14冊目 拾われました
ショウたちの目の前にいる女の子。<リーエ>とフィアは呼んだ。
あの時は身長が分からなかったが今回ではっきりした。リーエはショウの胸のあたりの身長で本当に小さかった。メイド服なのは朝と同じ、見間違いではなかった。
フィアは驚いてショウの背中に隠れていた。ジッとこちらを見つめてくるリーエ。ケレス達には目もくれずにただドアの前からただジッと。
『ど、どうしたフィア?知り合いじゃないのか?』
『た、確かにそうですが……ケレス様たちの前ではマズイのです』
こんなフィアは珍しかった。うろたえる声と捕まる手の震えをショウは感じていた。
「ケレス様、初めましてリーエと申します」
リーエは跪いてケレスに挨拶をした。その後、リーエは背伸びをしてこそこそとなにかケレスに話をしている。
「ショウ、ノロ。ここで少し待っててくれ、すぐ終わらせるから」
「わかった。ゆっくりでいいよ」
リーエは手のひらを上に向けてケレス達を部屋へ促していた。ケレスはそのまま部屋へと消え、シントウアツ達も一緒に消えていった。
リーエの立ち振る舞いで草原で出会った時感じたものが確信に変わった。
「大丈夫かフィア?」
フィアの手を取って確認する。手の震えは消えていた。
「も、もう大丈夫です。はぁ……何故か胸が苦しくなってきました」
フィアはため息をつきながらうつむいた。久しぶりに会えたらうれしいはずだとショウは思ったが、今のフィアにそんな様子は見て取れなかった。
「会いたくないなら、戻ってていいぞ」
「そうさせていただきます……あとで詳しくお話しさせていただきますので」
フィアはそのまま向かいの部屋へと一直線に向かって行った。
「も、申し訳ありませんご主人様。何かありましたら絶対ベルでお呼びください」
こちらを振り向いてそう言い部屋の入っていった。あの様子のフィアにショウは気を引き締め直した。
「……シンたちの師匠ねぇ」
リーエの部屋の壁にもたれかかりながらそんなことを考えて時間をつぶした。
しばらくしてからケレス達は部屋から出てきた。リーエは出てはこなかったようだ。
「ノロはどうしたんだ?」
「体調がすぐれないってさ。疲れたんだろ」
最もらしい理由を付けてケレスの質問に答えた。
「ノロと話がしたいって言ってたんだが……どうする?ショウだけでも話すか?」
「ああ、聞きたいこともあるし」
「ふわぁ~悪いけど俺は寝るぞ~また明日な~ショウ」
ケレスはあくびをしながら廊下を歩いて行った。
「ショウくんおやすみ~」
「ショウ、粗相の無いようにな。あんな形でも一応師匠だからな」
シンとトウはそう言い残してケレスに続いて行った。
「ショウ様、お気をつけて」
「気をつける?」
意味深なことを言ってアツもいってしまった。残されたのはショウは首につけてあるベルを確認した。
「……お姉さまが体調がすぐれないなんてありえないのですが?」
「うわぁ!?」
いつの間にかリーエが隣にいた。ショウとフィアの嘘はリーエにはお見通しのようだった。
「ここでなんですから、どうぞ」
ドアを再び開け促すリーエ。部屋の様子はショウの部屋と特に変わったところはなかった。
「がはっ!?」
入った瞬間にショウは首元を掴まれて壁に叩きつけられた。衝撃により苦しい声が自然と飛び出していた。
「お姉さまとはどういう関係ですかっ!!」
リーエは怒りに満ちた表情と声でショウに迫った。その小さな体とは裏腹に秘められた力があることをショウは知っていたが、今回は朝とは比べ物にならないものだった。
「くっ、はなせっ……リーエ」
「質問に答えなさいっ!!」
「しゅ、しゅじん……だよ」
振り絞るように声を出して答えるとリーエから落とされた。尻餅をつかされながら咳き込んで息を整える。
「ご、ごごご、ご主人様っ!?なのですか!?」
慌てふためく声を出しながらリーエは土下座してきた。まるで人が変わったように。
「も、申し訳ありませんでしたショウ様。お、お姉さまにはどうかご内密に。うぅ……お、おゆるしを~」
今度は涙声になりながらリーエは土下座を続け、懇願してきた。ショウはやられたはずなのに、土下座して泣きじゃくるリーエを怒る気にはなれなかった。むしろ困惑した。
「な、泣くなよ。言わないからさ」
「グスン……ほ、ほんとうですか?」
目を擦りながら女の子座りになったリーエはまるで、トラップ魔法に掛かった時の小さくなったフィアを彷彿とさせるものがそこにはあった。