人生の賞味期限
人生の賞味期限について考える
数日前に賞味期限切れの納豆が冷蔵庫から出てきた。多分、あるのに気づかなくて新しいのを買ってしまい気付いた時には数日前に切れていたっていう、よくある、本当によくある一日の一瞬の一ページの話だった。納豆なんて所詮腐ってるし、賞味だし数日前だし大丈夫だろって食べたのを憶えてる。
あ、決して褒められた行為じゃないと思うから皆は気を付けようね。でも納豆は腐ってるから数日ならオッケーっていう謎の意識があるのも事実だよね。これが牛乳とかで、さらに消費期限だったら絶対止めようね。お腹壊すよ。
まあ、食べても何にもなくて。賞味期限ってあくまでこの日までは美味しく食べられるっていう表示出あって、その後でも食べられるけど美味しいのは何日までって決まってる話なんだ。
ふと、人生の賞味期限を考えた。
人生の終わりを、つまり死を消費期限と考えて。僕らにも賞味期限は存在するのではないかと思った。スポーツ選手を例えにしてみようと思う。彼らは若く、才が溢れた二十代くらいが全盛期だ。残念ながら人間には老いというものがあって、それには誰も逆らえない。どれだけ経験を積んでも、身体が付いて行かなくなってしまったらもう難しいだろう。けれど、続けられないわけではない。それは賞味期限だと思った。
多分、僕にも君にも賞味期限が存在するんだ。それがいつ切れるか分からない。ただふと、振り返った時に人生には絶対全盛期というものが存在する。それがいつであれ、全盛期が過ぎ去った後とその前では色々な事が変わっていると思う。
この職種にも、賞味期限は存在するのだろうと思う。
積み重ねていけばいくほど、文章には深みが増すだろう。僕だって18の頃と今では全然違う書き方をしている。根本は変わらないけど、色々な事を経験して、色々な人に出逢った。何よりも編集さんとか、プロの目にかかった事によって確実に良くなった。ネット小説が小説になった。
これって書いている人たちには気づきにくいと思うけど、全然変わるんだ。ネット小説と小説って同じように見えて、全然違う。手法も書き方も見やすさも、全く違う。ネット小説は改行をして、見やすさ重視で見出し的な感じで書いていくんだけど、ごめんちょっと書いてる本人にも上手に説明できない。
まあ、何て言うのでしょう。型がないんだよ、多分。ある程度の傾向はあって、それに応じて対策を練る事は出来るけれど、こうであれっていうのはない。多少過去と未来が前後しても問題ないし、後出しじゃんけんのように設定を付け加えるのも可能だ。語られなかった話を、改行と改行の間を後から語ってもいい。
でも小説にそれは出来ない。
改行は見やすさのためにする物ではなく、文章の区切りを決めるために使うものだし、見出しは章分けでしかしない、過去と未来を前後するならしっかりとした手順を踏まなくちゃいけないし、後出しじゃんけんはあまり良くない。
そんな感じで学んだから、今書き方が変わってるんだと思う。視点が変わるのだって、作品によってはオッケーだけど好まれない時だってある。まあ、それは置いといて。
人生の賞味期限はいつだと思う。全盛期は既に過ぎ去ったか。
僕にとっての賞味期限は、僕らしい書き方が出来なくなった時だと思う。皆が好きだと言ってくれる文章の個性、名前のないそれを僕はいつものやつって言ってるんだけど、それが書けなくなった時だと思う。今は問題なく書き続けてるし、書けなくなる日なんて想像出来ない。だって息を吸うのと同じ事だから。
でもね、いつかは絶対に訪れるんだよ。人は変わる生き物だ。いい意味でも悪い意味でも、変わってしまう生き物なんだ。故意的にではなくとも、生き続ける限り変化は避けられない。ならば変わってしまった時、大きな喪失感を感じた時、それが僕にとっての賞味期限だと思った。
賞味期限が訪れても人は生きていける。書き続けられる。だって消費期限じゃないから。別に死ぬわけじゃない。でも心は間違いなく在り方を変えるだろう。
賞味期限が訪れた時、僕はどうするのかと思った。色々考えたけど、きっとその時にならないと分からない。でも多分、どこかに消えるだろう。何も言わず、何もせず、ふらっとどこかに消えるだろう。優衣羽である事を辞めるだろう。そしてただの人間として有り触れた終わりを選ぶだろう。縋りつく事も、執着だってしない。受け入れて消えるだろう。そんな日が来ない事を願うばかりだけれど、死ぬまでに絶対一回はあると思う。
それよりも先に死が来て欲しいと言えばそうなんだけど、語るべきであった物語を、描くべきだった情景を志半ばで死んで中途半端な作品を遺すって凄い嫌だから、やっぱり先に賞味期限が来るべきなんだろうなって思う。
だから賞味期限が来てしまう前に、僕らは自分のやりたい事を今一度考えてみた方がいいかもしれない。永遠なんて存在しないから、終わってしまう前に胸に問いかけた方がいい。そして、期限切れになる前に好きな事に夢中になるべきだ。
あくまで自論だから、君は真似しなくてもいいけれど。




