーは目を見開く。


 ランサン郵便協会は以前、スタックタウンと手を結んでいたがある時。突然、距離を置いた。

 基本的に魔物の討伐や荷物の配達、村の問題の解決などの依頼を引き取って誰かにやってもらう仲介業者をしている。

 ただ、戦争の依頼は滅多に引き取らない。


 だから、あそこが引き受けてくれるかキャリーは分からなかった。


(でも、お母様は金さえ払えば正式に引き受けるかも……)


 パッとあの人の事を考えると有り得ない話でもない気がしてきた。


「お前の足が必要なんだ!」


 虎の耳と尻尾を持つ、茶色いつむじと金髪をした女性はキャリーをジッと見つめていた。しかし、キャリーにはどうしてか、不思議な感覚を覚える。

 オットーは確かにこっちを見ている。でも、キャリーの事を見ていると言えるのだろうか?


「……」


 答えられずにいるとオットーは何かを悟った様に目を逸らす。


「すまない……熱くなっちまった。ごめんな、無理言って。そもそも、お前には関係のない話だったな」


 そんな事ない、と首を振る。でも、キャリーは自分も参加すべきなのか分からずにいた。


(メア姉は戦争を終わらせる為に死んじゃった……でも、オットーの許せない気持ちもわかる)


 少し前までキャリーも同じ気持ちだった。

 今は違う、と言えば嘘になる。でも、キャリーは自分なりにすでに納得してしまっている。

 自分はどうするべきなのか、キャリーは分からずにいた。


「そんな、暗い顔をするな」


 トン、と肩を叩かれる。

 いつの間にか周りが見えなくなっていた。

 気がつくとオットーがキャリーの胸に拳を当てている。


「大丈夫、必ず敵を打ってやる」


 キャリーはどう受け取ればいいのか分からなかった。


「じゃあな」


 迷っているうちにオットーはテトに別れを告げていた。


「キャリー」


 名前を呼ばれ、肩が跳ねる。


「私はスタックタウンにいるからいつでも来てくれよ」


 力を貸してくれ。それにしか聞こえてこなかった。


 オットーは手を降りながら歩き始める。

 彼女の背中がズンズンと遠い、本当にたどり着けないどこかに行くような気がする。


 キャリーは慌てて呼び止めようする。しかし、なんて呼び止めればいいのか分からずに口をつぐんでしまった。


 オットーが人混みに紛れ見えなくなった頃、ポツリと独り言のようにテトに尋ねてみた。


「あたしはどうすれば良かったんだろう……」


「……」


「一緒に行くべきだったのかな?」


「さあな、俺の場合は歳だからな」


 適当に彼は答える。

 空を見上げるが、答えは見えてこないままだ。

 まだ、歩き始めていないのに、キャリーは路頭に迷ってしまった。


「はぁ……テト、あたしもそろそろ行くね」


 ため息を吐いてからテトの方を見る。

 彼に別れを告げて歩き始めようとした。その時、懐かしい仲間とまた目があう。

 センター分けされた茶髪に、黒い瞳は夜の様に暗い。


 強く恨んでいる様に目つきが悪い男がゆっくりと歩いていた。


「オリパス……?」


 キャリーは思わず呟く。


 その様子にテトも顔を上げる。

 唖然とするキャリーに偶然顔を上げたオリパスは彼女に気づく。

 目の前に町娘が通りかかる。


 彼女の手には果物ナイフが握られていた。

 何に使うのか、気がついた時にはすでに遅かった。


 次の瞬間、壮絶なものをキャリーは目撃する。


「オリパス!」

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

オットーは、前回の「黄金の森に住む娘と再燃する哀惜」で少し出てきましたね。

気の強い虎娘です。

彼女がキャリーに説得しているとき、キャリーはどこか距離を感じたシーン

それっぽいこと言って、本当は相手の事を思って言っていないんです。

本人は別にそうは思ってないかもしれませんが……そんな感じでした。

「キャリー・ピジュンの冒険」に興味を持ってくださったら、

ブックマーク、評価を付けてくださると嬉しいです。

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