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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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与えられた希望に気付くまで


トキメキ摂取不足がたまに摂取すると、供給過多で過呼吸になる




特に何かがあるわけでもなくて、現実世界はいつだって不条理のままで、僕は相変わらず人が好きじゃないままこの世界に居続けている。もしも自分が世界を、人を好きになれる場所がどこかにあったなら、簡単にそこに飛ぶんだろうと思い続けているのは、随分昔からだ。それこそ、十歳の頃には思ってたかもしれない。


今でこそ認められるけど、僕はある種、人間失格で。あ、勿論太宰治みたいな、不倫、浮気、借金、ギャンブラー、そんな事はしてないよ。する気もないよ。そういう意味ではなくて。


僕は太宰治って、ある意味人間成功だと思ってるんだ。だってそんなにも欲深く生きて、浅はかで醜くて自分のために頑張れるのが人間だ。僕はそうじゃない。決して彼にはなれないだろう。なりたくもないけど。


人が嫌いだった。今でもそう、嫌いなままだ。信用出来ないから信頼されないままずっと世界で生きている。誰も信じられなくて、信じられるのは自分自身しかいないと知った。積み重ねてきた時間の中で、僕が得た人間関係は酷いものだった。例え信じるに値する人であっても、僕自身が信じられなかった。ずっとそんな事ばかりだったから、手を取れば突き放される事ばかりだったから、それに慣れてしまった。


でも君はそうじゃなかったんだ。今更になって知るけど、あの時僕に差し伸べられた一筋の光は、確かに僕を信じてくれていた。ただ、僕が僕を信じられなくて、人を信じられなくて光を遮断した。あの日からずっと、月明かりに縋っている。


そんな僕だから、恋愛から随分遠ざかった。友情は、数えられるくらいの人としか育んでいない。友人と出掛けるなんてほぼない。むしろ珍しい方だと思う。


恋が誰かを救うと思ったら大間違いだ。愛が僕を救うと思ったら大間違いだ。


僕らが恋をするのは種の生存本能で、つがいを見つけて子孫を残すっていう原始的な本能が存在するからなんだよ。それは素晴らしい事だと思うけれど、皆が皆恋愛をして当たり前だとか、恋人がいなくて可哀想だとか、そんな誰かの決めた水準に合わせる必要性はないと思う。恋をしなくちゃいけないなんて思ってする恋愛は長続きしない。一緒にいなくてはいけないなんて誰が決めた?君じゃないのは確かだろう。


僕は多分、ずっと傷つくのが怖い。


沢山傷ついてきたから、これ以上傷つきたくない。惜しみのない愛情を注いでくれる人がいい。その手を離さないで済む人がいい。いつか離さざるを得ない状況になってしまったら、離れゆく僕の手を取って本当にそれでいいのかと問いかけてくれる人がいい。外見とかそこまで重視しない。清潔感があってそこまで太ってなければいい。身長も高い方がいいけれど僕の身長を気にしないならそれでいい。


傷つく事を恐れていたら、人間なんて進歩しない。だから、僕はある種の人間失格だ。恐れて逃げて、ここまで来て、自分の世界にのめり込んで小説家にまでなってしまった問題児だ。作品にはストイックでありたいくせに、自分に対してはどうでもいいのだ。


いつ死んでもいいけれど、今書いてるものが世に出てからがいいくらいの感覚で。僕が死んで誰かに影響を与えてしまうなら、じゃあ死なないようにしようかなくらいで。理想論はただの理想でしかなくて。いつか叶えるんだって豪語しているけど、本当はずっと叶える自信もない。確証のない未来の約束なんて誰にもしたくない。顔も知らない君にでさえしたくない。


色んな事を見て、色んな風に傷ついて。世界が理不尽で明日が必ず来るわけではない事を知った。


だからある意味人生に絶望している。絶望しているからこそ、何かを書いて、その世界に自分を生かそうとしている。僕はずっとどこかに逃げて消えたいのだ。愛してくれる人に出会って、その人を愛して死にたいのだ。もう二度と、手を離したくないのだ。この文章が誰かを救うなら、どうか誰かを生かして欲しいと願うのだ。


たまにときめく話とか聞いて、ああ恋愛したいなと思うんだけどね。でもさ、現実はフィクションのように上手くいかないから、別にいいかなと思ってしまうんだ。沢山捨ててきた中に、有り触れた恋があった。有り触れた幸せがあって、有り触れた安寧があった。多くの人がそれを捨てずに拾っていて、僕の周りにもそんな人が沢山いて、その幸せに触れる度に切なくなるのは言うまでもないだろう。


自分でこの道を選んだのに、たまにちょっと悲しくなる日があるのだ。でも僕は月明かりを捨てる事なんて出来ないから、きっとずっとこのままだろう。願わくば、それを許してくれる人に出会えるといいのだけれど。


今の僕にはその道を選ぶ気にはなれなくて。でもそのままでいいやとも思ってる。きっと数年後に周りが結婚したりして、あれ?僕相手いないね?って絶対思うのだ。そしてそのまま年老いていくだろう。パターンが読めている。


きっと死にたくなる日が来るだろう。今だって極たまに、全てに絶望して二度と目が覚めなければいいと願いながら眠りにつく日もあるけれど、残念ながら朝は来てしまう。


でも僕が死んだら、僕が希望を与える人たちに絶望を与えてしまうなあって思ったんだ。小説家の端くれになって、色んな考えを口にして、同調する人しない人がいて、希望を貰った人もいて。その僕が自ら死にたいって言って死んでられないだろう。君たちに希望を与えた責任を僕はずっと持ち続けている。


可能なら、僕よりずっと後に死んでほしいんだ。愛する人も、愛してくれた人も皆、僕より後に死んでほしい。僕が一番最初に死にたい。失う悲しみなんて知らないまま先に逝きたい。大変ずるいんだけどね。


色んな事があって死にたいって思った人が、僕の文章を見て生きたいと願ったなら。僕は彼らを生かしたいんだ。どうか何度もその物語を読んで、悲しんで苦しんで僕よりずっと幸せになって、最期の瞬間に与えられた愛と希望に気付いて死んでほしいんだ。綺麗事かもしれないけど、人生は多分、自分自身で幸せを見つける旅だ。


ほら、日付が変わった。桜は散るよ。絶対に。

365日間の物語が、もうすぐ一周年を迎える。僕は絶対に、この一年を忘れないだろう。

僕が皆に希望を与えて、皆から希望を貰った一年だ。この先一生、忘れる事が出来ない光を、今から僕と一緒に見て欲しい。

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