君の一番になりたかった
さよならはいつでも突然だ
さよならはもう一生したくないなと思いながらも、すぐそこに迫っている別れに見ない振りをした。人生はどうしようもないことばかりで、僕の手には何の力もないことを知る。一人の人間が変えられることがあるかと言われればほとんどない。だって僕らはただの人間だ。何も力を持たない、一人では立つことも難しい人だ。群れるしか能がない、ただの人間なんだ。
力のある人になりたかった。それはただ、純粋なる力ではなく、権力でもなく。ただ、伸ばされた手を掴むことが出来る人間になりたかった。別れなんて知る必要もない人間になりたかった。人生イージーモードになりたかった。昔から好きだったあの世界の住人になりたかった。今でも思っている。今僕が死んだら最後の望みを叶えて行きたかった世界に連れて行ってはくれないだろうかと。多分僕は今に未練がほとんどなくて、絶対叶えてくれるという確証があったら簡単に死んじゃうくらいには。
僕は僕自身が死ぬことに恐怖は抱かないんだけど、僕の周りの数少ない人が死ぬ方がよっぽど怖いから自分の命を割と軽視し過ぎだと思う。死んだらそこまで、しゃあないなと思ってしまう。醜く足掻くような展開は期待出来ない。だからこそ、僕の作品は足掻いて足掻いて足掻きまくるのだ。自分が出来ないから、それが世界で一番醜くて美しいことを知っているから。
命の重みなんて分からない。けれど、最も大切にすべき存在なのは分かる。自ら身を投げるようなことはしない。今に負けたと思うから。でも今から逃げるくらいには空想に浸って夢の中の世界に生きている。極論、僕はいつでも主人公にはなれない。僕の人生でさえも僕が主役だとは思えない。誰かの人生を脚色するだけの存在だとも思っている。
僕は色々なことに諦めを抱き過ぎた。勿論貪欲に食らいつくこともあるが、根は変わらずこれなのだ。ほどほどに流されて居場所がないことを知って一人どこかに飛んでいく。だから成層圏で消えてやりたい。一瞬で燃え尽きたい。夜明けの空に消えていきたい。
結局僕は自分のために書いているのだ。自分が出来なかったから、登場人物には僕が出来なかったことをやらせるのだ。燃え上がる感情も苛まれる喪失感も最後には報われる結末も、全部、全部僕が出来なかったことだ。欲しかったものだ。誰かに選ばれるのも、幸せを手に入れるのも、別れを乗り越えるのも、僕には出来なかった。多分、これから先の人生でそこまでの感情がやってくるとは限らない。
とりあえず言えるのは僕の人生はただの舞台装置みたいなものなのだなと思っている。
僕の小説で悲しんで涙を流す人がいて、僕の行動で救われる誰かがいて、僕の選択で結ばれる誰かがいた。でも、正直僕に何一つメリットがないんだ。本を書いたから幸せになれたか?答えは否だ。僕は自分の無力さを実感した。何も出来ない自分を知った。僕の行動は誰かを救ったけれど、僕自身は救わなかった。僕の選択で結ばれた誰かは沢山いたけれど、僕は後ろ指を差された。
何か自分で言うのもなんだけど、次ぐ次ぐ生き辛い人間だと思う。 僕が何もしなくても問題は勝手に向こうからやってきて巻き込まれて僕だけが傷ついて周りが幸せになることなんてよくある話だし、これは最早そういう星の元に生まれてしまったのかと思うくらいだ。何だかなあ。
でも嘆いても仕方ないので今日も文句言いながら好きな事書いてます。たまに好きなことがしんどくなる時が来ても、それでも書き続けてます。もうこれしかないのではっていう気持ちで書いてます。嘘、そんな深刻じゃないわ。
僕はどうなりたいのかと聞かれたら、誰かの一番になりたかったと言うだろう。主人公みたいになりたかったって。多くの人に愛されて信頼されて才があって多少の欠点も許されるような人。僕の兄はどちらかと言うとそういうタイプなんだけど、僕ものの見事に正反対だから余計に感じるんだな。根強く残ってしまったんだな劣等感。受け入れて前に進むしかないのも分かってるから、そろそろ日本から外に行くシーズンだ。
僕と同じ気持ちを抱いている人がいたのなら、共に身を寄せ合おうとは言わない。寂しさも虚しさもその人だけのものだ。だからこれだけは言わせてくれ。君の脳内で君が主役の物語を空想しろ。僕はそれで今まで生きてこれたみたいなものだから、自分を肯定するのは自分であれ。




