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三秒前と、お別れしよう  作者: 優衣羽
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君の目には何が見える


目に見える事が全てではないと思い始めたのは小さな時からだけれど、それを公言出来るようになったのは表現を始めてからだ。人は自分と同じではないものを嫌うから、怖くて口に出来なかったのだと思う。今になっては言いまくっているけれど、当時の僕は隊列から外れたかったのに、怖くて同じ向きを歩き続けた。誰かに否定されるのも、気味悪いと言われるのも嫌だった。


子供の頃から、教育者に恵まれた。僕の記憶に残っている彼らは、僕の世界を否定しなかった。どんな世界かは分からないけど、この子にはこの子の、他の子とは違う世界がある。それは悪いものではなく、素敵なものだと言ってくれた。必死に隠していた世界は、大人から見ればすぐにばれてしまったけれど、それが君だから気にしなくていいと教えてくれた。


ずっと、それが救いだった。


同級生たちは嫌うだろう。思春期の子供たちのいじめは害悪だ。けれど、僕はとんでもなく気が強かったからいじめに合うことも少なかったし、何か言われても、僕の考えや空想が原因ではなかった。隠して隠して隠し通して、ようやく言えるようになったのは高校を卒業してから。


それまでの僕は、小説なんて書く気もなかったし、自分の中の空想は一生、自分の中にいて死んでいくのだと思っていた。足並みをそろえようと思えば揃えられる。少し我慢すればいいだけ。でも、ちっぽけな事から世界は変わる。それが人生を変えるきっかけになるなんて、誰一人思いもしなかっただろう。


本当に、周りの大人に恵まれた人生だったなと思う。中には酷い人もいたけれど、それでも。理解してくれる人が、理解してくれなくても許してくれる人がいる事が、いかに幸せな事だったのかを今更気付く。僕も、僕のような奴に出会った時、同じ事をしてあげたい。それは君の誇るべきものだって。



目に見えるものが全てではない。君の夢は、もしかしたら実際に起きた事なのかもしれない。超常的な事を信仰するような人間ではないけれど、いても可笑しくはないかなと思う。考え付いた案は、いつか叶えられるだろう。そう、何が起こるか分からないのが人生だし、この先の人生で何が起こるのか分からない方がいいだろう。


君の空想は誰かから見れば才がないと言われるだろう。馬鹿らしい。有り得ない。意味のない。同じような事を書いた人がいる。誰かの模倣。でも、君が考えたのなら、君だけの空想だ。君だけの物語だ。登場人物は君の頭の中でしか動かない。キーボードやペンを持った手が踊るように動くのは、君にしか出来ないんだ。



僕はヒトモドキのままでいいし、君も創作者のままでいい。平凡な道は呼んでない。人生には面白みがなくちゃ。最後まで挑戦できるような道でなくちゃ。そんなこんなで僕はアメリカの映画に出てくるようなチェリーパイが食べたくなったから、自分で作ってみようと思う。挑戦しなきゃ、望んだ未来に進めない事を、誰よりも理解したから。


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