嵐を超えてシスターに送る Lv.1(二話)
キャリーはリーフに書いてもらったメモを頼りにバシレイアを飛び出した。
南の門を出て、一つ目の村を通り過ぎてやや西にずれながら長い道を駆け抜けて行く。
雑木林を抜けた先に例の村があった。
木の柵に囲まれた静かな場所だった。
先程まで人の多い街にいたので、新鮮な気がする。
村に入ったキャリーだが誰かとすれ違うことがほとんどなく、中央の大きな木までたどり着く。
特に変わったことはないのだが、キャリーは目の前の木を眺める。
大きな木だと思った。でも、それ以上に何か別の力を感じる気がした。
「……」
ぼんやりと眺めていると村の人が偶然通りかかる。
「おや、旅の方ですか?」
眺めるのをやめ、村人の方を見る。
「うん、この村に美味しいケーキ屋があるって聞いたんだ。どこにあるか知らない?」
村人はすぐにあーと口を開く。
「知ってますよ。そっちの道を真っ直ぐにいけば、ショートケーキの看板があります。そこが美味しいケーキ屋ですよ」
キャリーの後ろを指差していう。
「ありがとう」と手を振って木陰から外に出て行った。
進み出して、すぐにケーキ屋を見つける。
村人が言っていた通りショートケーキの看板が飾られてある。
「ここかな……?」
周りの建物と同じ木造なので、本当にお店なのか心配になってしまった。が、目の前に美味しいケーキ屋があるのだとしたら行くしかない。
(ベリル姉の為にも買わなくちゃ!)
キャリーは意を決して店の中に入ろうとする。とその前に手持ちのお金が心配になったので確認を。
「……大丈夫そうかな?」
ケーキはやはり高いものだから心配になってしまう。
なにしろ、食の国でパティシエをしていたというのだから、すごく高いと思った。
幸い袋には大量のミンツが詰まっているので多少高くても問題ない。
キャリーは鞄に袋を戻す。
鞄がずっしりと重く感じる。
「?」
違和感を覚えたが気のせいだと、改めてケーキ屋の中に入っていく。
扉を開けると甘い香りが広がってくる。
目の前にはケースが置かれていた。
上からモンブラン、チョコケーキなどのショートケーキ、
一番下には大きなホールケーキがおかれていた。
まるで宝箱の中で輝く宝石の様にどれも輝いて見える。
綺麗で美味しそうだった。
いつの間にかキャリーの口からよだれがタレかけていた。
慌てて拭き取る。
「おや、かわいいお客さんだね」
顔を上げているとお婆さんがケースの上からキャリーを見下ろしていた。
「こんにちは」
笑って挨拶をする。
「こんにちは、どれでも好きなのを選んでね。私が取ってあげるから」
カチカチとトングを鳴らした。
キャリーは頷いてから、もう一度ケースの中身を見渡した。
どれならベリル姉が喜んでくれるだろう……と考えて選ぶ。
(ベリル姉はいちごと桃が好きだったよね……桃は置いてなさそう……なら、いちごのショートケーキで、ん?)
ふと、気になるのを見つけた。
パイ生地とカスタードクリーム、それにいちごが交互に重なったケーキ。
どんな味がするのかすごく、すごく、気になった。
キャリーは気になったケーキ二つとルビー色のいちごの表面をしたケーキを選んだ。
「まいど、えっとね、お会計六千ミンツね」
高い! バシレイアのケーキ屋の十倍ぐらいだった。
とてもすごい人が作ったので、高いのは想像できた。しかし、ここまで高いとは思わなかった。
キャリーは震える手でミンツを差し出す。
お金を受け取ったお婆さんは、箱詰めを始めた。
ケーキを一つずつ入れて、白いテープを貼り付けてからキャリーに手渡した。
「気をつけて、持って帰ってね」
「うん!」
元気よく頷く。
ケーキを受け取るとキャリーは鞄にしまう。
ほんの少し肩に重みを感じる。
いつもなら何も感じないはずなのに、変だなとキャリーは思った。
「?」
「おや、そんな所に入れるのかい?」
お婆さんは身を乗り出し覗き込む。
不安定な場所はケーキが崩れてしまうと心配なのだ。
「大丈夫だよ、お婆さん。この鞄は友達が作ってくれたすごい道具なの。沢山ものが入れられてね、ちゃんと保管できるんだ」
キャリーは自慢げに鞄を見せる。
「そう?」
首を傾げながらお婆さんは呟く。
キャリーはお礼を言ってケーキ屋の扉を出ていく。
遠くから眉間に皺を寄せた巌窟そうなお爺さんがこちらに歩いてくるのが見えた。しかし、キャリーは気にすることなく走り出す。
雷を纏い稲光の様に素早く動き、村を後にした。
「婆さんや、今、家からガキが出ていった様に見えたんだが」
キャリーが見かけたお爺さんは真っ直ぐケーキ屋に入って、お婆さんに尋ねた。
「えぇ、来ましたよ。綺麗な髪をしていました」
コクリとお婆さんは頷く。
あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。
どうも、あやかしの濫です。
移動は最速の少女なのであっという間でしたね。
ここでは、南の国もとい、食の国について軽く話させていただきます。
食の国はバシレイアから南に進んだ場所に存在しています。
海沿いの国で、街並みは神の国と並ぶほど美しい。この国の特色として、作った料理がそのまま力になるがあります。そのため、様ざまな料理が開発されては食べられているとか。
最も、食の国に住む人は純粋に自分の好きで、美味しい料理が食べられればそれでいいと考える人が多く、力を求めるのは他国から来た冒険者か、漁師ぐらいだそうです。
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