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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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秋の夜長のひと時に


いつか、君の話がしたい



先日また歳をとって、書き始めてからもうすぐ四年が経とうとしています。僕は随分と変わったと思います。四年前までは想像もつかなかった世界にいて、想像もつかないほど色んな人から愛を貰って、この四年間は僕にとって人生を変える四年間だと振り返っても言うでしょう。辛い事も嬉しい事も悲しい事も喜びも、全部の感情を味わった四年間でした。正確にはまだぎり四年経ってないけどね。


信じられない事ばかりだけど、あの日の僕が書く事を表に出すと言う選択をしたのは、ある意味一種の必然だったのかなと思ってます。書き始めて、そして本が出て優衣羽の僕がこの世界で息をするようになってから、僕は随分と救われました。


一番は、発言する事。僕にしか見えない世界、感じない事を表に出しても批判されなくなった事です。それまでの僕は自分の見ている世界が人と違う事を知り、それに関して言えば酷い批判を食らってきました。特別でも何でもない、ただ僕が見えるからそう言っているだけなのに世間はそれを良しとしませんでした。でも、今は小説家だしあり得るだろとか、いい感性だと言われるようになって自由に話せるようになりました。これはめっちゃ救われた。


ただ、散々言ってきた奴らが手の平返して近づいてきた件に関しては、本当に人間の汚さを感じました。皆も気を付けてね。今の僕は前にも書いたけど、書く事に光を見ているからこの光が消えるまでは書き続けるし、誰に何と言われようと自分が納得するまではやめないと思います。そういう、図々しい奴です。


この人生全てが物語に現れるのなら、僕は可能な限り生きて色々な世界を見て新たな作品を形作っていきたいです。貪欲に、強かに、傲慢に。されど謙虚さは忘れずに。


そしていつか、君の話が書きたい。


結構前から思っていたのだけれど、君の話が書きたいのです。僕を小説家にさせるきっかけを作ってしまった君の話を、君が知らない所で描きたい。これから生み出す多くの作品の中で、君の欠片を散りばめたい。忘れないように、綺麗なままの君を僕だけにしか気づかない方法で散りばめてやりたい。そして昇華させたい。


僕が主役の話なんて面白くもないし、君が主役の話なんて僕が損するだけだから書く気はないけれど、君の片鱗をどこかで感じたいのだ僕は。君を追ってどこかに行く事も、君のいた場所に足を運ぶ事もしない。僕の中ではもう、終わってしまったお話だ。


いつまでも過去に執着する事はしない。過去の栄光は輝かしいけれど、いつか埃を被ってしまう。僕はこの先新しい光を生み出していきたいよ。自分のために生み出したそれが、どこかの誰かの手に渡ってその人の光になるのならそれは素晴らしい事なんだ。


芸術の神様も、指先には宿らない。宿るのは紙の中だ。神だけに。ごめん、めっちゃつまらなかった。未来は見えないし、運命が決まっていたとしても僕らの目にはそれを見る事が出来ないから、訪れるその瞬間まで歩き続けていたい。


夢は叶わない事の方が多い。僕はたまたまこうなっただけで、選ばれた人間だとも思えない。誰かが僕の才を認めてくれて、選ばれた人だと言ってくれたとしても、僕はずっと否定すると思う。僕に出来るなら他の誰かにも出来るはずだ。


才能は誰の手にも宿っているわけではない。恵まれた容姿は優秀な遺伝子の末に生まれるのと同じように、いくら両親や親族が才ある人間であっても、自分の手にはない事だって当たり前にある。人生そんな事ばっかだ。


限界は必ず存在して努力は決して身を結ぶわけでもない。努力すれば夢は叶う!って言ってるやつのほとんどを、僕は殴り倒したい気分だ。それは君が最初から持っていたものを努力して磨いたからそうなったんだって。最初から持ってない人間も当たり前に存在するのに、君の物差しで世界を見るなって滅茶苦茶責めてやりたい。


誰かから見れば僕も同じような存在かもしれない。でも君だってその職を手に入れたじゃないかって。それ以上に努力している人もいるのにずるいって。言われた事がある台詞だな。


僕も充分に理解している。自慢になるからしたくないけど、僕にとっての武器は共感覚と感性、そして多くの人に褒められる読ませる文章が書ける事だ。僕はこの三つを意識した事がない。感性は元々あったとしても生きていく内に磨かれる物だろう。読ませる文章は考えた事もない、好きに書いてるから。そして共感覚は、僕にとって負の遺産だった。軽蔑される、疎外される感覚だった。だから隠し続けた。感じた事があっても口にはしなかった。口に出来るようになったのは最近だ。


これが才能と呼ぶのなら、僕には間違いなくそれがあるだろう。自分ではそう思っていなかったとしても、僕が全く持って何も持っていない人間かと言われればそうは思えない。それが良いものか悪いものかは別として持っている事は事実だ。


けれど、それをひけらかす事も、自慢する事もしない。だからどうしたって話だからね。


でも残念な事に、全ての人に等しく才があるとは限らないんだよ。もしそうであれば芸術家なんて存在はいないんだ。皆が個性的で、皆が才能を持っていたら世の中はもっと変わっていただろう。


これが努力だとは思わないけれど、努力してないじゃないかと言われれば僕は多分キレるだろう。何も知らんくせにって言って見てから言えって言うだろう。現に三秒前を二、三年続けている事も継続する努力の一部に入るかもしれないだろう。


どうしたって叶わない事ばかりだ。僕はここに来るまで沢山それを見て実感してきた。得意だと思っていたスポーツも、世界を相手には出来ない。どれだけ勉強しても、僕の頭には入って来ない。どれだけ他人に優しくした所で僕はいつも最後一人になる。努力しても、限界は必ず見える。そもそも人生これに費やしてもいいって思える何かに出会える事自体がほとんどないんだ。


でも忘れないで欲しい。僕は全ての人には大なり小なり何かしらの才があると思っている。生きていれば、僕が持っていない才を持っている人ばかりだ。僕には出来ない事ばかりで、僕はいつもそれを見て尊敬する。僕に感想を送ってくれる人たちは確実に僕の心を救う天才だ。どこに才があるかなんて分からないけど、僕は持たざる者を見た事がない。少なくとも、僕は僕の事を好きでいてくれる人に何かしらの才を見出している。


だから、叶わない事も沢山だし、努力が報われない事もあるけれど、歩み続けた道に意味がないなんて思わないで欲しい。君が価値を見出せないのなら僕が見出すから、君は君を肯定し続けてくれ。

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