表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
117/234

十年前の僕へ


十年前の僕へ


3月5日頃、『僕と君の365日』が発売されます。Amazonでは発送が始まったみたいです。素敵なイラストレーターさんに描いて頂いた桜色の素敵な表紙が目印です。よろしくしてくれると嬉しいです。


なんて。

十年前の僕が聞いたらどうしますか?多分信じないと思います。その頃から人間嫌いが加速してましたもんね。


信じていた人に裏切られたり、嫌われたり、謂れのない罪を糾弾されたり、やられたらやり返す方式で返したらこっちが悪い羽目になりましたね。そんな事もありました。

安心してください。それ、あと十年は続きます。


やられたらやり返す方式で返したら僕が悪くなったのは、ずる賢さが足りなかったのでしょう。あんなの、こっちが泣いて困らせてやれば良かったのに、君は強くなくてはならないという重荷を背負い続けて真っ向から立ち向かいましたね。そういう所、今でも変わらないけどもう少しずる賢く生きられたらこんなにも傷つく事はなかったのでしょう。そういう所がヒトモドキなんです。


でもその性格がなかったら、きっと今の僕はここにはいないでしょう。


十年前の僕へ。

信じられないでしょうが、僕は本を出しました。自分で考えた物語を形にしました。有り得ないというでしょう。だってその頃から僕は、人生が早く安らかに終わって欲しいとしか考えてなかったから。死んで行きたい世界に行けるのなら、簡単に空を飛んだでしょう。そういう所あるよね。正直自分の命なんてちっぽけなもので、何かを変えられるような人間ではないと幼いながらに理解していました。だから、蒼也のように当たり前のような、世界の大半が思い描く普通の幸せと普通の人生を送るものだと思っていたのです。


でも、どうやらそれは少しだけ違ったようです。


あの頃の自分に会えるのなら、もっとこうしてほしいとかそういう要望を言う人が多いでしょうが、僕は何も言いません。だって、辿ってきた道、全てが僕の人生だから。傷ついて傷つけてボロボロになって一人の世界に閉じこもったのが、君の人生だから。明るく振る舞えば辛い事から逃れられると思って笑うようになった、弱い所を隠し続けて強くなる事を望んだ君だから。どんなに苦しくても、自分が始めた事は最後までやり通すと決めてやり通してきた君だから。だから、ここまで来れたのだと言いたいんだ。


僕は相変わらずで、あの頃よりちょっと面白くなりました。最近の物真似の十八番は和泉元彌さんの物真似をチョコレートプラネットの長田さんと言うくらいには、おかしくなりました。弱さを隠すように始めた笑いは、いつしか僕の物になって誇れる物になりました。人を笑わせるのが楽しくなって、自分のネタで誰かが笑って一瞬でも幸せになってくれるなら、それでいいと思うようになりました。恥を捨てて生きたいように生きるようになりました。きっと君より酸素を吸っています。きっと、君には考え付かない事です。ちょっと芸人さんよりになったのは否めません。


君は表現する事を恥ずかしがっていたと思います。だってキャラじゃないから。背が高くてからかわれて泣かされた過去から、強くありたいと思い虚勢ばかり張っていたから。ブスだと言われても一蹴出来るくらいには強くなろうと思っていました。実際、自分で言うのもなんですが、十年後の君は間違いなくブスの部類じゃないから安心してください。だからといって世の中のテンプレと化した可愛い人ではないけれど、君には君の魅力があると言ってくれた人がいたから。それで充分です。


絵を描いていましたね。今もたまに描くけれど、書く事の方が多くなりました。でも、描く事も馬鹿にされてきたから見せるのを躊躇っていたよね。逃げるように創作物を読み漁って、自分だったらこうするだろうと空想を描き続けていましたね。ねぇ、僕今さ。その空想を形にしたんだ。


自分だったらこうするだろうが、自分だったらこう表現するだろうに変わって、自分はこう書くに変わっていきました。決して人に誇れるような人生ではないけれど、ようやく、ノートに空想を描いていたあの頃の小さな僕が報われたような気がしています。


敵を作ってはいじめられたり嫌われたり裏切られたりするのは、今でも変わらない事ですが、多分僕にも原因があるからしゃあないなと思えるようになりました。僕は生来人に好かれるような奴ではないので、本を出すってなったのにフォロワー数は少ないし友達も少ないです。ネットの友達は相変わらず出来そうにはありません。でも、それで良いのかなと思っています。無理に仲良しごっこをしていた時、沢山しんどい思いをしてきたから、信じられる人は少しでいいし、僕は僕を大切にしてくれる人だけを大切にします。


でも、僕の十人にも満たないであろう信頼できる友人達は皆良い人ばかりです。君があと数年耐えたら会えるから、それまで頑張ってください。弱音も吐ける、素敵な人ばかりです。君の事を愛してくれて、君以上に喜んでくれる人ばかりです。出版祝いって言って、一週間好物のカヌレを渡してくる奴もいました。誕生日でもないのに、プレゼントをくれたり、わざわざ車を出して本屋さん巡りに付き合ってくれる奴もいます。出るよって言ったら、速攻Amazonの注文済みボタンを見せてくる奴とか、自分用と学校用に買ってくれた恩師とか、自分で資料を作って会社の人に宣伝する奴とか、献本を学校に持って行って読み、遠回しに宣伝する奴とか、一足先に読んで終わってしまうのが名残惜しいと言ってくれた奴とか。そして何より、ずっと、何年も前からネットに載せた拙い365日を読んでくれていた、顔の知らない多くの素敵な人達とか。


君は君が思っている以上に、多くの人に愛されています。


人生は始まりも終わりもひとりぼっちなのだと、ずっと一緒だとか、誰かに愛されるほどの人間ではないと思っていたでしょう。今でも思っています。終わりはきっと一人でしょう。誰かと一緒に同じタイミングで死ぬ事なんてほとんど出来ないと思います。別に望んでいないけどね。

ずっと一緒も無理でしょう。人は必ず終わりが来る。どんな形であれ、いつかはさよならをしなくてはいけません。これから沢山のさよならをして、その一つのさよならから、君は書く事を始めるから。避けられない問題です。でも、それで良いと思っています。悲しいけれど寂しいけれど、終わりを認めなくては先に進めないし、僕が生きて憶えている限り、さよならした記憶は消えません。


誰かに愛されるほどの人間ではないと思っていたでしょう。それがね、意外にもいるんですよ。僕みたいな変わった奴を愛してくれる人たちが。それは君が夢見ていた恋愛的な意味ではないけれど、でも、僕という奴と正面から向き合ってくれた人達がこの先の人生で沢山ではないけれど、出てくるんです。


劣等感しか抱いていなくて、君が大嫌いだったはずの家族は、君の門出を誰よりも祝福してくれました。君の才能に気づいて、引っ張り上げてくれた人がいました。その人がいなければ、本は出来ていません。

僕以上に喜んでくれた人達もいました。ずっと長い間読んでくれた人、こんな素人に感想をくれた人。顔も知らない、僕の心を救ってくれたどこかの誰か。君は、そんな人たちのおかげで今ここに立っているんです。だから、一人ではない事、今なら気付けるよ。


十年前の僕へ。

今の僕は元気にやっています。これから先、君が辿る道は決して幸せなものとは言えないでしょう。何せ作風に闇があると言われちゃったくらいです。これから君が体験する全てです。

でも、めげないでください。妥協の連続だと思っていた人生は、自分次第で変えられます。

君の味方はいます。強がらなくてもいいんです。だから、きっと良い事あるよ。これまでもこれからも。



今の僕と、今これを見ているどこかの誰かへ。


長い自分語りに付き合わせてごめんなさい。でも、これが最後じゃなく、最初であると自分に言い聞かせるために必要な事でした。許してね。

人生は上手く行かない事の方が多いけど、それでも何かのきっかけで全く違うものになるだろう。努力は必ず実を結ぶわけではないし、どうしたって届かない場所もある。けれど、目指すのは自由だ。夢を描くのも自由だし、手を伸ばすために努力するのも自由だ。

君は一人じゃないし、君が死んだら絶対に一人は泣いてくれる。そんな風に出来てるんだよ。

だから、忘れないでくれ。この出来事を。これまでの日々を。君は出来るんだ。何かを成し遂げる事が出来る人間なんだ。


僕に自信をくれた多くの人へ。

ありがとう以上の感謝の言葉が見つからないけれど、とりあえずありがとう。

これが最後にならないよう、泥だらけになって這いつくばってしがみついていくから見ていてくれ。それをするのは結構得意なんだ。


いつか。僕に自信をくれた顔の知らない誰かまで。恩返しが出来る人生でありたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ