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番外編 異界

短いです。

 ずっと先延ばしとなっていたホノカさんとの約束。


『異世界へ連れて行ってあげる』


 この約束がようやく明日叶う。

 お披露目を兼ねた夜会が終わるまでバタバタして落ち着かないという理由で延期されていたのだ。


 どんなところなんだろう。

 まだ会ったことが無いホノカさんのお義姉さんにようやくお会いできる。どんな方だろう。ホノカさんからはほっそり美人で自慢のお姉ちゃん!お名前は杏子きょうこさんと教えてもらった。結婚をされて旦那様と二人暮らしをされているらしい。

 手土産として花のコサージュを作ったけど、気に入って貰えるかな。

 義姉に差し上げるのだからと、目いっぱい心を込めた力作だ。念のためにホノカさんに見せたところ、絶対に気に入るよ!と太鼓判を貰ってはいるが。他にも義兄となる方にレナート様推薦のワインも用意してある。


「エマ、楽しみなのは分かったから、早く寝たほうがいい。そうしないと明日が辛いぞ?」

 寝台に入ってから、いつもなら直ぐに睡魔がやってくるのに今日は全然その気配がない。隣で横になっているレナート様もそわそわしてばかりしてシーツの中でもぞもぞ動いているエマを見て呆れているらしい。


「だって、楽しみなんです。そりゃあレナート様は何回も連れて行ってもらっているから慣れているんでしょうけど」

 明日はレナート様も一緒に同行してくれる予定となっている。エマは明日は異世界にいるなんて、まだ想像が出来ない。

 ホノカさんに沢山話もしてもらったし、掌に載るほど小さなケイタイというもので写真も見せてもらった。この世界とは全然違う風景に憧れと期待が高まった。

 

「あー、まあなぁ、確かに最初は俺も興奮したか。ある程度ホノカから話は聞いていたが、この世界とは全く違う文化で驚きっぱなしにされたなぁ」

 その時のことを思い出しているのか、天上を見上げ懐かしそうな顔つきをしている。


「魔法がない世界というのは本当で、あちらで代わりに発達したのが電気。こちらでは上位魔法として分類されるようなことが誰にでも指先一つで使用可能。ほんと驚きの連続だったなぁ」

 驚かされたと言いながらも楽しそうにくすりとレナート様は笑みを零した。


「そんなこと聞かされたら、もっと楽しみになってとても眠れそうにありません」

 他にも異世界へと行ったことがあるアンナ様やセオドール様達からも事前に聞いてみたが、エマが驚くようなことばかりだと聞かされているのに、レナート様までそんなことを言うなんて。


「それなら―――」

 きしりと寝台が小さな音を立てた。

 横に体を横たえていたレナート様が肘を付き上半身を起こし、エマを上から覗き込んだ。

「疲れて眠れるよう手伝おう」


 薄闇の中、エマは一瞬体を固まらせた。だが、その意味が分からない子供じゃない。頬が熱くなるっているのを感じながら小さく返事を返した。

「・・・加減してくださいね」

 疲れ果ててベッドから起き上がれなくなるのは困る。

「分かってる」


 窓の外には白い雪が音もなくはらり、はらりと降り続けていた。

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