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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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遠くの空に浮かんだ空想


今日も明日も明後日も


ずっと、遠くの街に行きたいと願い続けている。いつから願っていたのかは分からない。しかし、物心ついた時から、遠くに行きたがっていたのは明白だ。集める本、興味が惹かれる写真、一枚の紙きれは全て遠い異国の地のものだった。どうしてかは分からない。それは子供の頃に見たアニメなどがそうさせたのかもしれない。ディズニーのプリンセスが八割方城住まいだったのかもしれないが、そもそも僕はプリンセスがさほど好きじゃなかった気がするので多分違う。多分ね。


とにかくどこか遠くに行きたかった。ここではないどこかに行きたかった。見知らぬ土地で生きたかった。そんな僕も大人になって、遠くの地に行くきっかけもなくなった。本当はずっと、空を飛びたかったのと同じように誰も知らない場所まで行きたかったのに。純真は消え去ってしまった。


そんなこんなでここまで至りました。今日も頑張って生きてます。


人生の八割は理不尽と妥協で出来ていて、本当に叶う希望は一握りだ。悲しみは絶え間なく続くがいつか晴れ間が訪れる。永遠はどこにもなくて存在するのは一瞬だけだ。我々は二十四時間を重く捉え過ぎているが意外にも時間は一瞬で過ぎ去っていくのだ。二十四時間三百六十五日、大人になるたびに時間は早く過ぎていく。時間は同じはずなのに、あの頃の自分と今の自分が感じる時間は全く持って違うのだ。


たまに戻りたい時がある。何も考えずに駆けていたあの頃に。あの日々が恋しかった。嫉妬も羨望も人の醜さすら見なくて済んだあの頃に。何も知らなければよかった。ただ、空想を描いていればそれだけでよかった。誰かと一緒にいなくてもいいはずだった。誰かに固執しなくてもいいはずだった。


今の僕らはどうだろう。醜い感情ばかりだ。諦めたこともある。投げ出したこともある。叶わなかったこともある。世界はいつだって不条理で満ち溢れている。


どうして自分だけと思ったこともあるだろう。きっと皆あるはずだ。僕だってある。世界がもっと自分に優しくなればいいとか思ったのは一人だけじゃないだろう。皆が皆誰かに優しい世界であればいいと言うのは綺麗事だが、そしたら誰も自分のことを大切に出来ないだろう。


空想を描いて、空想を書いて、空想に浸った。あれは僕の話であるかもしれない。君の話であるかもしれない。どこかで夢を失った誰かの叫びかもしれない。祝福されない愛の話かもしれない。それでいい。僕の書く話はどこにでもいそうでどこにでもいない誰かがモデルだ。


だから皆が皆主人公になれるんだってことを言ってやりたい。僕がそうであるように。現実世界の僕は本当にそこら辺にいるただの一般人だから。


空想を描け。悲しい時は逃げてもいい事。君は遠くに行ける事。僕にだって会える事。誰かの物語の主人公になれる事。忘れないでくれ。

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