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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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呪いと無駄話


君を呪う言葉になりたい。




君を呪う言葉になりたい。季節になりたい。記憶になりたい。ふとした瞬間に思いだしては苦しむような、そんな傷を作ってやりたいと思う。けれど、大切だからこそ傷ついて欲しくないのもまた事実だ。


言葉は誰かを救うけれど呪いにも変わる。季節は生きている全ての人間に等しくやって来る。記憶は美化されてさらに苦しみを呼ぶ。だからこそ、僕は君の記憶から消えたいと思うのだ。もしもいつかの未来で死が間近に迫っていたのなら、君の人生から消えたい。突き放しては苦しみを得る前に、あやふやにさせていつかの未来で生きていればまた会えるだなんてくだらない嘘を吐きたい。それだけの話。


例えばまだ見えない未来に希望を抱いて、今が過去になるまで走り続けたとして。その先に希望が無かったら、僕らは先を信じられなくなってしまうだろう。縮まったと思ったはずの距離は、誰かから見れば同じ所にいると思っても自分にとっては酷く遠く感じる。行かないでと言う事も言えない。だから呪いになりたいと思ってしまうのだ。


その足が未来に歩き出してしまう前に、呪いで全てを縛ってやりたい。そんな事口にもできないから、思っては声にならず息が漏れ口角を上げる。上辺を繕った言葉の数々はきっといつか僕自身の呪いになるだろう。



そんな、呪いの話を書き続けている。僕が思うに、物語ってある種の呪いだと思うのだ。自分自身は恋愛脳でないくせに恋の話を書くのは、それが一番呪いを体現するにふさわしいからだ。詰まる所、僕は明るく見えて酷く歪んでいる。最近声出して話したりしてるけれどさ、職場でも明るく話しているけれどさ、根はこれだから普段の僕を知っている人は不思議で仕方ないと思うのだ。


それで思い出したんだけど、僕の上司は紅糸を持ち帰って(職場のロッカーの一部は僕の作品本棚になっている)は読まず凄いなと思いながらいつも眺めているらしいんだけど、読まなくていいですと言ったのは記憶に新しい。だって書いている時の僕とちゃんと人間生活してる時の僕は別人だ。


小説を書いて物語を生み出している時の僕は、ある種歴史に名を残すような芸術家たちの片鱗のようで。ご飯も食べず眠りもせず、一睡もしないまま仕事をしたりする。手は動かしているのに、脳内では物語の続きを作り続ける。人の気持ちなんて分からなくなって、一瞬空を眺めてはまた書き綴る。詰まる所気持ち悪い。そう、めっちゃ気持ち悪い。意識がどこかに飛んでしまう。冗談言って笑わせて、適当に生意気言いながらも仕事はする僕はいない。物語の世界に、その僕は必要ない。


美しいものでこの目を満たしたいのだ。芸術は自己満足だって何度も言う。評価されるに越した事はないだろう。けれど、結局は自己満足なのだ。僕は究極的な自己満足に皆を付き合わせている。いつも付き合ってくれてありがとう。


両方の僕を知っていて、なるほど、確かにそうなるわなんて言える人間は何人いるだろうか。文面に僕が出ているなんて言った人間、思いつく限り二人しかいない。きっとこの先皆の前に現れるようになったら尚更少ないだろうなあなんて思いながら、そうであってくれと願う。そんなに知られたくないものね。自分の素を知っている人間なんて少なくていいよ。皆、作られた僕の像を見ていてくれ。


多分、そんな上手には作れないけれど。


偽物だらけの世界で本物になるために足掻くのが芸術家たちなのなら、たった一つの個性を手に入れるために時間を重ねるのが凡人なのなら、果たして僕はどちらになるのだろうか。なんて難しい事をひたすら書いたけど本人は何も考えてないです。ただ数ヶ月以上右耳がぐちゅぐちゅしてるから絶対外耳炎だけど病院行きたくないし、左足首ずっと痛いけど病院行きたくないしか考えてないです。最近の休みは全部病院に潰されるからな。至って健康体なのに、親知らずだったり耳、足首、絶妙に一回で済ませない症状ばかり訴えて来るの止めて欲しいですよね。でもこういう事があると、ああ僕もちゃんと社会人として程々にストレス抱えてるんだなと実感する。周りからはストレスなさそうって言われがちだからね。でもストレスない人間なんてこの世のどこにもいないと思うんだけどね。


そんなこんなで七夕は過ぎ、発売一ヶ月が過ぎました。読んでくれるであろう全ての人に、明けない夜がない事を願って。

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