理解されない悲しみと孤独
僕の孤独と理解されない悲しみ
世の中には色々な人がいる。色々な人を見てきて、色々な人とぶつかって、色々な人と分かりあってきた。けれど、一つだけどうしても孤独だなと感じてしまうことがある。
それは去年書いただろう、共感覚のこと。僕にとっては当たり前だった世界が、ほとんどの人にとって当たり前じゃないことに驚きを受けた。それと同時に、寂しくなった。どこかの調べでは共感覚者は全人口の4%も満たなくて、さらに共感覚でも全く同じ見え方をする人はいないらしい。つまり、僕の世界はどうやったって他人に伝わらないわけだ。
僕は音と匂い、たまに味覚、それと文字に色と情景が見える。文字と人を見る時は、この人はこんな色だなと思う。味覚は自分がたまにイメージが出てくる。この前食べたチョコレートを、白い空間に銀っていうか灰色のウェーブがカーテンのように幾重も流れていて動いているって言ったら、は?って言われた。うん、でも確かに分からない人から見れば、は?ですね。
音と匂いに関しては情景描写まで入る。行ったことのない見たことのない場所が思い浮かんだこともある。例えば、僕の好きなヨルシカさんの曲の一つ、踊ろうぜだと白磁に水色の流動体のような細い線がいくつも見えて動いてる。っていうか舞ってる。それで歌詞の「思い出の中の君が、一つも違わず描くから」で、画用紙の中鉛筆と水彩で色づけられた君がスケッチとして一瞬にして描きあげられてしまう。正直ちょっとやめてほしい。
僕の見ていた世界が、他の人からは見えない世界と知った時。そこまで考えなかった。まあ、それも個性だろうと思った。何もない僕に与えられた少しだけ違う所くらいの気持ちで、ポジティブにとらえていた。でも何でかな。最近それが仇となり過ぎている。思ったことをすぐ口にしてしまう性格も相まって、ちゃんと決めなくちゃいけない時、咄嗟に振られた話題に対してザ共感覚の回答をしてしまって引かれるし、理解されなくなった。
理解されないのは分かっている。僕も別に理解してもらおうと思ってはいない。ただ、僕の見ている世界が少しでも誰かに届けばいいなと思って書いている。作風が好きだって、雰囲気が好きだって言ってくれた人たちがいた。その元はこの感覚なのかもしれない。だから、感謝はしてる。
でも僕と一瞬でも同じ音を聞いて、匂いを嗅いで、文字を読んで、同じ感覚を持ってくれる人が一人も存在しないと知った時、寂しくなった。人は世界に溢れているのに、僕は孤独に感じた。共有することがいかに大事か分かった瞬間だった。
僕の話を理解はしてくれなくても聞いてくれる人はいるだろう。でも、それじゃ僕が特別なんだって周りに自慢している感じがして嫌だった。僕はただ、昨日一緒に食べたご飯がおいしかったくらいの気持ちで話したかっただけなんだ。他者から見れば、自分の分からない話を言われるほど楽しくないものはない。人は皆、自分が一番で自分が人生の主役だから、自分以上に変わったやつと中々打ち解けない。そういう意味では、僕の周りはいい人が多いと思う。まあ、ただ。共感覚に関しては理解されないし、不意に出てしまう以外は口に出さないようにしている。これは残念なことに疎外される大きな要因になってしまうから。
悲しいなと思う。仕方のないことだとも理解している。ただ、少しだけ。僕の小さな思いが誰かと分かち合う事を望んでいる。振り返れば小さな子供の姿の僕が、一人ぼっちで立っている。僕を見てこの先これが理解されないのかと目元を潤ませている。僕は振り返ってその子の前に立つことしか出来ない。
君が思っている以上に人は最低で、温かくて、醜くて陰湿で愚かで、でも美しいとしか言えない。君はまだその能力が特異なことに気づいてないかもしれない。でも、これから知ることになる。その能力はどちらかというと、忌み嫌われるものだって。目線を合わせてその手を握って言わなくてはいけない。それでも消えないものだって。二人で泣きながら孤独を知らなくてはいけない。
いつか理解してくれる人が現れるかもしれない。でも、まだ僕の目の前には現れない。ついでに君の性格も相まって、人から好かれない人生であることには間違いないと覚悟した方がいい。君の大切にしたい人たちはどれだけ大切にしても君の目の前から消えていくし、おまけに君のことを気味悪がるだろう。それで君は更にいい性格になって、大切な人を傷つけるだろう。理解されない悲しみから、他者を遠ざけるだろう。一人で空想の世界に入り浸るだろう。
けれど、外に出なくちゃいけない時もある。
今の僕にはまだ分からない。嘘をついてまでこの感覚を隠すべきなのか。それとも正直に口にした方が正解なのか。分からないけれど、全員に好かれないことだけは確かだ。
悲しいけれど、これは僕の生まれながらにして持っている個性だ。捨てることが出来ないものだ。君とさよならしてからより加速してしまった個性だ。だから君自身がこれを嫌わないでくれ。この感覚が見た世界を書いた物語が美しいと言われている。素敵だと言われている。それで充分じゃないか。
優衣羽の僕と現実の僕で生き方は変わっていくだろう。許されることも変わっていくだろう。でも、元は僕だ。僕はこの孤独を抱えながら、いつか理解してくれる誰かに会った時、泣きながらこの話がしたい。それまでの辛抱だ。
そんな、僕のちっぽけな寂しさのお話だ。




